アジア初「海洋アカデミー」10月開講 “需要”拡大 専門人材1600人育成へ 長崎大学内に拠点完成 実務経験者らが講師

水槽に洋上風力発電機の模型を設置して作業工程を学ぶ長崎海洋アカデミー=長崎市文教町

 「アジア初」をうたう洋上風力発電の専門人材育成機関「長崎海洋アカデミー(NOA)」が10月に開講する。長崎大学内にワークショップ用の水槽を備えた拠点が完成。全国各地で洋上風力プロジェクトが加速する中、運営団体は5年間の育成目標を当初の750人から1600人に引き上げた。
 NOAは、建設業や情報関連業、金融機関など約70社でつくるNPO法人長崎海洋産業クラスター形成推進協議会(坂井俊之理事長)が運営。当初2年間の事業費5億円は日本財団と県、長崎大、長崎総合科学大、同協議会が拠出した。
 拠点は文教キャンパス(長崎市文教町)内に設置。約140平方メートルの講義室には、砂を敷いて海に見立てた水槽があり、模型を組み立て、作業工程を学べる。さまざまな企業の技術者や担当者が交流できるよう休憩スペースも備えた。
 カリキュラムは、先進国オランダの育成機関のノウハウを取り入れ、日本の制度に合うように策定した。海洋工学の専門家や民間企業の実務経験者らが講師を務める。
 本年度は総論コースを4回(1人1回2日間、定員各20人)開催。新型コロナウイルス感染防止のため年内はオンラインで実施し、来年は集合形式と現場見学を予定している。さらに、事業開発やファイナンスなど業態別の4コースを設定。受講料は県内会員企業の場合1コース5万円。全コース受講を希望する人もいるという。先行して主に地元企業向けに総論コースを開き、43人が受講した。
 また同協議会は、実際の海で機器テストや実証試験を行う「フィールドセンター」を県内に設けるため、地元漁協などと調整中。事業者の手続きの負担を軽減し、使いやすい環境を提供する。
 同協議会の集計によると、洋上風力発電は全国40カ所以上の海域(うち九州9海域)で計画され、総投資額は12兆円(同2兆円)を超える。五島市沖や西海市江島沖で進む本県は「トップランナー」(同協議会)だが、全国的に専門人材が不足している。国内で海洋開発に携わる技術者は約2千人。日本財団の試算では、2030年に発電容量を10ギガワット(原発10基分相当)まで引き上げる国の目標を達成するには、8600人以上が必要になる。
 問い合わせや受講申し込みは同アカデミー(電095.800.2875)。

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