F1トスカーナGP木曜会見(1):レッドブル復帰の質問が相次いだガスリー「最速マシンを手に入れたいと思うのは当然」

 第9戦トスカーナGPに入っても、4日前の第8戦イタリアGPの興奮はまだ冷めやらない。それはそのイタリアGPで初優勝を飾ったピエール・ガスリー(アルファタウリ)本人が一番感じているようだった。

 ムジェロの木曜会見に登場したガスリーの第一声は「まだ信じられない」だった。そこで、月曜日の朝はどんな様子だったのかを尋ねられると、次のように答えた。

「朝、起きたら、リビングに優勝トロフィーがあって、あらためて優勝したことを実感した。その優勝トロフィーは、昨年のブラジルGPで獲得した2位のトロフィーの横に飾ってあるんだ」

 今シーズンのF1でメルセデス以外に優勝したのはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンと、ガスリーしかいない。イタリアGPは赤旗が出る荒れた展開だったが、巡ってきたチャンスをきっちり掴み取ったガスリーの優勝は、幸運によるものだけでなく、実力があることも証明した。

 そこでレッドブルへの復帰についての質問が相次いだ。まずガスリーは「僕はいまとても競争力が備わっていると思う」と語った上で、こう続けた。

「だから、自分が乗るマシンにも競争力を求める。これはみんなも同じだと思う。一番速いマシンに乗りたい。それがレーシングドライバーだ」

 ただし、ガスリーは安易にレッドブル・ホンダという名前は出さない。しかし、そこにはレッドブル・ホンダに復帰したい気持ちがにじみ出ていた。

「確かに僕はいま非常に良いパフォーマンスでレースを戦うことができていて、アルファタウリのマシンのポテンシャルを最大限引き出していると思う。でも、レーシングドライバーとしての目標は、もっとコンスタントに表彰台を目指し、再び表彰台の頂点に立ち、いつの日かチャンピオンシップを獲得すること。そのためには最速のマシンを手に入れたいと思うのは当然のことで、それは常に僕のターゲットになっている」

2020年F1第9戦トスカーナGP ピエール・ガスリー&ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)

 しかし、ガスリーはヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)やレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナー代表とは、その件に関して話はしていないという。

「現時点では、彼らとはそういう話はしていない。ヘルムートとクリスチャンからはレース後に祝福のメッセージをもらった。彼らはモンツァの優勝をとても喜んでいた。でも、今後のことは何も話していないし、僕も考えていないしね」

 ただ、ガスリーはこんなエピソードも明かして、レッドブルで優勝することが夢だということを示唆した。

「月曜日にセブ(セバスチャン・ベッテル/フェラーリ)から電話があったんだ。彼は僕にこんなメッセージをくれたんだ。『僕たちはこのチームで勝った、たったふたりのドライバーだ』とね。彼はその後、レッドブルへ昇格して4度のチャンピオンに輝いた。だから、僕は彼と同じウィナーズ・クラブに入ることができて、うれしく思っている」

 ガスリーの優勝はフランス人として1996年のモナコGPのオリビエ・パニス以来だったと日曜日のレース後に語っていたロマン・グロージャン(ハース)は、同じ木曜日の会見で、「嫉妬していないか」と尋ねられ、笑ってこう答えた。

「もちろん、僕だってもう少しで優勝ということが3、4回あったから、先を越されてちょっとは嫉妬している。でも、僕はイタリアGPのピエールの優勝がただただうれしかった。彼は本当に素晴らしい仕事をしてきたから、あの優勝は当然の結果だったと思う。そして、ガスリーの優勝によって、フランスだけでなく、世界中の多くのファンがF1には筋書きのないドラマが起こり得ると思ってくれたら、最高だね」

2020年F1第8戦イタリアGP 同じフランス人ドライバーとしてガスリーの勝利を祝福するロマン・グロージャン(ハース)

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