アルファード圧勝に日産もあきらめの境地かと思われたが
2014年にマイナーチェンジを実施してからは大きな変更もなし
日産のエルグランドと言えば、高級ミニバンの元祖。トヨタを焦らせたほど、初代モデルの登場は衝撃的だった。
しかし2代目エルグランドと同時にデビューした後発のトヨタ アルファード/ヴェルファイアの攻勢に押され、最近はすっかり影の薄い存在となっている。
現行型の3代目モデルは2010年のデビュー。2014年にデザインを刷新するなどの大規模なマイナーチェンジを実施しているが、以降は大きな改良もないままだ。
400万円以上のアルヴェルは月に8000台以上売れている!
いっぽうで、アルファードは売れに売れまくっている。
現行型は2015年にデビューし、2017年末にマイナーチェンジを実施。一部改良や特別仕様車の投入などはあるものの、ここ3年間は特に大きな改良もない。それなのに2019年の1年間で68000台余り(月平均:約5700台)、兄弟車のヴェルファイアも2019年1年間で36000台強(月平均:約3000台)を売った。400万円から500万円クラスの高級ミニバンが、コンパクトカーや軽自動車並みに売れているのだからスゴイ。
日産は月数百台のレベルで低空飛行中
2020年もアルファードは売れ続けている。1月から8月までの間に52000台余り(月平均:約6500台)とコロナ禍の影響もほとんどなく、むしろ2019年よりも増加傾向にあるほど。ただしこれは、トヨタが全店・全銘柄の取り扱いを始めた影響もありそうだ。実際ヴェルファイアは1月から8月で13000台(月平均:1600台強)と減少傾向にある。
それでは、と日産に目を向けると、エルグランドの販売は、この半年は月に250台以下という、非常に厳しい販売状況にある。もはやこれ以上細かく比較するのも忍びないほどの有り様だ。現在日産の販売店は全国で約2100拠点。ここ数か月、新車のエルグランドの納車すらしていない店舗もかなりの数あることだろう。
しかし日産はこれまで、初代エルグランドを約23万台、2代目エルグランドも約20万台を販売し、現行型も10年間で10数万台を売り続けている上、セレナなどからの上級移行を望む潜在顧客も少なくなかったはずだ。
せっかくの老舗ブランドがあっても、こうした既納客のかなりの数をトヨタなどに奪われていることが、残念ながら数字の上からも推察される。
すっかり諦めていた…訳ではなかった! ただし完全復活は厳しい理由とは
デザインの洗練度を増してイメージを一新
2020年9月、日産は今秋発売予定の新型エルグランドについて、事前告知サイトを公開するとともに、9月15日からの予約受付を開始すると発表した。
今回のマイナーチェンジではフロント周りを中心にデザインを一新。グッと洗練度を増した印象だ。また先進安全技術“360°セーフティアシスト”も全車標準装備とした。
さらにオーテックジャパンのカスタムモデル「AUTECH」を追加設定するのも大きなニュースだ。かつてエルグランドのカスタムモデルとして固定客を持っていた「ライダー」シリーズのように、コアな日産ファンからの支持を集めることが期待される。
e-POWERやプロパイロットなしでの完全復活は難しい
ただし、残念ながら今回のマイナーチェンジでは「e-POWER」や先進運転支援技術「プロパイロット」の採用は行われなかった。日産で今売れているセレナやノートは、これらの技術で販売を大いに盛り返しただけに、上級モデルへの搭載がなかったことは返す返すも残念だ。
国内専用モデルだった高級ミニバンも、最近では市場規模の大きい中国などで販売され、ライバルのトヨタ アルファードやホンダ オデッセイはいずれも好調なセールスとなっている。中国市場で確かな販売基盤を持つ日産なら、当然狙っていることだろう。
今回のマイナーチェンジでエルグランドのブランド力がまだまだ確かであることを証明出来たら、次はぜひエルグランドのフルモデルチェンジを。初代エルグランドでトヨタを焦らせた「攻めの日産」を再び見てみたい!
[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)]