BTCC第6戦:ホンダ、BMW、フォードが勝利するもインフィニティが選手権首位を堅持

 1958年創設で60年以上の歴史を誇るBTCCイギリス・ツーリングカー選手権の2020年第6戦が9月26~27日にシルバーストンで開催され、チーム・ダイナミクスのダン・カミッシュ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/Halfords Yuasa Racing)、王者コリン・ターキントン(BMW330i Mスポーツ/チームBMW)、そして
モーターベース・パフォーマンスのオリー・ジャクソン(フォード・フォーカスST)がそれぞれ勝利。ヒート間に選手権首位が入れ替わる激戦のなか、今季Laser Tools Racing移籍の2017年王者アシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC/Laser Tools Racing)が、最終ヒートの表彰台でポイントリードを堅持している。

 シルバーストンの“ショート版”たるナショナル・レイアウトで開催された第6戦でも、オープニングの公式練習から元ファクトリーマシンのインフィニティQ50BTCCをドライブするポイントリーダーが、シーズンの好調さを維持して首位タイムを記録。そのままサットンが優位に週末を進めていくかと思われたが、そこに立ちはだかったのがFFツーリングカーの雄、ホンダ・シビック・タイプRだった。

 2回目の公式練習でカミッシュ、マット・ニールのファクトリー・ホンダ勢がワン・ツーを記録すると、予選にもその勢いを持ち込んだカミッシュが前戦スラクストンに続く2戦連続のポールポジションを獲得。

 フロントロウにはそのスラクストンで連勝を飾ったスピードワークス・モータースポーツのトム・イングラム(トヨタ・カローラBTCC/TOYOTA GAZOO Racing UK with Ginsters)が並び、セカンドロウ3番手にも新型モデルで好調のロリー・ブッチャー(フォード・フォーカスST/モーターベース・パフォーマンス)が続くなど、FFハッチバック勢が躍進する結果に。

 FRサルーンでは4番手に入ったシリーズ連覇中のターキントンが最上位で、サットンはニールの背後7番手に留まるなど、レース1のスタートに向けて興味深いグリッド順となった。

 ゼロスタートでのトラクション優位性を活かし、そのFR勢がどこまでポジションアップするかに注目が集まったレース1スタートだが、その予想を覆すかのようにホンダvsトヨタのFFツーリングカー2台がドッグファイトを展開。

 ポールシッターのカミッシュに対しウェリントン・ストレートからサイド・バイ・サイドに持ち込んだ2番手イングラムだったが、続くブルックランズでインを押さえられカローラの首位浮上はならず。

 その後もセーフティカー(SC)出動を挟んで仕切り直しになっても序列は変わることなく、3番手ブッチャーも連覇中の王者がドライブするファクトリーBMWを抑え込む健闘を見せる。

 25周のレースも残すは5周となったところで、そのターキントンの背後にはサットンのインフィニティが迫り、王者経験者同士によるFR対決が勃発。この展開に助けられた3番手ブッチャーはポジションを守ることに成功し、ホンダのカミッシュが第2戦以来となる今季3勝目をマークし、2位イングラム、3位ブッチャーと、FF勢が最初のポディウムを占める初戦結果となった。

2戦連続のポールポジションを獲得したチーム・ダイナミクスのダン・カミッシュ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR/Halfords Yuasa Racing)
レース1はスタートでFR勢を抑え込んだ先頭のFF勢3台がドッグファイトを展開する
2007年以来の女性ドライバーとなったジェイド・エドワーズは3戦ともバトルを満喫し完走。「来季、フル参戦への意欲が高まった」
レース2は後続の混乱にも乗じて、シリーズ連覇中の王者コリン・ターキントン(BMW330i Mスポーツ/チームBMW)が勝利

■最終のレース3は大クラッシュにより赤旗中断に

 続くレース2もそのままFF勢が序盤を支配したものの、ここでディフェンディングチャンピオンが巧者ぶりを発揮し、BMWの底力を見せる。

 レース1の借りを返すとばかりに、まずは2番手イングラムがシビックを攻略し、オープニングのブルックランズで首位に浮上すると、その背後では5番手サットンもコプスでBMWを仕留めて4番手へ。しかしこれが運命の分かれ道となり、インフィニティは続くべケッツで3番手のブッチャーに接触。このアクシデントでフォード・フォーカスはたまらずスピンを喫し、サットンも10番手にまでポジションを落とす厳しい展開となる。

 これで労せず表彰台圏内へと上がったターキントンは、15周目にカミッシュをかわして2番手へ。そのままイングラムに迫ろうかとしたそのとき、トヨタ・カローラBTCCの左フロントタイヤに異変が生じ、パンクのためピットへと急行。さらにポジション挽回を期した選手権首位サットンも同様のトラブルでピットロードへ向かうと、コース上で直接のライバルが去ったターキントンが自身150回目のポディウムを勝利で飾り、ランキング首位を奪う結果となった。

 そして最終レース3は、トップ10リバースの抽選でポールを得たフォードのジャクソンが、2番手トム・オリファント(BMW330i Mスポーツ/チームBMW)、3番手ジェイク・ヒル(ホンダ・シビック・タイプR/MB Motorsport accelerated by Blue Square)らを従え豪快なドライブで首位を守ると、その直後にドラマが発生する。

 トヨタのイングラムが中団のクラッシュに巻き込まれたのを皮切りに車列に不穏な空気が漂うと、14番手発進でチャージを掛けていたフォードのブッチャーが、大ベテランのニールと絡み大クラッシュ。

 コプスでアウトサイドから仕掛けたブッチャーのフォーカスは、続くマゴッツでシビックに接触し高速でグラスエリアを横切ると、コース内側のバリアにヒットし宙を舞い、べケッツ出口まで回転しながら飛ばされストップ。これでレースは6周目に赤旗中断となった。

 車両回収とバリア修復後、残り12周スプリントで再開されたレースは、首位ジャクソンと2番手オリファントの争いが続くも、その背後から猛烈な勢いで迫ったのがインフィニティのサットン。

 リスタートで車間が詰まった好機を捉えオーバーテイクショーを演じたサットンは、猛然とチャージを続けファイナルラップを目前に首位2台の背後に到達。コプスではBMWとのサイド・バイ・サイドを演じ2番手へと浮上する。

 しかしこの2台のFRバトルに助けられた首位ジャクソンはそのままチェッカーをくぐり、うれしいBTCC初勝利をその手に。2位サットン、3位オリファントの順でフィニッシュラインをくぐるも、レース後には幾度もポジションを入れ替えたこのFRバトルに関し「サットンの側に不当なアドバンテージが生じる動きがあった」との裁定が下り、ふたりの立ち位置が逆転。それでもサットンは値千金の挽回劇でわずか4点差で選手権首位を奪還するリザルトを手にした。

 全9戦に短縮された2020年BTCCシリーズもいよいよ終盤戦を迎え、続く第8戦は10月10~11日の週末にクロフトで争われる。

豪快なインカット走法で首位を死守したモーターベース・パフォーマンスのオリー・ジャクソン(フォード・フォーカスST)がシリーズ初勝利を決めた
レース3で大クラッシュを喫したロリー・ブッチャー(フォード・フォーカスST/モーターベース・パフォーマンス)は、自力でマシンから降り周囲を安堵させる
「まだ信じられない、本当に特別な気分だ」と、初優勝の喜びを語ったオリー・ジャクソン。新型フォーカスSTの戦闘力も実証された
FR使いの意地を見せ、選手権首位を堅持した2017年王者アシュリー・サットン(インフィニティQ50BTCC/Laser Tools Racing)

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