《和食編》意外と知らない「和食マナーの基本」!お箸の使い方や食べ方は?

社会人になると、仕事関係での会食や冠婚葬祭に出席する機会が増えます。そんな時身につけておきたいのが食事のマナー。とくに和食のマナーは、すでに身についているようでいて意外と知らないことや勘違いが多いかもしれません。

格式の高いお店で食事をする際に、箸の上げ下げにすら緊張してしまったら、せっかくの美味しい食事や交流の時間がもったいないですよね。

周囲を不快にさせないだけでなく、普段とは違う特別な食事を心ゆくまで楽しめるよう、和食の伝統的なマナーを振り返っておきましょう。

入室から食事を始めるまでのマナー

和室での注意点

食事の時間は席につく前から始まっています。
和室では、敷居や畳の縁をまたいだり、踏んだりしないよう注意しましょう。

床の間を背にする席が上座で、出入り口へ近づくにしたがって下座となります。
入室したらすぐに座らず、まずは目上の人(または招待してくれた人)に着席をうながされるのを待ちます。

勝手に席を決めず、すすめられた座布団に座るようにしてください。

おしぼり

おしぼりを使う時は手だけを拭くようにし、顔や机など別の場所は拭かないようにしましょう。

右手で持ち、左手に持ちかえて手を拭いてから、使った側を内側にして戻します。

和食の基本構成と配膳

会席料理

会席料理は、宴会や会食など、お酒が出るような場面でいただくコース形式の料理です。
まとめて配膳される場合もありますが、おもに次のような順番で構成されています。

  • 先付け(前菜)
  • 椀物
  • 向付け(お造り)
  • 焼き物
  • 煮物
  • 強肴(揚げ物・蒸し物・酢の物など)
  • ご飯・留椀・香の物
  • 水菓子(果物)・甘味

お酒を飲む場合は、ご飯が出た時点で飲むのをストップしましょう。

懐石料理(茶懐石)

懐石料理はもともと茶事の席で出されていた食事で、会席料理と発音が同じなので茶懐石とも呼ばれています。
日本古来の「一汁三菜」を基本にしており、さらにお漬物がつく場合もあります。
その構成と配膳の位置は次の通りです。

  • ご飯 左手前
  • 汁物 右手前
  • 主菜 右奥
  • 副菜2品 真ん中と左奥

お箸の基本マナー

お箸の使い方

お箸を手に取って食事を始めますが、お箸の種類によって最初の所作が違ってきます。
割り箸の場合は横向きに持ち、上下に割りましょう。

箸袋が付いているなら右手で取って左手で箸袋を抜き去ります。
箸が巻紙で束ねられていることがありますが、この場合は紙を破るのではなく、右手でお箸を取って左手で巻紙を左にずらして外します。
箸置きがない場合は結ぶか折るかした箸袋や、巻紙を箸置き代わりに使ってください。

お箸を手に取る際は、次のような3ステップで行います。

1.右手でお箸の真ん中を取って持ち上げる

2.左手で下から支え、右手をずらしてお箸を持つ

3.左手を外す

食べる際のポイント

お箸は上側を動かすようにします。
ひと口分ずつ取るか、食材が大きい場合は箸で小さく切り、口に運びましょう。

箸先を濡らすのは3センチ程度までに留めるのがポイントです。

またコース形式でなければ、1品を集中して食べることはせず、各料理を少しずつ食べ進めていきます。

食べ終わったら、箸置きがあればそこにお箸を置きます。
箸袋に戻す場合は、使用済みであることがわかるよう先端を下側に折り曲げましょう。

箸袋を結んで箸置きにした場合は、結び目に差し込んでも構いません。

お箸のよくない使い方

行儀が悪いとされるお箸の使い方は、「きらい箸」と呼ばれています。
「きらい箸」には次のようなものがあります。

  • にぎり箸……お箸を拳で握り込む
  • 刺し箸……食べ物を先端で刺して取る
  • 返し箸……大皿から食べ物を取る時、持ち手側で取る。逆さ箸とも
  • 迷い箸……どの料理に箸をつけるか迷って皿の上をうろうろする
  • 寄せ箸……皿の縁にお箸を引っかけて引き寄せる
  • 渡し箸……皿の上に渡すようにお箸を置く
  • ねぶり箸……お箸の先についた食べ物のかけらを舐め取る
  • 涙箸……水分の多い食べ物を取る時に汁を垂らす

このほか、よくやりがちなマナー違反として手皿があります。
箸から食べ物がこぼれないよう手を皿のように構えて食べる仕草で、一見配慮があるように思われるのですが、マナーが求められる席では控えましょう。

料理別食べ方のマナー

ここからは、料理別のマナーをご紹介します。

平皿はそのまま、小鉢や椀物は手にとって食べる

大きな平皿は手に取らずに食べるか、取皿に取ってから食べます。
手のひらに収まる程度の小鉢や椀物、醤油皿などは手にとって構いません。
口元に近づけすぎるのはよくありませんが、手にとると食べ物がこぼれにくく落ち着いて食べられるので、品よく見えます。

汁物や煮物など、蓋のある椀物

目上の人が開けてから手をつけましょう。
蒸気で吸い付いていることがありますが、左手でお椀を押さえながら、右手で蓋を持って弧を描くように回すと簡単に開けられます。

蓋は椀のそばの外側に置きます。食べ終わったら元通り蓋をしてください。
蓋を逆さに置いたり、斜めに置いたりすると器を傷める原因ともなるので、望ましくありません。

向付け(お造り)

お造りは左手前→右手前→真ん中→奥の順に食べ進めます。
ワサビなどの薬味は醤油に溶かさず、刺し身に少し載せてから醤油をつけましょう。

焼き魚

魚は左から右に向かって食べるのが基本です。

鮎など、魚が小ぶりな場合はお箸を寝かして身のところどころを押さえます。
すると身から骨が浮き上がるので、左手で魚の頭を持って中骨ごと引き抜きます。

魚が大きめの場合は、まず表側の奥半分(背側)→手前半分(腹側)と食べ進めます。
次に、お箸で身を押さえてはがしやすくしたあと中骨を外し、ふたたび裏側の奥半分→手前半分と進めます。

骨はお皿の左奥にまとめて片付けます。骨が大きい場合、途中で折るときれいにまとまります。

串物

串物はかじったりまとめて外したりせず、ひとつずつ外して口に運びます。
串はお皿の奥側に寄せておきましょう。

天ぷら

盛り合わせの場合は大きく崩れないよう、手前から食べていきます。
天つゆにつけすぎないようにすると、つゆがポタポタ垂れる心配がありません。塩で食べる場合は、指で塩をつまんでふりかけます。

懐紙があると便利

何かあった時のために、懐紙があると安心です。
懐紙は口元やお箸の汚れを拭いたり、食べ物の受け皿にしたり、魚の小骨や果物の種などを出したりする時に役立ちます。
口の中のものを出す時は口元が見えないよう、懐紙で隠しましょう。

食べ終わったお皿はそのまま

食べ終わると片付けやすいようにお皿を重ねたくなるかもしれませんが、そのまま置いておきましょう。むやみにお皿を重ねると傷のもとになります。
蓋付きのお皿に限っては、食べ終わったら元通り蓋をしてください。

いざという時あわてないために

会席料理や茶懐石などを食べる機会は、社会人になると増えてきます。
いざという時に落ち着いて振る舞えるよう、事前に頭に入れておきましょう。

職人さんが丹精込めて作るお料理なので、背筋を伸ばすような気持ちでいただきたいものですね。

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