【高齢期の住替えを考えるVol.9】コロナ禍で孤立する要介護の高齢者を救え

高齢者向け住宅や老人ホーム等の募集・契約を手がける株式会社イチイ シニア事業部。
当事業部からの投稿文「高齢期の住替えを考える」を連載でお届けいたします。

【今号のキーワード】
「自分にとって最適な住まいとは何か」早めにしっかりと考えておくことが大切。コロナ禍を機に、その重要性が一層明確になったのではないでしょうか。

第9回『コロナ禍で孤立する要介護の高齢者を救うには』

❑高齢期の住まいと暮らしを専門とする「専任アドバイザー」(㈱イチイ シニア事業部在籍)に執筆してもらいました。

新型コロナウイルスの感染拡大は、高齢者の暮らしにも深刻な影響を及ぼしています。

今号は、自宅で高齢の母親を介護していた女性が感染した結果、要介護の高齢者が自宅にひとり取り残されてしまった事例をご紹介します。

コロナ禍で苦境に立たされた高齢者の実情を連載でレポートし、コロナ時代の高齢者の住み替えについて、ご一緒に考えていきたいと思います。

娘が感染、要介護の母が自宅に一人取り残され

今年7月、自宅で要介護4のSさん(85歳女性)を介護していた娘さん(52歳)が、新型コロナウイルスに感染していることがわかりました(PCR検査で陽性)。
そのため、娘さんは高齢の母親と2人暮らしの自宅には戻れなくなったのです。

このとき、母親Sさんの弟さんからこんなご相談がありました。

「介護者がいないと、姉のSは1人では生活できません。すぐに入居できる介護施設を紹介してほしいんです」

そこで、空き室のある介護施設に問い合わせたところ、すべての施設から入居を断られました。
感染者と同居していたSさんは、現状では濃厚接触者に当たるという理由からです。

「早めに住み替えておくべきだった」

困り果てた弟さんは行政に相談しましたが、濃厚接触者というだけで(PCR検査を行う前に)、入院などの措置はとれないとのこと。
とりあえずは行政の用意したホテルの一室で一時的に滞在し、しばらく様子をみてくれることになったのです。

弟さんはこう後悔されていました。

「介護をしていた一人娘は会社勤めもしていたので、“自宅での介護はもう限界です”とずっと話していたんです。数年前から高齢者向け住宅や介護施設をあちこち見学していましたが、こうなる前に早めに入居しておくべきだったと思います」

「自分にとって最適な住まい」考えたい

このように在宅の要介護者が孤立してしまい、行き場さえもないという事例が今、数多く報告されています。
いまだウイルスの終息が見通せない中、誰もが難しい判断を迫られ、どう対応していいか苦しんでいるのが実情です。

まずは「自分にとって最適な住まいとは何か」について、早めにしっかりと考えておくことが大切だと思います。

昨今のコロナ禍をきっかけに、その重要性がより一層明確になったのではないでしょうか。

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