【高校野球】飛ばすコツは大谷翔平…1か月半で本塁打量産、北の通算35発は4年後プロへ

クラーク記念国際・金原塁【写真:石川加奈子】

今夏の北海道独自大会で4試合連続アーチと覚醒したクラークの金原塁

北海道に高校通算35発を放った右の長距離砲がいる。クラークの金原塁内野手(3年)は今夏の北海道独自大会で4試合連続アーチと覚醒。100メートル11秒80と快足も誇る大型内野手は大学に進学し4年後のプロ入りを目指す。

コロナ禍に翻弄された高校最後のシーズンに大きく成長した。春休みの本州遠征が中止になり、練習試合再開も7月になってからと遅かったが、わずか1か月半の間に19本塁打を量産した。駒大岩見沢時代から強力打線を作り上げてきた佐々木啓司監督も「飛ばす能力はこれまで見てきた中で一番ある」と一目置く打者になった。

圧巻は今夏の空知支部大会初戦から北北海道大会準々決勝までの4戦連発。準決勝の武修館戦は3連続四死球の後、遊ゴロに倒れて5戦連続を逃したものの、決勝までの6試合で17打数11安打11打点の活躍でチームを頂点に導いた。

飛ばすコツをつかんだヒントは、エンゼルス・大谷翔平投手の動画にあった。フリー打撃で打つ時に軸足を上げる“逆一本足打法”を昨年12月から取り入れた。「前に壁をつくるためにいいなと思って。最初はバラバラでしたが、何度もやってイメージできるようになりました。体が前に突っ込まなくなり、軸で回れるようになったことが、飛距離につながったんだと思います」と金原は説明する。

飛距離アップが打率アップにも結びついた。「去年までは強く振って飛ばしたい気持ちが強かったのですが、今年は無駄な力を入れず、一番バットの出やすい70%くらいの力で振っています。打率も良くなりました」と進化に大きな手応えを感じている。

16年に完成した専用野球場にも打球を飛ばす要因が…「風がバッターを育てる要因になる」

力まずに飛ばす能力を高めた一因は、クラークの練習環境にもあった。16年に完成した専用野球場は、常にホームベースからバックスクリーンに向かって風が吹いている。「風がバッターを育てる要因になる。バッティングは力んでいたらうまくならないからね」と佐々木監督が球場建設の際、風向きにこだわったからだ。打撃練習や練習試合で気持ち良く柵越えを重ねることで才能を一気に開花させた。

初めてベンチ入りした1年秋から期待されていたが、昨年はケガに泣いた。昨夏の北北海道大会決勝前日の練習中に右膝側副靭帯損傷と脛骨骨折。昨秋も調子は上がらず、昨年までの通算本塁打は16本だった。一転、今年は1か月半で19本。大会中にはプロ志望届の提出も視野に入れていたが、見送ることに決めた。「大会が終わって冷静に考えたら、大学で磨いてからじゃないとプロで通用しないと思ったんです。4年後を目指します」と大学に進学してさらなるレベルアップを目指す。

金原の魅力は打撃だけではない。100メートル11秒80と足もあり、今夏の独自大会でも6試合で4盗塁を決めた。運動神経は抜群だ。宮城の大崎松山中時代は宮城大崎リトルシニアに所属しながら「フットワークを磨きたい」と平日はバスケットボール部にも所属。市の選抜チームの監督から「本気でバスケットボールをしないか」と誘われたほどだ。陸上でも400メートルで県大会優勝。標準記録に0.2秒とどかず、全国大会に出場を逃したものの、仙台市内にある陸上強豪校から勧誘されたエピソードも残っている。

プロ入りを目指すため二塁の守備力を向上「上のレベルでは足りない」

「野球一筋と決めていたので」と悩むことなく野球を選択し、兄・瑶さん(愛知東邦大3年)の背中を追いかけてクラークに進んだ。「負けたくないし、尊敬もしている」という兄が16年夏の甲子園に出場した時から心に決めていた進学先だった。

今夏の北北海道大会準決勝を見に来た瑶さんから「自慢の弟だな」と褒められて喜んだ。男ばかり6人兄弟の三男である金原は「兄とは『来年お互い神宮に行けたらいいね』と話しています。その先は2人でプロ入り。野球大好きの父からは『兄弟でプロに入ってくれ』と言われています。その期待に応えられるように頑張りたいです」と目を輝かせる。

プロを目指すには、守備のレベルアップも必要だ。中学時代の捕手で高校2年春までは外野手。本格的に二塁を始めて1年ほどなので、まだまだ伸び代はある。「ゲッツーのターンやボールの握りかえの速さは、上のレベルでは足りない」と課題は明確。同じポジションで憧れの楽天・浅村栄斗内野手の動画を参考に練習を重ねる。「広角にホームラン打てる強みと崩れても軸がぶれないのはすごい。守備もすごくうまくて、ゲッツーのベースタッチはよく見ています。足を生かして、守備範囲を広くしてピッチャーを救いたいです」。理想のプレーヤー像を思い描きながら次のステージへの準備を進めている。

【動画】北の大地から4年後プロを目指す! クラーク記念国際・金原の風格漂うスイング

【動画】北の大地から4年後プロを目指す! クラーク記念国際・金原の風格漂うスイング signature

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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