TechCrunch Disrupt SF 2020① 合法大麻栽培管理アプリが優勝

 2020年9月14~18日にサンフランシスコにて、シリコンバレー最大のスタートアップ・カンファレンス TechCrunch Disrupt SF 2020が開催された。

 今年はオンラインの開催となったが、例年通りの盛り上がりがみられたようだ。昨年の様子も含めたDisrupt SFの概要については、過去の記事を参照されたい。

数々のテック企業も優勝したピッチコンテスト・Startup Battlefield

 先の記事では、Disrupt SFにこれまで多くのテック企業の経営者や著名なエンジニアが登壇し、その発言に対して世界中の参加者が注目していることを紹介した。その一方で、次なるGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazonの頭文字をとった省略語)となるようなポテンシャルをもつ、創業間もないスタートアップに焦点をあて、それぞれのスタートアップによるプレゼンテーションピッチが繰り広げられるのが、Startup Battlefieldだ。

 Disrupt SFの開催3ヶ月前から予選がおこなわれ、合格率3~6%という狭き門をくぐりぬけた約20のスタートアップのみが、Disrupt SFで実施される本選に参加することができる。彼らにとってこのBattlefieldに参加する意義は以下である。

①優勝賞金$100,000

 この賞金額の多寡はともかく、シリコンバレー最大のカンファレンスで優勝するという名誉はスタートアップにとってとても大きなブランディングとなるだろう。ちなみに、アメリカの大ヒットドラマ”Silicon Valley Season 1”では、主人公率いるチームがBattlefieldに出場し、優勝する姿がユーモアを交えて描かれている。

②自身の事業を世界に発信

 スタートアップのメッカ・シリコンバレーから発信される最新トレンドを世界中のスタートアップ関係者は注視している。そのため、名誉あるBattlefieldで優勝するチームは必然的に注目を集め、協業や資金調達に繋がるケースも多い。

③過去の参加チーム優勝チームがとても豪華

 Battlefieldの名誉を確固たるものにしているのが、これまでに輩出してきたチームが豪華であるからにほかならない。2007年の開始以降857チームを輩出し$8.9Bの資金調達を獲得していることに加え、その中にはDropboxやFitbit・Trelloなど日本でも馴染みのある企業が含まれている。

 では、2020年にBattlefieldに参加したチームから、シリコンバレーの最新トレンドを紹介する。今回は見事に優勝したCanixを以下紹介したい。

合法大麻栽培の管理を容易にするCanix

 優勝したCanixはアメリカ各州で合法化が進んでいる大麻の栽培における管理プロセスを容易にするプラットフォームを提供しているスタートアップである。日本では直近でも大麻使用で芸能人が逮捕されるなど、法律で使用・所持が禁じられているのが現状だが、アメリカでは医療用として33州、嗜好品としても11州で使用が許可されている。大麻合法化の流れはアメリカを含めた各国で起きており、直近で大麻ビジネスが大きな経済的価値を生むことが世界中で期待されている。

 一方で、アメリカ国内でその栽培を管理するプロセスには大きな課題があるようだ。アメリカの大麻栽培においては、種から出荷までを全て管理することが求められているが、既存のプラットフォームでは紙への記帳が必要になるなど大きな無駄と欠陥があったようだ。Canixでは、非接触で複数のタグをスキャンできるRFIDと、Bluetoothを用いて大きな効率化を達成している。Canixの詳細や創業にいたるエピソードはこちらのTechCrunchの記事から確認することができる。

 各国特有の社会問題や課題を解決する、その国独自のスタートアップが誕生するケースはさまざまなスタートアップ・エコシステムでみられるが、今回のCanixはその典型的な例となった。アメリカの政治的・社会的な動きに伴ってどのようなスタートアップが生まれるのか、予測してみることも一興ではないだろうか。

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