元巨人、2009年WBC侍ジャパンのチーフスコアラーだった三井氏が解説
5位の広島は13日に阪神に敗れ、借金は今季最多の10となった。打線のつながりに欠け、4番の鈴木誠也外野手に負担がかかる状況。13日の阪神戦(甲子園)では阪神・藤浪から17号先制3ランを放ったものの、不振は続いている。
元巨人で20年以上スコアラーを務めた三井康浩氏は鈴木誠が抱える悩みは、清原和博氏らかつて巨人に在籍した右の強打者も経験し、そして乗り越えていったことであると指摘する。果たして、その中身とは――。
球界を代表するスラッガーが苦しんでいる。2試合続けてノーヒットで迎えた13日の阪神戦では豪快な一発を藤浪からライナーで左翼席に運んだ。そのスイングは「一番、距離ができて、自分のタイミングで打てていた」と三井氏は解説したが、鈴木誠を巨人のスタッフとして見てきた同氏から見れば、得意な球であり、甘い球でもあった。この本塁打だけで「復調した」と表現するのは難しいと話す。
続く2打席目の対応が鈴木誠らしくないと三井氏の目には映った。2ボールからの3球目の151キロのインハイの直球にのけぞった。3ボールから最後はフルカウントまで行き、外角のボールを当てるだけの二ゴロに倒れた。
「彼の中で、少しストライクゾーンが狂っているのかなと思います。あの(3球目の)のけぞった1球が影響して、それが最後まで残ってしまった。ある程度、抜けてくるイメージがあったと思うが、そんなにのけぞるボールではなかった。2ボールからだったので、踏み込んでいった。インコースを怖がってはいけないと思って、踏み込んでいるから、のけぞってしまったのだと思う。自分の間合いの中で、藤浪を消化していない感じがしました」
内角を怖がらない鈴木誠だが、この1球で外が遠く感じてしまったのだろう。三井氏は自身の感覚の中でストライクゾーンがズレてしまっているのではないかと分析する。5打席目にはこの日2安打目も放ったが、決して内容が良いとは言えないものだった。
ストライクゾーンの狂いは修正しなければいけない“厄介な”ものだという。三井氏が巨人のチーム付きスコアラーだったとき、清原和博氏や広澤克実氏ら右の強打者たちにも同じことが起こったことがある。
たまに落合博満さんも内角攻めに遭い…
「清原や広澤、たまに落合(博満)さんも内角を続けられて、ストライクゾーンが狂うケースがあった。そうすると、彼らはインコースのボール球に手が出たり、アウトコースの際どいところが遠くに見えていまう」
巨人の4番を務めた男たちを修正するため、三井氏はスコアラーとして助言を送った。
「まず大事なことは怖がらずにボールへ入っていくこと。どうしてもボールを怖がると受けてしまい、その軌道に左肩や腰が入っていけない。試合前のティー打撃から、ボールの軌道に入る意識付けを繰り返し、繰り返しやっていました」
特に広澤氏はボールを受けるとテークバックが大きくなり、バットが出てこなくなるタイプだったと明かす。これまで同様に、ボールへ向かって入るように意識付けできれば、鈴木誠の状態は上がってくると見ている。今は我慢の時でもある。
「あとは、鈴木選手にどういう状態になってるとか、周囲がしっかりとアドバイスを送ってあげることも必要だと思います。彼は練習する選手と聞いています。自分でわかっているかもしれないけど第三者の目も重要になってくる」
藤浪から打った本塁打は第1打席だった。前日にストライクゾーンが狂っていても、次の日になると相手投手によって戻ることもある。「良い方向にスイッチが切り替わると、今日の1打席目みたいに入ってくれることもある。バッターというのは小さなきっかけで変わることがありますから」
チームが乗り切れていないとあり、4番の責任を強く感じてしまっているのかもしれない。そういう気持ちの焦りだけでも打撃というものは変化してしまう。少しずつ感覚を取り戻していけば、また本来の姿になっていくだろう。(Full-Count編集部)