読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、37歳、会社員の男性。子どもに恵まれ、マイホームも購入した相談者。お小遣いのために妻に内緒で株を始めたいといいますが…。FPの秋山芳生氏がお答えします。
5万円からで小遣い稼ぎと経済の勉強に株を始めたいが、妻からは反対を受けているので、こっそり始められる物があれば知りたい。なお、つみたてNISA はやってます。
【相談者プロフィール】
男性、37歳、会社員、既婚
同居家族について:
・妻(36歳)現在2人目妊娠中(10月末予定)、現在無職で復職予定なし
・子ども(1歳)
住居の形態:持ち家(戸建て)
毎月の世帯の手取り金額:45万円
年間の世帯の手取りボーナス額:85万円
毎月の世帯の支出の目安:32万円
【毎月の支出の内訳】
住居費:8万2,000円
食費:10万円
水道光熱費:2万円
保険料:2万9,000円
通信費:3万円
車両費:1万円
お小遣い:3万円
その他:1万円
【資産状況】
毎月の貯蓄額:5万円
ボーナスからの年間貯蓄額:30万円
現在の貯蓄総額:180万円
現在の投資総額:1万円
現在の負債総額:3,000万円
秋山: ご相談いただきありがとうございます。ファイナンシャルプランナー兼FP YouTuberの秋山芳生です。経済の勉強のために株を始めたいとのことですが、ずばり本音は「奥さんにバレずにもっとお小遣いがほしい」ということで良いでしょうか? そういった心の叫びは、非常に響いてきます。そうですよね、お小遣いほしいですよね。今回は、そういった心の叫びをもった全国の働くパパの為にも、いつにも増して真剣に考えていきたいと思います。
高収入の相談者だけれども…
現在の収入は、毎月手取りで45万円にボーナスで85万円ということは額面年収にすると850万円くらいですので、ご収入は高いほうだと思います。月の貯蓄は5万円でボーナスでは30万円ほどが残っている状態なので、年間の収支は90万円のプラスということですね。
住宅は戸建ての持ち家とのことで、3,000万円ほどの住宅ローンが残っているのだと思います。「つみたてNISAをやっている」とのことですが、投資総額は1万円ですので「投資はまだまだ始めたて」ということだと思います。
ご相談者様の状況によってアドバイスも変わってくるので、家計と資産状況とご質問の内容からプロファイリングをしていきたいと思います。
相談者の家計をプロファイリングしてみる
・2年ほど前に、「子どもも生まれるし、家を買って暮らそう」と、一大決心をする。マンションか一軒家かを迷うが、「自動車もあるし駐車場代を考えると一軒家がいい」と話して戸建てを購入。変動金利でざっくり0.5%前後の変動金利で住宅ローンを35年返済で借りる。それまで貯めたお金も、住宅の頭金や引っ越し、家具などの購入で一旦底をつく。8万2,000円の返済金額を毎月欠かさず2年ほど返済しており、残りは33年間残っている。35歳の時に借り始めたので、70歳まで返済が続くことになるけれど、「銀行も貸してくれるってことは返せると思っているからだし、まぁその時はその時でなんとかなるだろ」と、考えるのをやめる。(秋山:現在の貯蓄が180万円で、年間貯蓄額が90万円から約2年で貯めたと考える。資産がほぼゼロからはじめたことになるので、そのタイミングで家を購入し頭金に充当していると推察。またお子さんが生まれたタイミングも考慮しています)
・住宅購入と子どもの誕生で、「保険に入らなきゃ」と思い、ファイナンシャルプランナーに相談。ただし、有料のファイナンシャルプランナーではなく無料相談で、実は保険の営業マン。ライフプランを組んでもらうとともに、住宅ローンの返済計画を無料でつくってもらい「無料でここまでしてくれた。この人はいい人だ」と、しっかり保険の営業マンを信頼する。その中で、以下のような保険の営業を受ける。
「今は、お金を銀行にあずけても超低金利の0.001%。100万円預けても10円しか増えない
時代です。ドル建ての(または豪ドル建て)変額終身保険であれば、予定利率は3%です。もしものことがあったら死亡保険金も支払われるので、子どもの学資保険がわりにもなるしいかがですか?しかも、保険料控除が使えるので年末調整で税金が少し戻ってきますよ」
こう言われ、妻からも「お金増やさないといけないけど、投資は怖いし、保険なら安心なんじゃない? 学資保険は必要だし入ったらいいと思う」と、疑うことなく生命保険とともに変額終身保険に加入。(秋山:2万9,000円の保険料より推察)
・格安携帯には興味があるが、妻も含め、3大キャリア(docomo,au,softbank)の携帯電話を長年使っており、長期割や家族割にも加入しているので変えたくない。自宅に引いた光回線も携帯電話と同系列の会社にしているので、さらに変えるのが面倒くさくなっている。(秋山:3万円の通信費より推察)
・妻は2人目を妊娠しており1歳の子育てもしながらなので、自炊するのが難しい。自分は仕事に行く日は基本すべて外食。(秋山:3人で月に10万円の食費より推察)
・仕事は結構頑張っているし、給料も一般的な人と比べて稼いでいる方だと思うけれど、生活はあまり楽ではない。自分より収入低い人も多いけど、もっと贅沢している人もいるのに、なんで我が家はお金に余裕が無いんだろうと思いはじめる。
「あー、たまには昔みたいにパーッと男友達とロックフェスにでも行って、温泉泊まってきたいなー。あー、お小遣いほしい。投資で増えないかなー。つみたてNISAやってみたけど、1万円だとたいして増えない。株で儲かったっていう人もいるし、ちょっとやってみたいな。軽くマネープラスで相談してみようか」
さて、どうでしょうか。多少の私の妄想と装飾はありますが、それほど外れていないんじゃないでしょうか?
