「かつや」を展開する企業が、ビジネスパーソンの「食」を徹底して考えた「とろろそば専門店」とは?

リモートワークがすっかり浸透した今でも、どうしても出勤したり打ち合わせに出かけたりしなければいけないことがあります。こういう日はアレコレ用事を詰め込みがちで、昼ごはんさえゆっくり食べられない……なんていうことも。たまの外食に立食いそばやファーストフードは味気なく、できるだけ素早く、美味しいものを食べたいもの。

こういった需要を狙ってか、とんかつ専門店「かつや」を全国展開するアークランドサービスホールディングスは8月、東京・五反田にとろろそば専門店「東京とろろそば」をオープンしました。「ビジネスパーソン×『とろろそば』」の親和性に迫ってみます。


珍しいとろろそば専門店

言うに及ばず、「とろろそば」は日本そばの定番メニューではあります。しかし、「とろろそば」に特化したお店はこれまでに見たことがなく、正直「なんでまた……」と思ったのは事実でした。

しかし、同店は特に奇をてらって開店したわけではなく、「オーナーのとろろへ偏愛が高じて」といったものでもなく、「ビジネスパーソンの食」を徹底的に突き詰めた結果だったそうです。

お店は、ビジネスパーソンが多く行き交うJR五反田駅から程近いエリアにあります。数少なくなった「外出での仕事」の時は、時間節約のため早朝から稼働し、カツカツに予定を入れることがあります。そうなると意外と困るのが、昼食をとる際の飲食店の営業時間。

ファーストフードを除く飲食店の多くは、一般的に朝11時か11時半に開店します。この時間帯に食事をしようとすると、お店は混雑し、料理は仕上がるまでの時間が読めないこともあります。忙しいビジネスパーソンにとっては、この時間ロスにヒヤヒヤすることもありますが、「東京とろろそば」は朝10時開店。ありがたい開店時間です。

落ち着いた色合いの店内

「とろろ」パワーを引き出した個性派3メニュー

店内はモダンで清潔、落ち着いた雰囲気で、慌てて食べて出る立ち食いそばとは確実に違います。感染防止策のアクリル板で仕切られた席に座ると、女性店員さんがオーダーを取りに来てくれます。注文したそばは、店員さんが自分の席まで運んでくれ、食後も片付けてくれるフルサービス式です。

さて、数多くのとろろを使ったそば(うどん含む)のメニューのうち、注文したのは特に「とろろ感」を全面にした「冷ぶっかけ肉とろろそば」、「冷ぶっかけ納豆とろろそば」、「カレーとろろそば」。3食も食うんかい! と思われるかもしれませんが、今回は調査もかねてなので、気になるメニューを全部食べてみるという寸法です。

まず、最初に来たのは「肉とろろそば」(790円+税)。とろろと肉、さらにネギと卵、そしてそば……正直味の想像ができません。まず、細めのそばをすすると、コシがありながらもそば度が薄く、ツルツルいけちゃう感じです。また、本醸造こいくち醤油を使用したそばつゆはキレのある感じでありながら、塩分の尖りはなく程よい味わい。実に繊細な味です。

次にお肉ですが、甘い煮豚が何枚も乗っています。正直これだけでは、前述のお出汁やそばとのバランスは合わない感じもするのですが、そこにねぎ、卵、そして肝心のとろろが合わさることで、想像し得なかったハーモニーを生み出してくれます。

「そばのオーケストラや」と、口に出すのが恥ずかしいワードがつい頭に浮かんでしまうくらい、絶妙なバランスで生み出された味でした。

看板メニューの肉とろろそば

カレーとろろそばってなに?

「冷ぶっかけ納豆とろろそば」(690円+税)は、とろろ、納豆、えのき、ねぎ、卵が乗せられたそば。この味は食べる前からある程度想像できますが、実際に食べてみてわかったのは、「スッキリしていて腹持ちが良い」ということ。特に出歩くこともあるビジネスパーソンは昼食にラーメン、とんかつなどのガッツリ目の食事を採り、午後からの仕事の活力にすることがあると思いますが、油モノを食べすぎて気持ち悪くなったりしたら本末転倒です。

でも、このメニューは口当たりスッキリ、でもしっかりガツンときます。ビジネスパーソンにとっては実に理にかなったメニューのように思いました。

そして、最後が「カレーとろろそば」(790円+税)。カレーととろろ、卵とねぎ……これこそ味の想像が全くできません。鶏ガラベースのスープに浸かったそばの上にはキーマカレーが乗り、さらにその上にとろろと卵が乗り、ねぎが添えられています。もはや、和食なのかどうかすら不明のメニューですが、さっそくいただいてみます。

鶏ガラベースでありながら想像よりもアッサリ。キーマカレーもスパイシーさを抑えしつこくなく、ツルツル食べられます。むしろ、キーマカレーよりもとろろのほうを突出させた印象であり、どことなく甘さも感じるほど。これまで全く食べたことがなかった新しい味です。この「カレーとろろそば」もまた「とろろ」が主人公な一品でした。

初めての味、カレーとろろそば

なぜ今、とろろそば専門店なのか?

これら3つのメニューに共通することは、「『とろろ』本来の風合いを前面に押し出している」「胃もたれせず、それでいて腹持ちもよく、元気が出る」でした。ご存知の通り、とろろにはジオスゲニン、アミラーゼ、食物繊維などが含まれ体力がアップする上、免疫力も高まると言われています。こんな食材が手軽に、素早く、美味しくいただけるなんて、忙しいビジネスパーソンにピッタリだと実感しました。

同店の早川正輝さんはこう話します。

「長芋はすり下ろして出すお店が多いですが、当店では国産長芋を、お店で皮を剥き千切りにしています。この『とろろ』をそばと合わせてお出しすることで、天然由来の食材であっても十分なインパクトと元気を与えることができると思っています」

「とろろそばは、特に忙しいビジネスパーソンの方にはうってつけのメニューだろうと、今回の開店に至りました。立ち食いのおそば屋さんと、一般的なおそば屋さんの中間に位置するよう、絶対的な美味しさと合わせて、スピード感も大事にしています」

同店では12月、「車で仕事をされている人」に向け、神奈川県の相模大野で、ロードサイド店の開店準備をしているそうです。

絶対的な美味しさとスピード感。「ビジネスパーソンにとっての食とは何か」を徹底して考え、理にかなったメニューに特化した「東京とろろそば」のような飲食店は、今後も増えていくとありがたいと思いました。

<文:松田義人>

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