秒速1万キロのジェットを抱えて羽を広げる惑星状星雲「M2-9」

惑星状星雲「M2-9」

重たい星がその一生を終えるときに起こる「超新星爆発」は天文学の中でも華やかな現象の1つですが、太陽などの比較的軽い星が死にゆく姿である「惑星状星雲」も目を引くものがあります。この画像は「M2-9」という名前がつけられた惑星状星雲で、蝶のように羽を広げた姿が印象的です。死にゆく星が「白色矮星」という星に変わっていく中で星の外層が噴き出していき、このような姿を作り上げます。こうした姿は数千年の時を経て徐々に消えていくと言われています。

「M2-9」は1947年に天文学者のルドルフ・ミンコフスキーが発見しました(内容と直接関係ありませんが、アインシュタインの相対性理論でも「ミンコフスキー」と名の付く用語が登場し、こちらは「ヘルマン・ミンコフスキー」によるものでルドルフの叔父にあたるようです)。そのためM2-9は別名「ミンコフスキーのバタフライ(星雲)」とも呼ばれます。ハッブル宇宙望遠鏡によるこの画像では穏やかに死を迎えるような印象を受けるかもしれませんが、中心部から秒速1万キロメートルを超える速度で粒子が噴き出している(ジェットと呼びます)と言われており、私たちの日常とはやはりかけ離れた現象が起きていることがわかります。

実は2年ほど前にもM2-9を紹介しているのですが、このような姿になる物理的なプロセスにはまだ謎が残っており、日本もその建設に貢献した電波望遠鏡群「ALMA」(アルマ)による観測や、偏光観測による磁場の調査など、研究が続けられています。

関連:
M2-9を紹介した2018年の記事です。
赤色巨星と白色矮星が形成した宇宙の羽根「ツインジェット星雲」

以下では惑星状星雲である「NGC 6302」の姿が 2つの観点から画像に示されています。
鉄の分布が描き出した「バタフライ星雲」の赤い縁取り
死にゆく星が描き出す、宇宙にはばたくバタフライ

その他、soraeでは様々な形の惑星状星雲を紹介しています。ぜひこちら(sorae内で検索)からご覧ください。

Image Credit: Hubble Legacy Archive, NASA, ESA – Processing: Judy Schmidt
Source: NASA
文/北越康敬

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