川崎宗則がたった1球で示したスター性 初球弾に盟友西岡も唸る「さすがの一言」

第1打席で初球を捉え、本塁打を放ったBC栃木・川崎宗則【写真:荒川祐史】

約10か月の実戦ブランクながら今季の実戦でいきなり特大のアーチ

ムネリンが鮮烈な1発で独立リーグデビューを飾った。ルートインBCリーグ・栃木ゴールデンブレーブスに今月加入した元ソフトバンクの川崎宗則内野手が13日、本拠地での茨城アストロプラネッツ戦の初打席で、初球に特大弾を放った。今季は無所属で独自にトレーニングを続け、約10か月も実戦から離れていた中でいきなり描いたアーチ。目の覚めるような1発に、チームメートの元NPB選手たちからも一様に驚きの声が上がった。

川崎は「2番・三塁」でスタメン出場。3年ぶりの国内復帰戦で、初回に迎えた第1打席だった。初球の直球をフルスイングして引っ張ると、打球は大きな弧を描いて右翼芝生席へ。あと数十センチで場外という打球に、スタンドは騒然とした。結果的にこのソロが決勝点となりチームは3-0で勝利。川崎はこの試合のMVPに選ばれ、終始ムネリンの独壇場だった。

「体に任せて。狙うとかはなくて、投げてきた球がバットに当たる球だったら振ってしまおうと。それがたまたまホームランだったんですけど。たまたま当たっただけです」

あっけらかんと振り返った川崎。チームメートにはスライダー狙いだったと話していたようで、即座に体が反応してとらえた1発だった。試合後のヒーローインタビューでは「昨日は緊張してなかなか寝られず、(相手)先発の大場くんの動画を朝まで見ていたので、その研究の成果が出ました。イメージしてたんで。今の時代はいいですね。研究できるんで」とも。たとえ独立リーグでも準備を怠らず、イメージを膨らませていたからこその初球弾でもあった。

名刺がわりにしては強烈すぎる1発の凄みを、最高峰の舞台でともに戦ってきた元NPB選手たちはよく分かっている。2006年のWBCで川崎と二遊間を組み、この日は「4番・一塁」でスタメン出場した元阪神の西岡剛内野手は「かっこいい」と兄貴分の勇姿にうっとり。大勢のマスコミや1000人超の観客の視線が注がれる重圧の中での結果に「川崎さんも最初の打席の初球はすごく集中していたと思うし、そこで結果を出すのはさすがの一言」とうなった。

さらに元ヤクルトの飯原誉士外野手兼ヘッドコーチも「初球を振りに行けるのもすごいし、それをホームランにするなんて……」とあっけにとられた様子。実戦経験のブランクを全く感じさせないスイングには「びっくりというか、驚きですよね。やっぱりスター選手」を舌を巻いた。

打席に臨む準備と、振り切る思い切りのよさ。元巨人の寺内崇幸監督は「初球を振って、さらにホームランという最高の結果が出せる気持ち的な部分や、準備はさすがだなと思いました。ベンチ(の若手)からも『すごいな』と声も上がっていましたし、いい刺激になったと思います」とチームに与える好影響を語った。

ハイタッチをする川崎宗則(左)と西岡剛【写真:荒川祐史】

チーム事情考慮し、西岡との「二遊間コンビ」復活はお預け 栃木ファンに「気軽に話しかけて」

20代前半でソフトバンク不動の遊撃に君臨し、メジャーリーグにも挑戦した39歳の存在感は、やはり別格。初回の守備では強烈なゴロをファンブルしながらも素早い送球でアウトにすると、割れんばかりの拍手が巻き起こった。立ち上がりに2連続で守備機会が訪れ「とにかく僕のところに打たせるなと思ってたんですが、成瀬くんが2回も打たせて」と、先発の元ロッテ・成瀬善久投手に“クレーム”をつけてスタンドの笑いを誘った。この日は5回の守備から退いたが、ベンチでは最後まで誰よりも大きな声でナインを鼓舞。初回の守備につく時や、ヒーローインタビューを終えた際はスタンドに深々と一礼し、その姿にファンは釘付けだった。

デビュー戦では西岡との「二遊間コンビ」復活はお預け。シーズン当初からチームで二遊間を形成してきた20代前半の齋藤尊志内野手と内山翔太内野手がプロ注目の選手とあって、スカウトへのアピール機会を確保したい事情もある。それは川崎も西岡も十分理解した上で「また近いうちに機会があれば」と期待した。

BCリーグのシーズンは10月まで。川崎は昨季プレーした台湾プロ野球に戻ることを希望しているが、たとえ2か月弱でもどっぷり栃木に染まるつもり。この日のアーチを振り返り「人生一のホームランを栃木で打てたのがうれしいです。栃木に家を建てたいなと考えてます」とリップサービスも交えながらニッコリ。栃木のファンには「気軽に話しかけてほしい。方言も教えてほしい」と呼びかけた。新天地でこれ以上ないスタートを切ったムネリンが、これからさらに驚きを届けていく。(小西亮 / Ryo Konishi)

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