人材・店舗 効果 どう地域に還元 【連載】十八・親和 合併の行方 新銀行発足編<4>

研修で十八銀行員(中央)を指導する親和銀行員(左2人)=1月、長崎市深堀町1丁目、十八銀行深堀支店(親和銀行提供)

 十八銀行の事務のシステムや手順は来年1月から、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)仕様に変わる。昨年10月以降、FFGの“先輩”である親和銀行の行員たちが十八行員を指導してきた。
 研修チーム25人のリーダー格は、親和の事務IT部主任調査役、寺田知美(54)。親和がFFGに入って間もない12年前、福岡銀行で3カ月学び、同僚に伝える役を担った。だから十八行員の不安も必死さもよく分かる。積年の競合相手だった両行員の隔たりが消えていくのを感じる。「お客さまの視線や声が一番届くのが窓口。『合併して良くなったね』と言われたいという思いは一緒」
 全て順調だったわけではない。新型コロナウイルス感染拡大で集合研修は2月末に中断。不測の事態に備え計画を1カ月前倒しし、個別やリモート(遠隔)で乗り切った。「限られた時間でよく頑張ってくれた」と両行員をねぎらう。
 新銀行はシステムや店舗の統合に伴い約350人の余剰を見込んでいる。付加価値の高いソリューション営業やコンサルティング業務に再配置していく。
 コロナ禍で一時的に雇用情勢が悪化したものの本来、地場企業の人手は不足している。そこを銀行に求める声は強い。十八頭取の森拓二郎は「地域に貢献する新銀行の理念に沿う。出向や転籍で活躍していただく」と応じる構えを見せる。
 合併後は部長や支店長のポストが実質的に減るという内部事情もある。組織のスリム化を進める一方で、新銀行の来春採用規模は約100人。両行合算のピーク時と比べ半減する。近年エントリー数が減っており、昨年は中途退職も増えた。収益環境の悪化を背景に「銀行離れ」をうかがわせる。
 折からの人手不足にコロナ対応も迫られた企業から、ニーズが増えたのはデジタル化だ。FFGは十八と経営統合した昨年4月から、本県だけでサポートを実施。両行員18人の専門チームを中心に3月末時点で40社のサポートを完了、186社で継続している。「人材が足りない中で生産性を上げるにはIT化が有効」。親和頭取の吉澤俊介も取引先と会う際、自ら水を向けている。
 来年5月以降、順次使わなくなる店舗の処遇にも市民の関心が集まる。その多くが各地域の一等地にあるからだ。
 五島市中心部商店街にある十八福江支店は約800メートル離れた築7年の親和福江支店内に移る。「銀行に行くついでに買い物も、というお客さんはかなり多い」。同商店街で文房具店を営む小林光二(50)は、このままでは郊外店への消費流出に拍車が掛かるとみる。閉鎖店舗は古いが、耐震性に問題はない。「せめてATM(現金自動預払機)は残して。まちのためになる活用を」と切望し、統合・合併の効果が地域にどう還元されるか注視している。=敬称略

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