日本ではほとんどの学校で対面式の授業がはじまっていますが、世界各国の教育現場ではどのような対応を取っているのでしょうか。アメリカ・フィンランド・フィリピンの三カ国に絞って、現地の人にヒアリングをしました。
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日本の学校は対面式授業が再開
新型コロナウイルスの新規感染者数が、少しずつ下がりつつある日本。小学校や中学高校は、ほとんど対面式の授業が再開しており、大学も対面授業が少しずつ再開しつつあります。
一方で世界各国の教育現場はどのような対応を取っているのでしょうか? 7~8月にかけては夏休みが続いていた国が多かったですが、夏休み後の学校は再開しているのでしょうか?筆者が過去に訪れた小学校の先生や、現地に住む知人など、さまざまな人から集めた情報をもとに9月現在の最新情報をまとめてみました。
【注意事項】
少しでも正しい情報を得るために現地の人にヒアリングをしました。しかしコロナウイルスをめぐる対応は、同じ国の中でも地域や自治体によって大きく異なります。
あくまでも「9月中旬時点での、その国のある地域に住む、ある人の情報」に基づいた情報をまとめています。「その国ではすべてこのように行われている」というわけではありませんので、その点はご了承をお願いします。また、この記事は9月11日に執筆しています。
世界最大の感染者数・死者数のアメリカ。学校の授業はどうなっている?
- 人口:約3億2820万人
- コロナウイルス感染者数:642万人(9/11現在)
- 1万人あたりの感染者数:192人(世界2位)
- ヒアリングした人:教育事業を営んでいるアメリカ人
- ヒアリングした人の住む地域:ロサンゼルス(カリフォルニア州)
【小学校~高校】ほとんどの学校で対面授業は中止、オンラインでの授業
現在はほとんどの学校で、対面授業は中止されており、オンラインでの授業が行われています。7月ごろには「感染リスクの少ないエリアでは、対面授業を再開させたい」という方針もあったのですが、なかなか感染状況が落ち着かず。人口が約4000万人のカリフォルニア州で毎日、数千人規模の新規感染が確認されています。
今年いっぱいは、オンラインでの授業が続くであろうと予想されています。すべての子どもたちがオンラインでの授業を受けられる環境を構築することが、課題となっています。
【大学】ほとんどの学校で対面授業は中止、オンラインでの授業
ほとんどの学校で対面授業は中止されており、オンラインでの授業が行われています。UCLA
(カリフォルニア大学ロサンゼルス校) は、すでに今年度の授業はすべてオンラインのみで実施すると発表しています(アメリカの大学は、9月に始まり、6月が学期末になります)。
【補足情報】
アメリカは、州ごとに行政の方針が大きく異なる国です。たとえば、ハワイ州では対面授業がスタートしつつあります。また、ニューヨークでは、米国大都市でははじめてとなる学校再開に踏み切る動きが進んでいます。
新型コロナウイルスの封じ込めに成功したフィンランド。学校の授業はどうなっている?
- 人口:約550万人
- コロナウイルス感染者数:8,469人(9/11現在)
- 1万人あたりの感染者数:15.4人
- ヒアリングした人:公立小学校の教員
- ヒアリングした人の住んでいた地域:カーリナ(フィンランド南西部)
【小学校~高校】ほとんどの学校が対面形式で再開
夏休みが明けてからは、ほとんどの学校が対面形式で再開しています。フィンランドの小学校の先生はこのように話していました。
「手洗いをよく行う、ソーシャルディスタンスを確保する、生徒たちは検温をして、熱があれば自宅待機にする。このようなルールはありますが、日常的な学校が戻ってきました。学校内でコロナウイルスの陽性者が確認されれば14日間の休校となりますが、私の学校は今のところ大丈夫です。早くコロナウイルスが収束することを願っています。」
【大学】基本的にはオンライン授業が中心
基本的には、オンラインで授業を行なっているところが中心です。10月以降には対面形式の授業を開始する方針の大学もあるようです。
小学生から大学生まで通して、家庭内で生徒・学生達が使えるICT環境が比較的整っているため、対面授業ができない期間も、オンラインでの授業は充実していたそうです。
学校にICT環境が整っていないフィリピン。学校の授業はどうなっている?
- 人口:約1億670万人
- コロナウイルス感染者数:25.3万人(9/11現在)
- 1万人あたりの感染者数:23.7人
- ヒアリングした人:公立小学校教員の弟をもつフィリピン人
- ヒアリングした人の住んでいる地域:セブ島
【小学校~高校】ほとんどの学校は休校状態
ほとんどの学校は、現在も休校状態です。私立を中心とした一部の学校を除いて、オンラインでの授業も行われていません。政府は、10月6日に遠隔学習を再開させるという方針を打ち出しています。原則的には、生徒は学校には通いません。遠隔学習は、2つの方法から受け方を選べるそうです。
1つ目は、オンラインデバイスを使った授業。フィリピンでは、デバイスだけでなく、インターネット環境も整っていないため、課題がたくさんあります。そのために用意されている2つ目の方法が、プリント学習です。先生がプリントを作成して、生徒たちが自宅で学習をするという方法です。
しかしこちらの方法にも課題はあります。まず、プリント学習では先生が生徒からの質問にリアルタイムで答えることができません。さらに大きな課題は、十分な量の紙を用意するには少なくないお金がかかります。
そのような背景から、今フィリピンの学校では、紙不足が深刻な問題となっているようです。リソースが限られている中、紙やプリンターを準備して、生徒全員のプリントを準備することにも大きな課題があります。
【大学】ほとんどの学校で対面授業は中止、オンラインでの授業
小学校や中学校と比べると、学校側も学生側も、ICT環境が整っているため、多くの大学でオンラインの授業は実施されています。
質の高い教育をみんなに
日本やフィンランドのように、小学校や中学校での対面授業が再開しつつある国もありますが、世界的に見ると、まだまだ対面授業が難しい国はたくさんあります。
「先進国」のイメージが強いアメリカであっても、すべての家庭に充分なICT機器が揃っているわけではありません。さらにフィリピンのような発展途上国ではより一層、遠隔学習には課題がたくさんあります。
国連が定めるSDGs(持続可能な開発目標)の4番目には、「質の高い教育をみんなに」という目標が掲げられています。達成のための課題はたくさんありますが、ICT機器やネットワークなどの学習環境の整備は大きな鍵の一つとなりそうです。
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【参考文献】
外務省海外安全ホームページ
各国・地域における新型コロナウイルスの感染状況