結論。個別株は絶対にバレる
もし、上記の状態が大きくはずれていないのなら、おそらく個別株に手をだすと大きく失敗するのではないかと思います。そして、奥さんにも間違いなくバレると思います。
まず株でお小遣いがほしいという視点は、「短期投資」です。儲かった分を支出に使うというスタンスでいるので、まずうまく行かないでしょう。株で短期で儲けるということを本気で考えるのであれば、リスクを許容できるだけの環境づくりが必要です。株価が上がっても下がっても動じないメンタルの形成と、また、ファンダメンタル分析やテクニカルチャート分析をしっかりと学んでから頑張ってみてください。ただし仕事をしながら片手間で行うのは難しいと思いますので、私はおすすめいたしません。
むしろ資産形成を真剣に考えないと危険
アドバイスとしては、2人目のお子さんが生まれるということからも、もっとライフプランを真剣に考えて資産形成をしっかりと考えていかないと、危険な状況ではないかと思います。
二人分の教育費も必要になりますし、もし70歳まで住宅ローンが残っているのであれば、危険ともいえます。築年数が古くなれば、いたるところで修繕費などもかかってきます。老後の生活費も考えると、かなり厳しい状態になるのではないでしょうか。
投資をするならば、ご年収が高いので、まずは確定拠出年金(個人型であればiDeCo)がおすすめです。仮に毎月2万3,000円ほどを投資に回すことができれば、年間27万6,000円の控除を受けられます。ご年収が高いので、おそらく所得税と住民税と合わせて30%以上は戻ってくると考えると、投資効率は一番よいのではないでしょうか。
家計の見直しは、通信費・保険・食費・使途不明金
奥さんに投資をしているということがバレたくないということですが、iDeCoなどの確定拠出年金は60歳まで引き出すことができません。ですので、できれば普段の生活のキャシュフローを改善して、今までよりも貯蓄をしながら投資ができるようになるほうがよいのではないかと思います。
もし、先程のプロファイリングが間違っていなければ、見直しができるポイントは、通信費と保険と食費ということになるでしょう。
まずは通信費です。仮に家のWifiが6,000円としても、ご夫婦の携帯電話代を格安携帯に切り替えられれば3,000円×2人分で6,000円以下にでき、合わせても1万2,000円程度になるでしょう。NHKは衛星放送を見なければ月に1,225円ですので、1万3000円程度に抑えることは可能でしょう。これだけで月に1万7,000円ほどが浮いてきます。
保険料2万9,000円は払いすぎだと思います。万が一の時に、奥様やお子さんの生活費を担保するための収入保障保険は良いと思いますが、それ以外はあまり必要ないでしょう。特に変額保険に入っているのであれば、長期間資産がロックされてお金の自由度を失いますし、保険料控除も確定拠出年金の控除に比べると、天と地ほどの差があります。保険は必要最低限に抑えるほうが懸命と思います。
食費も10万円が毎月かかっているとのことですが、相談者様も自炊に協力するなどして家族で力を合わせて改善をしてみてはいかがでしょうか。
また、収支を細かくみると、45万円の手取りに対して、支出が32万円とすると13万円ほど貯蓄ができるはずですが、現在の貯蓄額が5万円とのことなので、8万円ほど使途不明金があると思います。こちらは、家計簿をつけるなどして、何に消えているのかを判明して改善いただければと思います。
妻公認のお小遣いをUPを目指しては?
上記がうまくできれば、月の収支が7万円から10万円は改善してくるのではないでしょうか。年間で84万円から120万円が浮いてくれば、貯蓄や資産形成に充てながらも、もしかすると「妻公認」のお小遣いアップも可能ではないかと思います。
ポイントとしてはまず固定費を減らす努力をすると、後々節約の無理がなく、さもしくならないので成功しやすいと思います。食費は習慣づくりが重要になってくるので、奥様と協力しながら一緒に改善できるポイントを探していけると良いでしょう。
固定費の他にも変動費も支出の穴が大きいと、稼いでも稼いでも貯まりづらい状況になりますので、夫婦で支出の改善をするとともに、資産形成をしっかりすることを考えいただければ幸いです。
本来ならFPとしてお小遣いを増やしたいという相談の場合は、収入を増やすために副業をすすめることが多いのですが、身重の奥様と1歳の子どものことを考えると、副業や労働時間を伸ばすのは「今ではない」かもしれません。そして、何事も内緒ではなく、協力体制をつくることが強い家計を作る上で重要だと思います。ぜひ、夫婦で力を合わせて安心の家計づくりと資産形成とお小遣いのUPを勝ち取っていただき、素敵な未来を築いていただければ嬉しく思います。
以上、ご参考になれば幸いです。