国内銀行109行 2020年3月期決算「総資金利ざや」調査

 国内銀行109行の2020年3月期決算の「総資金利ざや(中央値)」は0.13%(前年同期0.14%)で、2年連続で前年同期を下回った。調査を開始した2010年3月期の0.27%から、毎年右肩下がりで推移し、2017年同期は0.13%まで低下した。2018年同期は上昇に転じたが、2019年同期以降は再び下降をたどっている。
 これは2016年2月、日本銀行がマイナス金利を導入したことを契機に、金融機関の貸出は低金利競争に陥り、金利収入の中心である「資金運用利回り」の低下を招いている。
 「総資金利ざや」は、資金の運用利回りと調達利回りとの差を示し、「資金運用利回り」が「資金調達原価」を下回る「逆ざや」は17行(前年同期14行)に増えた。内訳は、大手行3行(同2行)、地方銀行7行(同7行)、第二地銀7行(同5行)。「逆ざや」の銀行数が前年同期を上回ったのは、2017年3月期(12→20行)以来、3年ぶり。
 貸出金利の上昇が見込めないなか、金融機関は手数料収入や中小企業の事業承継、M&Aなどのコンサルティング業務など、新たな収益源の確保が急務になっている。ただ、2020年に入り、新型コロナウイルス感染拡大で信用保証協会付き貸出が急増しているが、プロパー貸出の伸びは低く、低金利から抜け出すまでには至っていない。

  • ※本調査は国内銀行109行の2020年3月期決算で、「総資金利ざや」(国内業務部門)を調査、分析した。
  • ※「総資金利ざや」は、「資金運用利回り」-「資金調達原価」で単純算出した。
  • ※銀行業態は、1.埼玉りそなを含む大手行7行、2.地方銀行は全国地銀協加盟行、3.第二地銀は第二地銀協加盟行。

「総資金利ざや」の中央値0.13%、2年連続で低下

 国内銀行109行の2020年3月期の「総資金利ざや(中央値)」は0.13%にとどまった。前年同期の0.14%から0.01ポイント低下し、3月期では2017年同期と並ぶ過去最低を記録した。
 調査を開始した2010年3月期は、「総資金利ざや」が0.27%だった。その後、総資金利ざやは低下し、2015年同期は0.17%に低下。2016年同期は0.18%に上昇したが、2016年2月に日本銀行がマイナス金利を導入してから低金利競争が加速し、2017年同期は0.13%へ低下した。
 このため、金融機関は高金利を求め、不動産貸出、カードローンなどに注力した。その一方、経費削減や「資金調達原価」の圧縮にも取り組み、2018年同期の「総資金利ざや」は0.15%に上昇した。だが、「資金運用利回り」は低下に歯止めが掛からず、再び「総資金利ざや」は低下の一途をたどっている。

利ざや

 2020年3月期で「総資金利ざや」の逆ざや行は17行に増加した。2年連続の「逆ざや」は11行で、逆ざやが続く島根銀行は2019年9月、福島銀行は同年11月、清水銀行は2020年2月に、それぞれSBIホールディングスと資本業務提携を発表した。
 低金利貸出で年々、金融機関は本業での資金運用が疲弊し、安定した収益確保が課題となっている。こうしたなか、2020年は年初から新型コロナウイルス感染が世界中で広がり、4-6月期のGDP(国民総生産)は年換算27.8%減と過去最大の落ち込みを記録した。景気は減速し、企業業績の先行きに不透明感が強まり、貸倒引当金の積み増しなど与信費用の増大も見込まれている。
 新たな収益源の確保が難しいなか、引き続き「資金運用利回り」は低下が見込まれる。今後も、金融機関は店舗統廃合など、経費削減や資金調達原価の圧縮に取り組むが、抜本的な収益改善の可能性が見出せないと、金融再編も現実的な課題に浮上してくるだろう。

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