揺れる女ごころを鮮烈に描く、川端康成の傑作小説『女であること』

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今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『女であること』

川端康成が「女であること」をテーマに、さまざまな生き方をする三人の女性を中心に描いた名作です。この秋の読書に素敵な日本文学をいかがでしょう。

女であること
著者:川端康成
出版社:新潮社

市子は結婚して十年あまり。弁護士の夫、佐山とは夫婦仲もよく、穏やかな日々を送っていました。佐山家には夫が担当する死刑囚の娘で孤独な美少女・妙子が引き取られ一緒に暮らしています。そんなある日、夫婦のもとに市子の友だちの娘がやってきて居候することに。家出娘・さかえの出現により、佐山家の平穏が次第に乱されていきます。

美しく世話好きな市子を慕うふたりの若い娘たち。世間に気がねしながら生きる妙子とわがままで奔放なさかえは、それぞれ極端な方向に心情も行動もエスカレート。母親代わりの市子をはじめ、夫の佐山や若い恋人たちもいつしか巻き込まれていくのですが……。満ち足りていたはずの市子の本心、自分でも気づいていなかった女ごころがむきだしになる。揺れ動く女ごころは予測不可能で、ミステリーを読むようにもどかしくページをめくりました。

不安や葛藤を内に抱えながらも、精一杯自分に正直であろうとする。そんな女性たちの生き方や夫婦のあり方が、時代の風景とともに鮮やかに、ビビッドに描かれています。

佐山夫妻のちょっとしゃれた「朝時間」も出てきます。「春のはじめの女の朝寝は、とろけるように甘くて、幸福が来そうに思える」「美しい妻の手が果物をむくのを、ゆっくりコオヒを味わいながら、見るともなしにながめる。それから、オウト・ミイルになる」——。川端康成の傑作、女と愛の物語をどうぞ。

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