「エギ」と呼ばれる疑似餌を用いてアオリイカを狙うのがエギング。その手軽さと敷居の低さから初心者~上級者を含めて全国的に人気の高い釣りだ。本記事ではエギングに適した時期や狙うべきポイント、適正ロッドやリールについて解説します。
そもそもエギングとは?
日本全国で人気が高いアオリイカ釣り。代表的な釣り方に疑似餌を使った『エギング』と、生きエサを使った『ヤエン』がありますが、今回は初心者でも気軽にチャレンジできる『エギング』をフィーチャーしていきます。
そもそも『エギング』という呼び名ですが、元々は漁具として使われていた『餌木(えぎ)』をルアーのように使い始めたことが発端で、それを現代風に『餌木+ing=エギング』と呼ぶようになったと思われます。
漁具としての餌木は『イカを集める漁火の焼け落ちた松明(たいまつ)の破片が水中に沈んでいく時に、イカが抱き着いた』のをヒントに作られたようです。イカを釣るための木でできた餌だから、餌木という名前が付いたと思われます。
アオリイカが釣りやすい季節は「春と秋」
アオリイカはイカ類の中でも、比較的沿岸部に多く生息しています。だからこそオカッパリ(岸釣り)からやるエギングの人気が高いんです。そして、オカッパリからもっとも釣りやすいのが『春と秋』の2シーズン。
その理由として、春は産卵が行われる沿岸部に近付きやすい季節であり、産卵を前に栄養を欲して荒食いをします。そして秋は、春に生まれた子イカがエサとなる小魚を積極的に追うサイズにまで成長。両時期ともにエギにも好反応を示すからです。
「春」のエギングは産卵前に接岸する大モノ釣り!
アオリイカの寿命は約1年と言われており、春に生まれて翌年の春には産卵行動を行えるまでの成熟した大型個体へと成長。沿岸部の藻場などに産卵するので、その周辺で大型の高活性イカが捕食を行い、エギにも積極的にアタック。
春のイチオシポイントは「藻場」
アオリイカはアマモやカジメなどが群生する藻場に産卵しやすいので、春は特に期待が持てるポイント。ただ、エギが引っ掛かりやすいので、細心の注意が必要。
「秋」のエギングは子イカ!
春に産卵~ふ化を経て成長したアオリイカの子供は、秋には『コロッケサイズ』と呼ばれるほどになり、群れを成して小魚を積極的に追い回す。好奇心旺盛な面もあり、釣り人から肉眼でも確認できる近場までエギを追う。
流れに弱い子イカは港内に溜まる傾向に
春に生まれた子イカは遊泳力も低く、外洋に出ればあっという間に他の魚に食べられてしまうので、晩秋までは漁港内やワンドの奥など、守られた水域で過ごす。
アオリイカのいる場所は「カケアガリ」「根周り」
では、オカッパリからどんな場所を狙えば良いのでしょうか? どんな釣りでもそうですが、アオリイカも無暗やたらに投げても釣れません。基本的にはあらゆるルアーフィッシングのお約束とも言える『変化』が大事。
浅場と深場を最短距離でつなぐ『カケアガリ』や、変化の少ないサーフの中にポツポツと点在する『根周り』などが有望です。
根周り
カケアガリ
さらに大きな規模で見るなら岬の先端、ワンドの奥などの『端や奥』を探っていくと良いでしょう。
エギングタックルはできるだけ専用のものを…
タックルに関して、特にロッドはエギング専用モデルが望ましいでしょう。というのも、エギングはエギにアクションを伝える時の一連の動作が独特で、ロッドに対して瞬間的に大きな負荷が掛かることがあります。仮にシーバスロッドやライトルアーゲーム用ロッドを使った場合、ロッドは曲がり過ぎてしまいエギに適切なアクションを伝えにくくなってしまいます。
対してエギング専用ロッドは竿先から胴まで全体的に張りが強いので、強めにシャクってもエギにしっかりとアクションを伝えることができます。逆にエギングロッドは他の釣りにも転用しやすいので、1本あると何かと便利です。
ロッドは8ft6inの長さが誰でも扱いやすい!
ロッドの長さはさまざまあるが、8ft6inが長過ぎず短過ぎずで扱いやすく、遠投もできるのでオススメ。ラインはPEラインの0.8号を基準に、荒れた場所ならば太く、飛距離が必要&イカの型が小さいなら細くと使い分けよう。
エギングの核心・アオリイカの釣り方!!
