WEC:トヨタ、初日の予選を1-2で終え、『ハイパーポール』へ

 9月17日、WEC世界耐久選手権の第7戦、第88回ル・マン24時間レースが幕を開け、TOYOTA GAZOO Racingの2台のトヨタTS050ハイブリッドは、初日の予選で7号車の小林可夢偉が最速タイムとなる3分17秒089を記録。8号車の中嶋一貴が2番手に続き、ル・マン3連覇へ向けて順調なスタートを切った。

 走行初日となった17日のル・マンは、現地時間午前10時からの2回の練習走行に続き、18日に行われる『ハイパーポール』への進出権を賭けた予選が行われる忙しい一日となった。

 新型コロナウイルスの影響を受けた2020年のル・マンは、これまでレースの2週間前に行われてきたテストデーが実施されず、レースカーがサルト・サーキットを走るのは2019年6月以来となり、最新のローダウンフォース仕様のトヨタTS050ハイブリッドでル・マンを走るのは17日が初めての機会となった。

 チームは現地時間午前10時から3時間にわたる公式練習セッションの時間を使って、ローダウンフォース仕様の空力特性を分析し、ミュルサンヌストレート、ポルシェコーナーなどでのダウンフォースの妥協点を見出すべくセットアップの最適化作業を続ける。

 それぞれの走行セッションの間に設けられたインターバルが短く、ドライバーやチームメンバーは、ミスやトラブルの許されないプレッシャーとも戦わなくてはならない難しい状況のなか、公式練習1回目は大きな問題なく終わり、中嶋が8号車でマークした3分21秒656が最速タイム。そして7号車の可夢偉が0.334秒差のタイムを記録し、総合2番手となった。

 60分間のインターバルを経て、行われた3時間の公式練習2回目で、チームは更なるセットアップを進め、タイヤパフォーマンスの分析や、メカニカル及びハイブリッドのセッティングを続けた。公式練習2回目はLMP2車両のアクシデントにより2度の赤旗中断を余儀なくされたが、8号車がセバスチャン・ブエミにより再びトップタイムをマーク。7号車はマイク・コンウェイが0.892秒差の2番手で続いた。

 合計6時間となる2回の練習走行セッションを経て、トヨタTS050ハイブリッド2台は合計127周、1730kmを走破。チームは、気温が29度に達する暑い一日となるなか、予選へ向けた準備を進める。

 7号車はル・マンで2017年にコースレコードを記録している可夢偉、8号車は2度のポールポジションを獲得している中嶋が、最初の予選のアタックを開始。中嶋はセクター1とセクター2では最速ペースを記録するも、セクター3で逆転した可夢偉が総合トップタイムとなる3分17秒089を記録。中嶋は0.247秒遅れの2番手につけた。

 その後、全てのドライバーが予選セッション中にアタックを敢行したが、新品タイヤと少な目の燃料で最初にアタックした可夢偉と中嶋のタイムを更新することはできず、予選は7号車がトップ、8号車が2番手となり、8号車から4.262秒遅れの1号車レベリオンR13・ギブソンが3番手で続いた。

 予選後の現地時間20時からは4時間にわたるフリー走行3回目(夜間走行セッション)が行われ、翌18日(金)11時30分(日本時間18時30分)からは、予選で各クラス上位6台に入った車両が決勝のポールポジション獲得を競う『ハイパーポール』が行われる。

8号車トヨタTS050ハイブリッド(セバスチャン・ブエミ/中嶋一貴/ブレンドン・ハートレー)

 

■公式予選後のTOYOTA GAZOO Racing WECドライバーたちのコメント

7号車トヨタTS050ハイブリッド

小林可夢偉

「路面コンディションを心配していましたが、周回を重ねるごとに良くなっていき、問題ありませんでした」

「ロングランでのセットアップにはとても満足していますし、さらにデータを収集して改良を続けるつもりですが、良い方向に進んでいると思います」

「TS050ハイブリッドの感触は良いですが、レースは24時間と長いので、快適に、着実に走り続けるための微調整が必要です」

「私の予選アタックラップは圧倒的に速くはなかったですが、トップに立つには十分でした。とはいえあの2017年のレコードタイムには届きませんでした」

マイク・コンウェイ

「久しぶりにル・マンに戻れてとても嬉しいです。まるで家に帰ってきたようで、昨年のTS050ハイブリッドにそのまま乗り続けているような感覚です」

「今日は多くの空力セットアップを試し良い方向に向かっています。今の感触は非常にいいですが、もっとよくなるはずです。今日学んだことを最大限活用し土曜日のレースに備えます」

「可夢偉のトップタイムは良かったですが、勿論レースに向けて集中することがより重要です」

ホセ-マリア・ロペス

「ここに戻ってこられたことをとても嬉しく思っていますし、1年以上ぶりに最初の1周を走ったときは最高の気分でした」

「今日は考える時間も無いほど忙しい一日でしたが、チームが素晴らしい仕事をしてくれて、TS050ハイブリッドも速かったです。可夢偉とマイクもいつも通りよくやってくれました」

「まだバランス面の調整をしていて、さらに改良を続けます。明日のハイパーポールは今日の予選よりも重要で、それ以上に決勝レースが最大の目標ですが、今日の予選で7号車が最速だったのは良かったです」

8号車トヨタTS050ハイブリッド

中嶋一貴

「今日は忙しい日でした。多くの走行時間が設けられ、セッション間の時間もあっと言う間に過ぎました」

「予選の前に計画していたことは全て出来、午前中に空力仕様の比較、午後には異なるセットアップを試しました」

「でもまだやることはたくさんあります。今日の結果から最も効率的なセットアップを見出さなければなりません。明日のハイパーポール・セッションに向けてさらに準備を進めます」

セバスチャン・ブエミ

「今日は全てがスムーズでした。レースに向けて重要な初日ですが、何の問題もありませんでした」

「トラックコンディションも想像していたより良くて空力セットアップの比較も出来ました。今年は時間が限られているので全てのラップが貴重です」

「一貴は良いラップタイムを出し、2台のTS050ハイブリッドが1-2を占めたのは良かったですが、これは明日のハイパーポールに向けたウォームアップに過ぎません」

ブレンドン・ハートレー

「ル・マンに戻って来られたのは大変嬉しいです。昨年はル・マンのテストデーでTS050ハイブリッドを少しだけ運転しましたが、ル・マンを走るために作られた車というのがわかりました」

「今日は多くの周回を重ね、本当に楽しかったです。チームのモチベーションも高く、準備も順調に進んでいるのでレースが楽しみでなりません」

ル・マン3連覇に挑むTOYOTA GAZOO Racingの6名のドライバー

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