元「が~まるちょば」ケッチさん コロナで帰国 再び夢へ歩み

観客席に見立てた棚田の前で「壁」のポーズを取るケッチさん=雲仙市千々石町

 

 壁がないのにあるように見えたり、ただのかばんが引っ張っても全く動かないように見えたり…体の動き一つで観客を魅了するパントマイム。世界を渡り歩いてきたパフォーマー、元「が~まるちょば」のケッチさんは、新型コロナ禍で活動の機会が制限される中、ゆかりのある雲仙市で世界にはばたく人材育成の夢実現へ歩み始めた。
 ケッチさんがこれまで旅したのは54カ国。昨年は欧州各地で活動、特にイタリアでセミプロを対象に初めて取り組んだパントマイムのワークショップに「もっとやりたい」と手応えを感じた。だが、今年3月、滞在中のオーストラリアでロックダウン(都市封鎖)に遭遇、志半ばで帰国した。
 4月、妻の実家がある雲仙市千々石町に身を寄せてからはいったんパントマイムを離れ、農業の手伝いに明け暮れた。感染が広がる中、パフォーマーの活躍の機会はどんどん奪われていく。オンラインで配信する手法も浸透してきたが「客の反応を見ながらコミュニケーションを取るライブが一番」との思いから、積極的に手を出さずにいた。
 それでも感染収束の見通しは立たず、「何か行動しなければ」。現在の拠点、長崎から何か発信しようと考えた時、思い出したのはイタリアでの経験。「長崎からも世界にはばたく人を輩出できるのでは」。縁があった長崎市内のアナウンススクールの協力でワークショップを開くことになった。
 新型コロナは芸能の在り方を変えた。ウェブを通じて世界中に発信する手法は加速し、パフォーマーが稼げる仕組みも出てきた。これまで公演がほとんどなかった地方でも芸に触れる機会が増えたことは素晴らしいと感じる。半面、大昔から続く「みんなで集まって何かを楽しむ」という文化は、そう簡単になくならないと感じている。
 「グローバリゼーションの歯車は止まらない」。いつかコロナが収束した時、国境を越えて人を笑わせる芸は必ず役に立つ。千々石で学校を開き、志ある若者が住み着くのもいいかもしれない。広がる夢とままならない現実の間で悩みは尽きないが、これからも「パントマイムで生きていく」という思いは変わらないと考えている。
 

 「元が~まるちょば・ケッチに学ぶ!フィジカルコメディワークショップ」は21、22日と26、27日のいずれも午後6時半~9時半、長崎市茂里町の長崎ブリックホール。問い合わせはアナウンス・コミュニケーションスクールプリムラ(電095.800.6265)。

 


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