TCRヨーロッパ第3戦:プジョー308TCRのブリシュが先勝。シビックのオリオラもシリーズ初勝利

 2020年のTCRヨーロッパ・シリーズ第3戦が9月26~27日にイタリア・モンツァで開催され、ツーリングカー超高速バトルのレース1は小排気量マシンのジュリアン・ブリシュ(プジョー308 TCR/JSBコンペティション)が先勝。続くレース2は、世界戦経験者のペペ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Brutal Fish Racing Team)が制し、シリーズ初勝利を飾っている。

 地元イタリアで独自の車両開発を続けてきたTecnodom Sport(テクノドン・スポーツ)が、いよいよフィアット・ティーポTCRを投入することで話題を呼んだモンツァ戦は、その新型モデルをドライブするルカ・ランゴーニに加え、車両開発ドライバーを務めたケビン・ジャコンも急遽アウディRS3 LMSでワイルドカード参戦を表明するなど、レース前から盛り上がりを見せた。

 その週末でライバルに先行するスピードを披露したのは、モロッコの英雄メディ・ベナーニ(アウディRS3 LMS/Comtoyou Racing)で、TCR規定の2020年BoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)も絡めて好調のアウディは、ウエットだった最初の公式練習でトップタイムをマーク。

 その勢いを維持したベナーニは、続くドライの予選でも選手権リーダーのダン・ロイド(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Brutal Fish Racing Team)を0.035秒上回り、シリーズ初ポールポジションを獲得した。

 さらにセカンドロウには意外な顔ぶれが並び、ジミー・クレーレ(プジョー308 TCR/Team Clairet Sport)にブリシュと2台のプジョー軍団が占拠。こちらもBoPの影響が顕著ながら、ライバルよりも小さな1600ccのエンジンでモンツァの超高速トラックを“トウ作戦”で引き合い、オリオラのシビックを5番手に抑え込む見事なアタックを決めた。

 そのまま土曜午後に開催されたレース1はオープニングでいきなりの波乱が発生し、ポールシッターのベナーニは背後にいたジミー・クレーレと絡み、2台揃って戦列を離れる事態に。

 これで労せず首位を得たロイドも、続く2周目にプジョーのブリシュにかわされると、ここからプジョー308がFK8型ホンダ・シビック・タイプRを引き離す速さを見せる。

 その背後3番手を争ったオリオラとテディ・クレーレ(プジョー308 TCR/Team Clairet Sport)が接触でポジションを失うと、マット・オモラとダニエル・ナジー(ヒュンダイi30 N TCR/BRCレーシングチーム)に、マイク・ハルダー(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Profi Car Team Halder)、フェリス・ジェルミーニ(ヒュンダイi30 N TCR/PMAモータスポーツ)、ジョン・フィリピ(ヒュンダイi30 N TCR/Targetコンペティション)、そして前戦勝者ニコラス・ベアト(アウディRS3 LMS/Comtoyou Racing)らが入り乱れる集団バトルに発展する。

2020年も活況を呈するTCRヨーロッパ・シリーズ。予選はモロッコの英雄メディ・ベナーニ(アウディRS3 LMS/Comtoyou Racing)が制する
予選ではプジョー勢で協力して“トウ作戦”で引き合い、レース1では単騎ながらホンダを振り切ってジュリアン・ブリシュ(プジョー308 TCR/JSBコンペティション)が完勝した
レース1の2位表彰台で、ダン・ロイド(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Brutal Fish Racing Team)が32点差で選手権首位を守っている

■レース2ではブリシュが追い上げを見せるも、オリオラが薄氷の勝利

 すると6周目にはそのベアトとテディ・クレーレが接触し、クレーレ兄弟はともにアクシデントで好機を逃し、さらに2周後にはハルダーとオモラが2度のコンタクトの末にクラッシュ。

 そんな大荒れの展開にも助けられ、ブリシュが3.225秒までマージンを築いて10周のトップチェッカー。2位ロイドに続き、危うい場面を切り抜けたベアトが3位表彰台を確保。さらに4位にはフィリピを仕留めた地元のジェルミーニが続くリザルトとなった。

「セカンドロウからのスタートはあまりうまくいかなかったんだけど、ベナーニとクレーレのアクシデントで本当に良い展開になった。ロイドの背後2番手の状況からクルマは最高のパフォーマンスを発揮してくれて、簡単にパスすることができた。序盤2戦の不運を思うと、自信を取り戻すために必要な勝利だった。ここからが僕らのスタートだ」と、喜びを語ったブリシュ。

 明けた日曜のレース2は、リバースポールシッターのフィリピをかわしたハルダーが先頭で1コーナーに飛び込むも、このシケインを4番手でクリアしたオリオラがオープニングラップで先行する3台をまとめてパスし、トップでコントロールラインを通過していく。

 その背後では再びマルチウェイ・バトルが勃発し、ハルダーはスプリッターを破損しリタイア、ロイドもベナーニとのバトルでパンクを喫しマシンを止めると、前日の予選最速男はオモラにもヒットし、ヒュンダイはたまらずロッジアを直進することに。

 そんな混乱に乗じて後方から1台、また1台とかわしてポジションを上げたのがブリシュで、プジョーの勢いは衰えることを知らず、首位オリオラのマージンさえ削っていく。

 しかし10周スプリントのレース距離では、わずかに0.152秒届かず。オリオラが薄氷のシリーズ初優勝を決め、ブリシュが2戦連続ポディウムの2位、そして3位にはロッジアの攻防から帰還したオモラが入った。

「個人としてもチームのためにもうれしいし、JASモータースポーツにとってのホームレースで勝利を飾れるなんて最高だ。突然ボンネットが開く不運から始まったシーズンだけど、全員が懸命に働き、この結果に値する仕事をした。自分の能力を疑う瞬間もあったけれど、ドライビングの仕方について理解を失っていないことを、自分自身とほかのすべての人に証明できたと思う」とオリオラ。

 これで折り返しの3戦を終えたTCRヨーロッパ・シリーズは、レース1で2位のロイドが選手権首位をキープ。続く第4戦は10月10~11日に勝者オリオラの故郷、スペイン・バルセロナでの勝負が待ち受ける。

レース2のスタートでホールショットを奪ったマイク・ハルダー(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Profi Car Team Halder)
しかし、パラボリカ進入までにシビック対決を制したペペ・オリオラ(FK8型ホンダ・シビック・タイプR TCR/Brutal Fish Racing Team)が主導権を握る
ともに不運を乗り越えての勝利に健闘を称え合うペペ・オリオラ(左)とジュリアン・ブリシュ

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