引退した路面電車「151号」 長崎から小田原へ “里帰り”プロジェクト

小田原駅前を走行中の車両(当時は202号)=1956年3月、小田原市

 昨年3月に“引退”した長崎電気軌道の路面電車「151号」。その車両を64年前に走っていた神奈川県小田原市へ“里帰り”させるプロジェクトが進んでいる。「小田原ゆかりの路面電車保存会」(小室刀時朗会長)は輸送費約700万円の一部を工面するため、クラウドファンディング(CF)を活用。「この車両が長崎と小田原の懸け橋になればうれしい」と期待を寄せる。
 151号は1925(大正14)年に製造。東京の王子電気軌道(現・東京都電)でスタートし、52年に小田原市内線へ譲渡。56年に同線が廃止され、翌年長崎電気軌道に渡った。市内線で運行され現存する唯一の車両であり、同保存会は「昭和の小田原の生きた証人」と価値を強調する。
 長崎電気軌道では82年に営業運転を終え、近年はイベント時などに活躍した。やまぶき色と水色のツートンカラーの塗装は、市内線時代を踏襲している。
 昨年3月、引退を知った小室会長らが保存を目指し、同社に譲渡を申し入れた。だが、車両にアスベスト(石綿)が使用されている可能性があり、話は立ち消えに。その後、不使用が確認され、今年2月に同社が無償譲渡先を一般公募。同保存会が手を挙げ、譲渡先候補に選ばれた。
 展示場所は、かつて市内線が走っていた国道沿いに来年2月に開業する交流拠点施設を予定している。小室会長は「必ず里帰りを実現させ、市内線の歴史を次世代につなぎ、町づくりにも生かしたい」と話した。
 CFは25日まで受け付けている。寄付額に応じ、ピンバッジや絵はがき、小田原の名産品などの返礼品を贈る。問い合わせは小室会長(電070.6645.5877)。

151号の「さよなら運行」=2019年3月、長崎市内(いずれも小田原ゆかりの路面電車保存会提供)

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