【台風10号】響く暴風 不安な一夜 ガラス割れ、壁吹き飛ぶ

台風10号の強風で割れた避難所の窓ガラス。近くにいた男女4人が軽傷を負った=7日午前7時27分、五島市池田町の勤労福祉センター

 長崎県内を通過した大型で強い台風10号。各地に暴風や猛烈な雨をもたらし、家屋の損壊や避難所の窓ガラスを割るなどの被害が相次いだ。停電も生活と医療現場に支障を来した。雨と風がやっと収まった7日朝、避難所から家路に就いた五島市の70代女性は「怖かったけど何とか無事に乗り越えられた」と疲れた表情を浮かべた。
 最大瞬間風速59.4メートルを記録した長崎市野母崎。野母崎樺島町の男性漁師(45)の小屋の屋根は吹き飛び、地面に落下。「ずっと風がバリバリ、ドスドスという音がしていた」と不安な一夜を表現した。
 避難所の一つ、市立香焼中体育館は強風によりコンクリート外壁の一面がはがれ、窓ガラス8枚が割れた。
 最大で62カ所に約4400人が避難した五島市。7日午前1時20分ごろ、約350人が避難していた市勤労福祉センター(池田町)の一室の窓ガラス1枚が強風で割れた。室内に破片が飛び散り、近くにいた男女4人が手足に軽傷。居合わせた消防隊員や看護師らが応急手当てをした。
 佐世保市大潟町では、民家の自動火災報知機が鳴り、現場に駆けつけた40代の消防隊員が階段で強風にあおられ転倒。耳を縫う軽傷を負った。
 島原市弁天町2丁目の市立温水プールではアーチ形の金属製の屋根(幅65センチ、長さ約30メートル)4枚がはがれ、市道に落下。長崎市女の都2丁目の住宅地では、木造2階建て空き家の屋根や壁が吹き飛ばされた。
 海中鳥居で知られる対馬市豊玉町仁位の和多都美神社では、最も海側にある「一の鳥居」が倒壊。平山静喜宮司(62)は「対馬のシンボル。できる限り早く元通りにしたい」と強調した。
 各地で停電も発生した。長崎市下黒崎町の日浦病院では、7日午後3時半の時点で復旧せず。自家発電は救急患者や人工呼吸器の必要な人などのため、必要最小限にとどめている。エアコンを使えず「高齢の患者さんは体温調節がうまくできる人ばかりじゃないから大変。食事も冷蔵庫が使えず困った」。
 授乳期の子どもを育てる平戸市の主婦(37)は「ミルクをつくる時のお湯の温度管理で電気がない不自由さを感じた。早く復旧してほしい」と話した。
 最大7割以上の家屋が停電に陥った西海市。市役所や4支所は自家発電で業務を継続した。夕方ごろには一部地域で断水した。

強風で屋根と壁の一部が吹き飛んだ空き家=7日午前11時13分、長崎市女の都2丁目

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