「遺族に会って謝罪したい」 川崎中1殺害事件で少年の父親

 川崎市川崎区の多摩川河川敷で昨年2月、市立中学1年の男子生徒=当時(13)=が殺害された事件で、殺人と傷害の罪に問われたリーダー格の無職少年A(19)の裁判員裁判の第3回公判が4日午前10時、横浜地裁(近藤宏子裁判長)で始まった。

 3日連続で開かれた公判の最終となるこの日はまず少年の両親への証人尋問が行われた。少年の父親は「会って謝罪したいです」「一生かけてできる範囲のことはしていきたい」と述べた。息子に対しては「やったことに対して深く反省してもらいたい。私たちができることをサポートしていきたい」と話した。【弁護人−証人尋問】 −この裁判が始まってから被告人の話を直接聞き、どんな感想を持ちましたか。

 「思ったことをきちんと、素直に話していると思います」 −昨日、(被告人の鑑定を行った)証人の須藤明先生の話を聞かれていましたか。

 「はい」 −お子さんに体罰をしたというのは間違いないですか。

 「はい。間違いないです」 −手を上げるときは、どんなときだったんですか。

 「時間を守れなかったとき、うそをついたとき、人にけがをさせたとき、2度言って聞かないときにはたたいていました」 −正座はさせていましたか。

 「はい。最初に正座をさせて話をさせていました」 −お父さんが、家族内で大切にしていたことはありますか。

 「みんなで集まって、朝と夕食を一緒に食べることを基本にしていました。出掛けるときもなるべく一緒に行くと決めていました」 −門限は何時にしていたのですか。

 「早くて5時です。一緒に夕食をとるとなると、早く帰ってこないといけないのでその時間にしていました」 −体罰を与えたときの被告人の反応はどうでしたか。

 「最初のうちは悪いと考えているようでしたが、大きくなってからは、たたかれるのが嫌でよけることがありました」 −よけたとき、あなたはどうしましたか。

 「時には蹴ることもありました」 −あなたは、被告人にどんなことを伝えようと思っていましたか。

 「大人になってからは、時間を守る、人にうそをつかない、どんどんうそをつくと信用されなくなる、人にけがをさせたら大変なことになると言いたかったのと、あいさつするのが基本なので、(そう教育すると)決めていました」 −規律を重視していたということですか。

 「はい」 −勉強のことなどで怒ったことはありますか。

 「勉強のこととかで怒ったことはないです」 −家族を大切にしたいというのはありますか。

 「はい。それが一番にあります」 −事件が起きた時、仕事は何をしていましたか。

 「運送会社で働いていました」 −今、仕事はしていますか。

 「この事件で仕事を失って、いまは無職です」 −少年時代の被告人はどんな子でしたか。

 「息子は思ったことを話せず、内面に秘めてしまう子でした」 −具体的なエピソードはありますか。

 「同級生に対して暴力を振るい、学校から呼ばれることがありましたが、『なんでそういうことをしたのか』と聞いても、息子はがんとして話をしなかった。後で、妻に言ったのは、妻の国籍のことで友だちからからかわれて、何度か言われて殴ったということだった」 −お父さんが見た被告人の性格は。

 「気が小さく、小さい子どもたちに優しいところがあります。妻や亡くなったおじいさん、私の母に対して、荷物を持ったり、一緒に病院に行ったりするようなところもあります」 −いま振り返ってみて、何がいけなかったと思いますか。

 「息子は口数が少なく、心に全部秘めてしまうので、問題があればうちらに言ってくれれば…という思いがあります」 −きちんと相談してくれれば乗ってあげていたということですか。

 「はい」 −被告人との接し方で問題があったと思うことはありますか。

 「関わる時間が少なかったこと、相談すること、物事に対して自分で考えさせることをすればよかったと思います」 −相談されたことがありますか。

 「高校3年生のとき、就職を何にするか決まっていなかったので、相談を受けたことがありました」 −被告人にとって、お父さんは相談しやすかったと思いますか。

 「私が決めたことを、あーしろ、こーしろと一方的に言っていたので、相談しにくかったと思います」 −体罰することで生活態度は変わりましたか。

 「変わらなかったです」 −今回の事件で、遺族に対してしたいことはありますか。

 「会って謝罪したいです」 −今、家族として具体的にできることはありますか。

 「今は『こうしたい』とうことははっきり言えません」 −被告人に期待することはありますか。

 「やったことに対して深く反省してもらいたいです。そして、私たちができることをサポートしていきたいです」 −具体的にはどうやってサポートしていきますか。

 「会話を十分にしていきたいと思います」 −家族としてどうしていきたいか。

 「会話を広げて、絆をもっと持っていければと思います」 −加害者家族として、どうしていきたいか。

 「一生かけてできる範囲のことはしていきたい」 −収入はありますか。

 「今はないです」

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