【MLB】前田健太、新人捕手と初バッテリーで見えた新たな境地 投球の妙味に触れた夜

バッテリーを組んだツインズのジェファーズ(左)と前田健太【写真:Getty Images】

今シーズン初バッテリーを組んだ前田とジェファーズ

■ツインズ 4-3 タイガース(日本時間6日・ミネソタ)

ツインズの前田健太投手は5日(日本時間6日)、前回8月30日の登板で黒星を喫したタイガース相手に本拠地で登板。6回までに8三振を奪い初回の先頭打者本塁打1本に抑える完璧な投球を続けたが、1-1の同点で迎えた7回に先頭打者を歩かせるとカブレラに左前打を許して降板。リリーフが打ち込まれ勝ち越される展開も9回裏に自軍がサヨナラ勝利を収め、前田に勝敗は付かなかった。

リベンジはならなかったが、7回途中を投げて2安打3失点1四球8奪三振の好投。初回の被弾後から6回まで18打者連続凡退とし、今季8試合目の登板で6度目のクオリティスタート(6回以上、自責3以下)を記録した前田は、若手のジェファーズ捕手と今季初の“共同作業”を果たした。

前回対決で同点本塁打を浴びた4番・キャンデラリオの第1打席、2人の呼吸がなかなか合わない。その間合いを嫌った相手が初球を待つ前に2度も打席を外す珍しい光景だった。前田が使いたかったのは打者の出方をうかがう教科書通りのカーブ。前回登板ではどの打者にも初球に使わなかった76マイル(約122キロ)でストライクを取り、3球三振への布石を敷いた。

試合後、前田はこの日の投球をこう振り返った。

「バッターを今日打ち取るボールは感覚的にはすごくいいボールがたくさんあった」

低めに集めたチェンジアップとスライダーで翻弄し、勝負に出る直球で投球の妙味を発揮。しかし、この言葉が、単に技術的な部分への手応えだけに留まっているとは思えない。先の“入り球”の正解度も含んだものではなかったか。

前田を活気づけた“一生懸命なリード”

一方、大リーグデビューから2週間のジェファーズは実にユニークな“構え”で前田を導いていった――。

片膝に飽き足らず終始ミットを地面に着けた。「この球は絶対に低く」というメッセージを発信するため日本の捕手がよく見せる姿も、こちらではその比ではないだけに、高い制球力を持つ前田が低めへの意識を強く持ち続けられた一要因として捉えたい。

さらに、23歳の新人捕手は工夫を施した。6回2死から対峙した1番レイエスには一転、中腰になり高めを要求すると、その後は地面に着けたミットと腰を浮かせて構えたミットを前田に交互に見せ、最後は外角低めに沈むチェンジアップで4球三振の道筋を作り、8個目の三振を演出した。

フレーミングはお世辞にもいいとは言えないが、“一生懸命なリード”はマウンドの前田を活気づかせ、気分的に盛り上げた。

付言すれば、前田降板後の8回、ジェファーズは二盗を試みた走者に両膝を地面に着けたまま送球。意図的にワンバウンドさせたボールは手から滑り込む走者のヘルメットへと弾みベースカバーの野手のグラブにドンピシャリのタイミングで収まる離れ業で流れを絶ち切った。

ここまで8試合の登板で5試合にマスクを被ったアビラがこの日、腰の張りで10日間の負傷者リスト入り。前田にしてみれば多少のやり難さも覚悟したマウンドだったが、自身の投球術を遺憾なく発揮し、新人捕手のスリリングな奮闘に乗せられていった91球だった。

「次の登板に向けても気持ちよく迎えられると思います」

図らずも、新人育成の一端にも寄与できた登板が「気持ちよさ」を連れてきたと言えば、穿ち過ぎだろうか。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

© 株式会社Creative2