中日・根尾は「弱音吐け」 昨季までの同僚が進言する“相談相手”の適任者は?

中日・根尾昂【写真:荒川祐史】

中日で5年間プレーした友永翔太氏が指摘する根尾の強みと不器用さ

7年連続Bクラスからの脱出を目指す中日は、シーズン終盤に向けて懸命の戦いを続けている。1軍に不測の事態があった際の後方支援を担う2軍のナゴヤ球場では、近年にはない華やかさを見せている。中でも、2人のドラ1野手が注目の的。7月に1軍デビューを果たした新人の石川昂弥内野手は、22試合に出場し14安打。打点も記録した。一方、2年目の根尾昂内野手は8月にプロ初安打をマークしたのみで、再び2軍に。20歳を迎えた大器はブレークのきっかけをつかめるのか――。昨季まで一緒にプレーした元外野手は、根尾の持つ強みと不器用さを指摘する。

今季の開幕を2軍で迎えた根尾は、8月4日に1軍昇格。その日から3試合連続でスタメン出場するも、打席で結果はついてこなかった。代打で2試合の出場を挟み、迎えた8月11日の広島戦(マツダ)。「2番・中堅」で先発し、第5打席にプロ初安打となる右前打を放った。通算17打席でようやく待望の一打が生まれたが、その2日には登録抹消。再び2軍で研鑽を積む日々に戻った。

まだ2年目の20歳。将来を担う逸材なだけに、球団は腰を据えて育てる方針に変わりはない。「秘めてるポテンシャルっていうのは、本当にすごい」。2019年まで5年間、中日の外野手としてプレーした友永翔太氏は、間近で感じてきた印象を語る。根尾が1年目の昨季は、ファームで一緒に汗を流した元チームメート。「高卒ルーキーで、あそこまで振り抜ける選手は見たことないですね」と驚きを持って見ていたという。

昨季ウエスタン・リーグでチーム最多の108試合に出場し、2本塁打33打点、打率.210。プロの壁にぶつかりもがく姿があった。「1年目は守備のミスをバッティングで引きずっている部分もあったのかなと思います。すごく悩んでいる顔を見たこともありました」と友永氏。先輩として声をかけることもあったというが、根尾は常に気丈に振る舞っていたという。

「根尾が弱音を吐いたところは見たことなかったです。どんなに暑くても、しんどくても、つらくても。普通は『きついなー』とか、つい言っちゃうと思うんですが、それも全くなかった」

真面目すぎるゆえ心配も「ひとりで抱え込みすぎてしまわないかなと」

真摯に野球に取り組む姿勢の表れだと思う一方で、友永氏は少し気にもなったという。「たまに考えすぎていないかと心配になるというか、ひとりで抱え込みすぎてしまわないかなと」。持ち前の真面目さや、圧倒的な周囲の期待ゆえに、うまく気持ちの“ガス抜き”ができない不器用さもあるのではないかと推し量る。

その上で、気軽に相談できる先輩を見つけてほしいと進言。適任は、キャプテンの高橋周平内野手だという。

「同じ高卒ドラ1野手にしかわからない気持ちもあると思います。周平は自分から後輩に積極的にいく性格ではありませんが、自分に寄ってくる後輩がいれば、丁寧に答える。周平は純粋に野球を楽しんでいるので、学ぶところも多いと思います」

昨季ベストナインを受賞した竜のキャプテンも、7年をかけてようやく規定打席に到達。ブレークまでの苦しみを知っている分、“水先案内人”としての役割はぴったりなのかもしれない。根尾は9月に入って2軍戦で快音を続け、シーズン終盤に向けて再昇格の時を待つ日々。「余計なお節介だとは思いますが、楽しんで生き生きとやってほしい。それだけ雰囲気のある選手ですし、遠からず1軍で活躍する日は来ると思います」。元チームメートの覚醒を、友永氏は楽しみにしている。(小西亮 / Ryo Konishi)

© 株式会社Creative2