ファミレス西の雄「ジョイフル」が大量閉店、ネットでは阿鼻叫喚

「コスパが良いファミレス」と聞いたら、どこを思い浮かべるでしょうか? 2019年のgoo調査によれば、1位サイゼリヤ、2位ガスト、そして3位がジョイフルとなっています。「ん、ジョイフル?」と思った方は、きっと東日本にお住まいでしょう。同店は東日本でなじみが薄いかもしれなませんが、西日本では「超」のつく人気ファミレスチェーン、グループ店舗数889店(2019年末時点)と全国3位の規模を誇っています。そのジョイフルが今、大量閉店の憂き目に遭い、ファンはネット上で阿鼻叫喚のツイートを連発。いったい何が起きているのでしょうか。


6月期決算は、営業損益37億円の赤字

2020年6月、新型コロナウイルス感染拡大を背景に、200店舗という大規模な退店計画が発表されました。すでに8月に23店、9月に6店が閉店、10月には19店が予定されており、2021年6月末までに計100店程度を退店させる計画です。

9月25日に発表された2020年6月期決算をみると、最終赤字93億円、店舗の閉鎖に伴い見込まれる損失など約62億円の特別損失を計上しています。今年4月以降、売上が前年の半分以下に落ち込む状態が続いており、売上高は前期比14%減の623億円、営業損益は37億円の赤字でした。21年6月期の見込みも最終損益7.5億円の赤字と非常に厳しい予想です。

ただし、ファミレス業界全体がこれほど悪化しているのかというと、一概にそうとは言い切れません。

コスパランキング1位のサイゼリヤは、緊急事態宣言が解除された5月以降は閉店時間を21時に繰り上げ、2位のガストを経営するすかいらーくグループは、深夜営業を廃止するなどの措置を取っていますが、どちらも現時点で大規模な閉店は行っていません。

2019年も最終損益49億円。コロナ前から業績不振だった

ジョイフルの業績は、新型コロナ以前より悪化していたのです。19年6月期決算をみると、最終損益49億円の赤字となっています。首都圏や東海・関西エリアの約260店の減損処理などに46億円を計上したことや、人件費の高騰が響いた、としています。

もともとジョイフルは自社工場を国内に3拠点有しており、コストを抑えた低価格戦略で業容を拡大してきました。

ところが2008年、リーマン・ショックによる景気低迷で業績は悪化、その後も停滞。2017年にはメニュー改定で全面的に価格改定を行い、平均10%の値上げを実施しました。

現在の日替わりランチは税込み504円。決して高くはないものの、同程度のランチを提供する競合は増えており、価格競争力の低下が課題となっています。そんな折、今回のコロナショックが直撃しました。

新型コロナが飲食業界に与えた影響は言うまでもありませんが、参考までに帝国データバンクが発表した調査を引きましょう。

2020年上半期の飲食店事業者の倒産は398件、年換算では過去最多のペースで発生しています。2020年6月30日時点での新型コロナウイルス関連倒産は300件、飲食店が内訳最多の46件となっています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う影響は、2020年下半期においても引き続き飲食業界に波及していくことでしょう。

すでに他の大手ファミレスチェーンでは、深夜営業の廃止のほか、宅配サービスに対応した店舗を増やすことで、ウィズコロナの時代も必要とされるファミレス像の模索が始まっています。

ジョイフルの今後の経営対策

ジョイフルではひとまず、各店舗の収益改善を図り、営業時間の短縮や退店などで業容を最適化していくものとみられますが、それと並行して「ライン公式アカウント」の開設や、テイクアウト販売やデリバリー販売を強化していく方針も打ち出しています。

TwitterなどのSNSでは、閉店がアナウンスされた地域のジョイフルユーザーから「よく使ってたのになあ」「ガストとかココスより好きだったからめっちゃ悲しい」など、閉店を惜しむ阿鼻叫喚の声が続々と上がっています。

これまで「安さ」を売りにしてきたジョイフルが、今後どのような変化を遂げていくのか、注目が集まります。

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