そして、ここからがエギングの要となる、エギの動かし方です。エギは一般的なルアーと違い、ただ巻きするだけではアクションせず、ひたすら『真っ直ぐ』進んでくるだけです。もちろんそれでも釣れるんですが、釣り人自らアクションを与えた方がイカからの注目度が増し、広範囲からイカが集まってきます。
しかし、エギがアクションしている時に、イカが食い付いてくることはほとんどありません。イカからのアタリが集中するのは、エギが止まってフォール(沈む)している時です。したがって『アクション→フォール』という一連の動作を繰り返すことで初めて、エギングは成立することになります。
エギをキャスト後、まずは着底させる
エギをキャストして着水したら、カウントしながら一度ボトムまで沈めて、おおよその水深をイメージ。そこからアクションさせて、アタリ棚を知るべし。
エギのアクションの基本
エギングのアクションには大まかに「シャクリ」と「ダート」の2種類。適度な動きをエギに与えることで、周辺のアオリイカの関心を集めることができる。
縦の動き:シャクリ
横の動き:ダート
エギのフォールの基本
アクションはあくまでイカを寄せるための挙動。うまくフォールを取り混ぜることで、イカがエギを抱くスキをつくるのが釣るためのコツ。
フリーフォール
テンションフォール
アオリイカのアタリは微妙だが…ラインの動きでアワせるべし!
アオリイカがエギに食い付いた時のアタリの獲り方です。いわゆる『魚類』のアタリは、回遊魚のように泳ぎ回っていたり、根魚でもその場からエサを持ち去ろうとすることでラインが引っ張られ、手元でアタリを感じられることが多いです。
しかし、アオリイカの場合は前述のようにフォール中にエギに食い付くので、手元でアタリを感じにくいのはもちろん、竿先にさえもアタリが出ないことが多いのです。とても微妙なアオリイカのアタリですが、もっとも判りやすいのはPEラインの『動き』を観察すること。少しでもラインの動きに違和感があれば、とりあえずアワセてみましょう。
アタリはラインが「プンッ!」と跳ね上がる
そもそもアオリイカは喰い付いてもその場から離れようとしない傾向があるので、アタリが出にくい。しかし、エギを抱え込んだ時や触れた時には微妙な動きがPEラインに伝わるので、「プンッ!」と跳ね上がる。これがアタリだ。
最初のうちは次のシャクリで乗ったでOK
ビギナーはもちろんベテランでも結構多いのが、アタリを感じられなくても次のシャクリが結果的にはフッキングとなり、アオリイカが『釣れてしまう』こと。慣れないうちは釣れれば結果オーライなので、徐々に精進しよう!
アオリイカとのファイトは意外とイージー!
微妙なアタリを獲り、フッキングが決まったらファイト開始! アオリイカとのファイトは壮絶…ではなく、どちらかと言えばイージーな方かもしれません。というのも、アオリイカは釣り人の引きに対して逆方向へと直線的に走るだけで、魚のように左右に動き回ったり根に潜ったりすることはありません。大型で遊泳力が強い個体でもドラグを調整してラインブレイクを防げば、想像以上にラクにイカは寄ってきます。
とにかくラインをたるませないのがキモ
綱引きのような一直線での引っ張り合いなので、力の加減さえ間違えなければラインが切れずにイカを寄せることはできる。ただ、エギのカンナにはカエシがないので、引っ張る力が緩むと外れてしまう可能性は高い。常にラインテンションを掛けてのファイトを心掛けよう。
ただし、ラインの許容以上の負荷が掛かれば当然のことながら切れてしまう。したがってアオリイカを狙う際はドラグを少し緩めておこう。
エギングにあると便利なアイテム
水中まる見え! 見て釣るための【偏光グラス】
エギングに偏光グラスは必需品。春は産卵で浅場へ寄る大型イカの動きを観察したり、好奇心旺盛な秋イカは目視できる範囲まで寄ってくる。偏光グラスを掛ければ目で見て確実に釣る「サイトフィッシング」が可能となる。
釣ったイカを引き揚げるのに必須! 【ギャフ・ネット】
ときにキロ以上のサイズになるアオリイカ。無理に引っこ抜こうとすればラインが切れてしまう可能性もある。一般的なランディングネットでOKだが、イカ専用の「ギャフ」も存在する。カギを展開し、ゲソや身体に引っ掛けて獲り込むものだ。