アメリカで本格派ラーメンの宅配! 若き日本人起業家による新ビジネス

アメリカにおける「日本の本格派ラーメン」の人気は年々上昇を続け、ニューヨークやロサンゼルスなどの沿岸大都市では本格派ラーメン店が並ぶ激戦区があるほどだ。地方都市でもラーメン人気が高まる中、若い日本人起業家が考案した「自宅で本格的な日本の味を再現できるラーメンのミール・キット」が話題を呼んでいる。

広大なアメリカだからこそ 「ミール・キット」の宅配

アメリカに日本の「ラーメン」が紹介されて久しいが、ここ数年の急激な市場成長は目覚ましく、今では全米で推定1,600店舗ものラーメン店があるといわれている。

そんなラーメン・ブームともいえるアメリカで、「本格的なラーメンが自宅で楽しめる」という画期的なミール・キット(食材セット)の宅配を行うのが、サンフランシスコを拠点にする「Ramen Hero」だ。

豚骨、味噌、醤油味の定番スープのほか、スパイシー系やアメリカでは欠かせないヴィーガン仕様のスープなど、異なる味のラーメンが10種類ほど揃う。オンライン上で好きな商品を選んでクリックすると、自宅に麺、スープ、具材が同梱された冷凍のラーメン食材セットが届く。料金は1食$15〜$17.5(約1,500円〜1,800円)。日本の感覚では値段が高いと感じるかも知れないが、アメリカでラーメンを食べに行くには車で出かけて有料駐車場に停め、並んで入店して店員にチップ15%〜を支払うのが一般的。これを考慮すると、この値段を高いと思わないラーメン好きは多いだろう。自宅で簡単に本格的なラーメンを作ることができるとわかる映像はこちら。

ラーメンは、次の寿司とピザになる!

この斬新なビジネスを考案したのは、若干30歳の日本人起業家、長谷川浩之さんだ。今回、ビズシーズ編集部の取材を快く受けて頂いた。

日本生まれで日本育ちの長谷川さんが「アメリカで大きな事業を作ってみたい」という思いを抱いて、初めて渡米したのは2014年。渡米前にオンライン英会話を集中して1ヶ月ほど勉強したものの、渡米当時はほとんど英語が話せなかったそうだ。

しかし、ゲームを楽しむ感覚で英語に挑戦しながら、シリコンバレー周辺の投資家や起業家たちと精力的に会ってコネクションを広げ、様々な起業のアイデアを考えた。試行錯誤が続いたアメリカ生活の中で、ふと行列ができるラーメン屋の列を見て、「行列ができる店とそうでない店があるということは、アメリカ人もクオリティーの違いを明確に感じている」ということに気づいたそうだ。「ラーメン市場が伸び続けているのに美味しい店は少ない。そのギャップに大きなチャンスを感じた」と語ってくれた。

アメリカにおける事業は、アメリカで暮らす人々に受け入れられなければ成り立たない。そのためアメリカ人に好かれる味のテストを繰り返して調整し、完成度を高めてから、2018年1月にカリフォルニア州でミールキット宅配ビジネスを開始した。

そして長谷川さんが同事業を全米展開へ成長させるために次に選んだのは、起業支援や出資を行うアクセラレーター、「AngelPad」への応募だった。極めて狭き門だが、「ラーメンが次の寿司やピザになる」と市場の成長性を確信している「AngelPad」と「Ramen Hero」のビジネス・アイデアは見事にマッチし、長谷川さんは同プログラムを卒業した初の日本人起業家となった。

現在の「Ramen Hero」の配送先はカリフォルニア州を中心とする一部の西海岸都市のみだが、近く全米発送を開始する準備を進めているという。すでにサブスクリプション(定期購入)型プランも開始し、将来的には全米のレストラン向けに提供するBtoB事業の構想も描いているそうだ。アメリカのラーメン業界に新風を吹き込む若き日本人起業家のさらなる活躍に期待したい。

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