りそな銀行・岩永社長 地銀との連携「資本ありきではない」 独占インタビュー(前編)

 休廃業・解散(以下、休廃業)する企業数が高止まりしている。東京商工リサーチ(TSR)の調査によると、2019年は4万3348社が休廃業を選択した。さらに、昨今は「新型コロナウイルス」感染拡大による経営環境の悪化から、企業は疲弊感を強めている。
 そのような状況下で、りそな銀行(TSR企業コード:579000109、大阪市中央区)へのコロナ関連の相談は約1万9,0008000件、融資実行金額も約1兆3000億円(極度融資含まず、 2020年8月2814日現在)にのぼっている。金融機関への期待がますます高まるなか、同社は2021年春、新たに「事業継承ファンド」を設立する。
 コロナ禍を経た社会の展望や今後の同社の取り組みについて、2020年4月に社長に就任した岩永省一氏に話を聞いた。

コロナ禍での相談ペースと融資状況は?

 融資に関する相談は、3月からプロパー案件の申し出がぐっと増え、5月に(実質)無担保無利子で借りられるようになった局面で山が来た。
 足元では引き続き相談は多いものの、全体としては相談から実行にフェーズが移った。また資金ニーズも当面の資金繰りから中長期的な備えに変わってきている。

コロナ禍での現場の様子は?

 相当忙しかった。「今まで経験したことがないほど忙しかった」という社員もいた。
 私はリーマン・ショックが起きた頃、都内で支店長をやっていたが、当時も融資の相談件数は相当多かった。しかし、今回はその時期の比じゃないほど膨大だ。

リーマン・ショックとの違いは?

 リーマンとは違い、コロナによって特にBtoCの業界が大きな打撃を受けた。インバウンドに依存していた企業、地域をコロナが直撃した。さらに、サプライチェーンが分断され、“部品がない”“組み立てられない”“ものが作れない”など、自動車に代表されるような製造業も混乱した。特に自動車は、ロックダウンした国では販売店が動けず、「強制的に」動きが止まってしまった。
 一方、リーマン・ショックは金融危機のため、金融機関が先行き不透明な中でフリーズした。そのため、金融支援を得られないことを背景とした不動産関連の倒産が目立った。
 今回、金融機関自体は正常だが、お客さま側の売上が突然止まってしまった。もし、金融支援が無ければ、“突然死”してしまう企業は多くあったと思う。

金融機関はリーマン・ショック時のように締め付ける必要はなかった/span>

 金融機関自体は冷静だった。ただ、どこでどう金融システムに波及するか分からないという恐れは最初の頃にあった。しかし、インターバンク市場の動きを見ても揺れていたわけではなく、今は正常な状態にある。

今年度の与信費用は前期より増加する見込み

 コロナ影響の長期化を想定し、予防的対応を含めて与信費用を見積もっている。グローバルにみて、どこかの国が再びロックダウンすることになれば、日本企業にも影響を及ぼすことになり、さらに予見が困難となる。

当面、企業はコロナの影響を免れない

 影響がゼロになるのは、この1、2年はないとみている。必ず、どこかに何かしらの影響が出てくるからこそ、多少の影響があったとしてもやっていける企業体制を築くことが不可欠だ。「事業構造を変える」、「財務的にデットかエクイティか含めて考える」など予防的な企業側の行動は絶対に必要だ。

地銀間の連携は

 我々は“資本ありきではない”という姿勢。我々は信託銀行であり、信託代理店として他行とも様々な形で連携している。M&Aのプラットフォーム作りもしている。
 これからも“資本ありきではない”連携を積極的に続けていく。今後、我々が開発したアプリで各金融機関と連携していくが、これは非常に良い形であると自負している。
 現在、アプリを搭載したタブレット端末を店頭に配備し、お客さまにアプリの使い勝手を体感してもらう取り組みも進めている。様々な分野で連携していきたい。

ATMについて提携はあり得るか?

 今のところ具体的な動きはないが、業界的には共同利用化の流れがあるので、我々としても良い話があれば、連携していく価値はあると思っている。
 拠点を広げるとなるとコストも掛かり、地銀と営業エリアがバッティングする。その状況で進めると、どうしてもコンフリクト(競合)が生じる。それより、「我々のサービスを使ってください」とホワイトラベル化して提供していった方が、連携もしやすいと考えている。

コロナ禍を経て、銀行での働き方はどう変わるのか?

 ペーパーレス化と同時にリモートワークも当然ながらどんどん進んでいくとみている。実際に、緊急事態宣言下では本部のリモート率は5割近くまで上がった。問題はいかにして支店での働き方をシフトしていくかだ。

支店については

 支店はお客さまとの接点の場。ご来店された方にどうやって価値あるサービスを提供していくかが大切で、我々の一方的な思いだけではうまくいかない。
 また、都市部と郊外でも状況は違う。サラリーマンが利用する店舗、高齢のお客さまが多い店舗、一律に線を引いて変化させることは難しい。だから、店舗網も維持し、お客さまの利便性も追求しながら、デジタル化を進める。
 社員一人ひとりが自分の時間を効率的にお客さまに向けるため、デジタルでのバックアップも欠かせない。
 今後は、支店・本部ともに更に踏み込んだ働き方の改革が必要だ。

りそな岩永社長1

取材に応じる岩永社長(TSR撮影)

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