メクル第486号 体操指導者 内村周子さん=諫早市= 誰かに必要な「あなた」

「今を大切にすることで、人生は楽しくなる」とメッセージをくれた内村さん=諫早市栗面町、スポーツクラブ内村

 長崎がんばらんば国体(2014年)で本県の体操(たいそう)成年女子チームの監督(かんとく)を務(つと)め、現在(げんざい)も指導者(しどうしゃ)として活躍(かつやく)する諫早(いさはや)市の内村周子(うちむらしゅうこ)さん。この4月からは長崎純心(じゅんしん)大の大学院生として児童心理学を学んでいるという内村さんにお話を聞きました。

 体操を始めたのは中学2年の時。モントリオール五輪(1976年)金メダリストの「白い妖精(ようせい)」ナディア・コマネチの演技(えんぎ)を見たことがきっかけです。「私のためにあるスポーツだ!」と思いました。
 ただ、おてんばだったので、体操部に入ることを先生にも親にも許(ゆる)してもらえなくて。真面目に掃除(そうじ)をする、宿題をする、廊下(ろうか)は走らない-。先生と交わした三つの約束を守って、やっと入部できました。
 高校時代、加納(かのう)弥生(やよい)さんの練習風景を大会で目にしました。彼女(かのじょ)はNHK杯(はい)で4連覇(れんぱ)した選手。共に学びたいと、私(わたし)も東京の大学を目指しました。でも、地元の短大に進むことに。「死に物狂(ぐる)いで練習をしよう」と思いました。ただ、五輪出場はかないませんでした。後悔(こうかい)は今もあります。
 大学を卒業してからは公立高に1年勤(つと)め、民間の体操教室で指導に携(たずさ)わった後、1992年に夫と諫早市にスポーツクラブを開きました。自分たちの手で選手を育てたいという思いが強くなったからです。最初は少人数でのスタートでしたが、今では多くの生徒に恵(めぐ)まれています。

スポーツクラブ内村の体操教室。子どもたちの「心の成長」も大事にして指導に当たっている(内村さん提供)

 指導者として体操教室で大事にしているのは「感(かん)謝(しゃ)」の気持ち。運動ができる、応援(おうえん)してくれる人がいる、それだけで「ありがとう」なんですよね。もちろん技術(ぎじゅつ)の向上は重要ですが、決して「技(わざ)ができる、できない」だけではない。あいさつや返事など、人としても大切なスポーツマンの心得が、生徒にとっての「当たり前」になるよう、指導しています。
 「大変なことは?」とよく尋(たず)ねられます。例えば、話を聞くのが苦手な子どもがいるとします。でも、それは私の指導に魅力(みりょく)がないのかもしれない。興味(きょうみ)のある授業(じゅぎょう)なら参加するかも。捉(とら)え方次第で「大変なこと」は、大変じゃなくなるんです。人と関わることは難(むずか)しいと感じますが、それ以外は何でも乗り越(こ)えられる気がします。だから、生きてさえいればどうにかなると思っています。
 今はもう、誰(だれ)に勝ちたいとか、そんなことは考えなくなりました。毎日、目が覚めただけで私にとっては奇跡(きせき)。自分がしたいことをする! それも「周子らしく」。今日を精(せい)いっぱい、大切に生きたいと思っているんです。
 4月からは学生として長崎純心大の大学院に通っています。指導者として常(つね)に学び続けたいという思いからです。実はそれまでも研究生として児童心理学を勉強していました。大学院の試験に合格(ごうかく)する自信はありませんでしたが、教授が「受験してみたら」と後(あと)押(お)ししてくれました。睡眠(すいみん)時間を削(けず)ってリポートを書くこともあります。でも、とても楽しいです。
 皆(みな)さんも、もしやりたいことがあるのなら、諦(あきら)めないでほしい。どうか「今を大切に」。夢(ゆめ)や目標を探(さが)している人もいるかもしれません。たくさんの出会いの中には、あなたに必要な人がいる。同じように、あなたもきっと誰かに必要とされている存在(そんざい)です。一人じゃない。それを忘(わす)れずにいたら人生は楽しくなるよ、と伝えたいです。

 【プロフィル】うちむら・しゅうこ 諫早市生まれ。同市立御館山(みたちやま)小-純心女子中-純心女子高-県立女子短大(現県立大)卒。現在、長崎純心大大学院に在学中。諫早市の「スポーツクラブ内村」でコーチを務め、体操とバレエを指導している。五輪金メダリスト、内村航平(うちむらこうへい)さんの母。


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