鷹を待つ“地獄”の7週連続移動ゲーム 終盤戦の鍵を握る工藤監督のマネジメント力

7回を投げ2勝目を挙げたソフトバンクのマット・ムーア(右)【写真:藤浦一都】

5時間38分を戦った仙台からの移動ゲームを2時間21分で戦い終えたソフトバンク

■ソフトバンク 4-2 西武(11日・PayPayドーム)

ソフトバンクは11日、本拠地PayPayドームで西武と対戦し、4-2で快勝した。先発のムーアが7回まで3安打2失点と好投。周東の適時打やデスパイネの3号ソロなどで4点を奪って、連勝を4に伸ばした。

前日10日、敵地・楽天生命パークで行われた楽天戦は2度の雨天中断があり、試合が終わったのは23時38分。そして11日は午前中に仙台から福岡へ飛んでの移動ゲームだった。選手たちの疲労を考慮して試合前練習は軽め。主力の多くはグラウンドに姿を見せずに休養した。そんな中で行われた西武戦は今季チーム最短タイの2時間21分の“省エネ”試合になった。

試合後、工藤公康監督も「いろんな意味でナイスゲーム」と、思わず笑みが溢れる大きな1勝に。「勝てれば短くても、長くてもいいですけど、短くても負ければドッと疲れはきます。そういう中でしっかり勝てたというのが何よりも大きいと思います」と満足げに振り返っていた。

シーズンも折り返しを過ぎて後半戦に入った。パ・リーグで開幕から行われていた同一カード6連戦は終わり、ここからは3連戦2カードによる6連戦が続いていく。特にソフトバンクにとって“鍵”になるのが、今日のような移動ゲームが続く日程だ。

工藤監督ら首脳陣は遠征で登板機会のない先発投手の“居残り調整”を認めた

ソフトバンクはここからシーズン終了までの約2か月、本拠地PayPayドームで6連戦を戦うことがない。9月18日からの楽天戦と9月22日からのオリックス戦、10月23日からの西武戦と10月27日からのロッテ戦は2カード、ホームゲームが続くが、これは週を跨いでのもの。その後には必ず“移動ゲーム”が入り、7週連続で金曜が移動ゲームになる。

6連戦となる以上、どこの球団も同じ条件と言いたいが、実は本拠地での6連戦がないのはソフトバンクだけ。その他の5球団はシーズン終了までに2回ないし1回は、火曜から日曜にかけての本拠地6連戦が組まれ、選手にとって最も疲労の大きい移動ゲームがない週がある。

この厳しいスケジュールの待つシーズン終盤にかけて、この1週間、工藤公康監督はこれまでの調整方法を変えた。それが先発投手陣の“居残り調整”だ。これまでは遠征先に先発投手たちも帯同させて、それぞれの遠征地で調整をさせてきた。もちろん同一カード6連戦というところもあったからだ。

だが、この日先発したムーアを含む、敵地で登板機会のない先発投手たちの福岡での“居残り調整”を認めた。工藤監督は試合後に「しっかり残った投手がいい調整をしてくれたことが今日の勝利につながった。投手コーチと話して、移動ゲームだったり、3日間で移動して移動して、という中で今回はピッチャーを残した」という。3試合戦っては、すぐにまた本拠地に戻ってくる試合日程を考慮しての判断だった。

今後7週連続で続く移動ゲームに向けて鍵を握る指揮官のマネジメント力

「特に6連戦で移動ゲームになる。福岡に1週間いられるのも9月の終わりと10月の終わりくらいしかいられない。行って、帰っての繰り返しになる。先発の調整って、今の子たちはウエートをやったりとか、色んなことを考えてやっているので、そこを考えるとドームも使えるのでいい調整ができるかなと思います」と工藤監督は語り、今後の日程を戦う上でも、大きなヒントとなったようだ。

工藤監督は野手の起用でも、なんとか負担を減らすように腐心している。その1つが“日替わりDH”。デスパイネが主にDHに入るが、この日は柳田が入り、グラシアルや中村晃がそこに入ることもある。彼らを故障させずに、いかに毎試合、起用するか。膝に不安があり、左翼の守備につけなかったデスパイネを一度、ファームに落としてまで調整させたのも、日替わりでDHを使い回したいからこその狙いだった。

この日で今季は72試合を消化し、残りは48試合となった。ひたすらに6連戦が続く2020年シーズン。鍵を握るのは後半戦にいかにコンディションを維持し、余力を残しておくか。野手、先発陣はもちろん、リリーフ陣のことも忘れてはいけない。勝負の終盤戦を戦い抜くためには、ここからのマネジメントが重要になる。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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