新幹線長崎ルート 「佐賀と協議の場を」 JR九州専務 並行在来線問題で

九州新幹線長崎ルートの開業効果などについて講演するJR九州の古宮氏=県庁

 九州新幹線長崎ルートの未着工区間(新鳥栖-武雄温泉)をフル規格で整備する場合に浮上する並行在来線のJR九州からの経営分離問題について、同社の古宮洋二取締役専務執行役員は23日、経営分離を前提とせず真摯(しんし)に協議する方針は変わらないとして「いろんな協議の場を持てないか佐賀県にアプローチしたい」と述べた。
 長崎県庁で講演した後、報道陣の質問に答えた。
 新幹線整備は、原則として並行在来線の経営分離について沿線自治体の同意が必要。だが生活の足が不便になるとして自治体や住民が反発するケースもあり、長崎ルートもJR長崎線の経営分離対象区間(肥前山口-諫早)の佐賀県鹿島市などが同線存続を強く求めた経緯がある。
 同ルート未着工区間の整備方式は、国土交通省と佐賀県がフル規格など五つの選択肢で協議中。だが整備に先立つ環境影響評価(アセスメント)に今秋から着手できなければ、与党の財源論議に乗り遅れ2023年度着工に間に合わないという。
 同省がいずれの整備方式にも対応できる環境アセスに今月末ごろまでに同意するよう提案したが、同県は「フル規格狙い」と警戒し拒否する姿勢を崩していない。着工が遅れれば武雄温泉駅での新幹線と在来線の対面乗り換え方式が22年度の暫定開業以降、長期固定化する恐れがある。
 古宮氏は進行中の同省と同県の協議が前提としつつ、「対面乗り換え方式はお客さまに不便を掛けるので長期化は良くない。国と連携しながら、可能な限り早く解決に向けて何かやっていきたい」と述べた。
 講演は長崎新幹線建設推進実行委主催で、県議、市議、首長、経済団体関係者ら約140人が出席。終了後、実行委会長の八江利春県議は「並行在来線の問題は前向きに取り組んでいただけると感じた。大いに期待したい」と述べた。

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