“ボイコット”…日本人を縛っているのは、仕事への義務感

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。8月31日(月)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、立命館大学准教授で社会学者の富永京子さんが、ボイコット・ストライキから考える“権利と仕事、どちらが大事か”について述べました。

◆海外では時折見られるボイコット

ニューヨークで開催されたテニス大会「ウエスタン・アンド・サザン・オープン」の女子シングルスに出場した大坂なおみ選手が、黒人男性が警官に銃撃された事件などに抗議し、準決勝を棄権すると表明。その後、大会側が抗議に賛同し、全試合1日休止を決めたことで大坂選手は棄権を撤回。準決勝ではストレート勝ちを収めましたが、決勝はケガのため棄権しています。

日本では大坂選手のニュースが大きく報道されていますが、現地ではその他にもBlack Lives Matterや銃撃事件に抗議すべく、NBA(バスケットボール)、MLB(野球)、MLS(サッカー)でもボイコットを実施。ボイコットの範疇には、法的な定義によってはストライキなども入るそうですが、この日はいわゆる労働者が賃金を上げる、労働環境改善を求めること以外の幅広い目的を持ったボイコット・ストライキについて富永さんが解説します。

今回の大坂選手のような「権利のためのボイコット」に関しては、日本ではあまり馴染みがありませんが、例えば2019年には香港で「逃亡犯条例」への抗議、民主化運動の一環として行われたほか、サッカー界ではフィンランド代表が、カタールの人権問題や「2022 FIFAワールドカップ カタール」に向けての劣悪な労働環境などに抗議を示す意味で現地合宿がボイコットされました。

◆権利より大事…日本人を縛る仕事への義務感

では、みんなどれくらいボイコットに参加したり、ボイコットについて知っているのか。ボイコットには不買運動や権利を求める場合などさまざまですが、総じて「世界価値観調査」では日本で「したことがある」という人は各国に比べて非常に少ないことがわかっています。また、富永さんは「わからない」という回答もとても多いことを注視し、日本におけるボイコット・ストライキの捉え方について「まず経験率が少ない。だから、そもそもイメージがつかないし、わからないという人が他国よりかなり多い」と指摘。

その背景には、デモなどの他の政治的活動同様「決してやることはないだろう」と考える人が半数以上いたこと。さらには、「労働の場での政治的活動に対する意識は年々低下傾向にある」と富永さん。不買運動も参加率が低いものの、労働の場でのボイコットはより馴染みが薄くなっているそうで、そこから透けて見えるのは「仕事への義務感が、いわゆる人権や人種に対する意識よりも強く、私たちを縛っているんじゃないか」と問題提起していました。

株式会社トレタ代表取締役の中村仁さんは、富永さんの話に同意しつつも「労働基準が高すぎるというより、権利意識が低すぎるかな」と推察。そして、「僕らが持っている権利がいかに貴重で価値のあるもので、自分たちで行動して守らなければいけないのか、権利に対する意識が低いがゆえに、今の状況が当たり前すぎて、結局仕事のほうが優先されるということもある」と持論を述べます。

最後にMCの堀潤から、「権利意識を高めるのは、やはり教育なのか?」と質問が。すると、富永さんは「歴史を知ること。これまでどういう経緯を経て、自分の当然持っている権利を獲得してきたのかを確認する機会が重要」と回答していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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