F1 Topic:タイヤに厳しいと予想されるムジェロ。ミディアムでのQ2突破はトップチームでも困難か

 2020年F1第9戦トスカーナGPの金曜日フリー走行を終えて、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は「タイヤに関しては金曜日は悪くなかったが、土曜日と日曜日はもっと厳しくなることを予想しているから、まだ安心はできない」と語った。

 ピレリでヘッド・オブ・カーレーシングを務めるマリオ・イゾラも、金曜日の段階で「何人かのドライバーのタイヤにブリスター(タイヤの温度が上昇して内部のゴムが沸騰、表面に気泡が出てしまう状態)が確認されている」と語っている。

 ムジェロ・サーキットは全長5.245kmのなかに15のコーナーが点在するが、時速100km以下で回るコーナーがひとつもない。かつてブリヂストンからタイヤを供給されていたフェラーリは、日本GPにムジェロでタイヤテストを行い、最終的に鈴鹿に持ち込むスペックを決めていた時代もあった(当時は1社による供給ではなかったため、チームの要求に合わせたタイヤの供給が可能な時代もあった)。

 いずれにしても、ムジェロがタイヤに厳しいことには変わりなく、ピレリもこのトスカーナGPでは最低内圧をフロント25.0psi/リア20.5psiに設定してきた。これは第4戦イギリスGPが行われた1週目のシルバーストンの値とほぼ同じである(データ1)。

※データ1ピレリが指定したタイヤの最低内圧
・ムジェロ(トスカーナGP)
フロント25.0psi/リヤ20.5psi

・シルバーストン(イギリスGP)
フロント25.0psi/リア21.0psi

 タイヤに厳しいとなれば、優勝を狙うトップチームは予選Q2での自己ベストをできればミディアムで記録し、グリップ力はあるが耐久性に乏しいソフトではスタートしたくないはず。しかしイゾラは、今回のトスカーナGPではそれはトップチームでも簡単ではないだろうと話す。

「金曜日の走行データでは、ソフトとミディアムの差が我々の想定よりも大きかった。我々は事前のシミュレーションで、ソフトとミディアムの差は0.6~0.7秒だと思っていたが、金曜日を終えた段階では0.9秒あった。そうなると、ミディアムでQ2を突破するのはかなりリスキーになる」

 つまり、ムジェロではタイヤ戦略が重要なポイントになるだろう。

 このタイヤ戦略が重要となるのは、予選Q2とレーススタート時だけではない。イゾラは「タイヤの摩耗だけを考えれば、2ストップのほうが良い作戦だが、ここは抜きどころがほとんどない。したがって、みんな1ストップを狙うだろう」と予測する。

 タイヤに厳しいサーキットで、1ストップでの我慢比べレースといえば思い出されるのが、第4戦イギリスGPでレース終盤に相次いだタイヤのパンクだ。

 レッドブル・ホンダのアレクサンダー・アルボンは、こう語る。

「日曜日はみんなピットストップを複数回行うと思うけど、どうなるか見てみよう」

 ムジェロで記録されたF1マシンでの最速タイムは、2012年の5月に3日間行われた合同テストでトップタイムをマークしたロマン・グロージャン(ロータス・ルノー)の1分21秒035だ。

 トスカーナGP初日のトップタイムはバルテリ・ボッタス(メルセデス)の1分16秒989なので、すでにグロージャンのタイムは約4秒短縮した。これは2004年に当時フェラーリに所属していたルーベンス・バリチェロが記録した1分18秒704の非公式レコードをも抜く速さだった。

 初日にトップタイムを記録する速さをメルセデスはレースで最後まで維持できるのか。あるいはスピードを追求するがあまり、再びアクシデントに襲われてしまうのか。このトスカーナGPでも、最終ラップまで多くのファンが目が離せないレース展開になることを期待したい。

2020年F1第9戦トスカーナGP 初日のトップタイムを記録したバルテリ・ボッタス(メルセデス)
2020年F1第9戦トスカーナGP アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
2012年のテストでロータスのマシンを走らせるロマン・グロージャン

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