ライブ盤発売記念イベントでクイーンのブライアンとロジャー、アダム・ランバートが語ったこと

新型コロナウイルスの影響でツアーは延期になってしまったが、2020年10月2日に発売されたクイーン+アダム・ランバート初のライヴ・アルバム『Live Around the World』で、ファンは彼らの最高のライヴ・パフォーマンスを堪能することができるようになった。

同ライヴ・アルバムのリリースにあわせて、クイーンのブライアン・メイ、ロジャー・テイラー、そしてアダム・ランバートの3人が生配信Q&Aイベントに登場し、世界中のファンやジャーナリストからの質問に答えた。

BBCラジオのプレゼンターであるマット・エバリットが司会を務めたこのイベントの中で、3人は新たなライヴ・アルバムやお気に入りのパフォーマンス、バンドの不朽のレガシーについて語り合った。

『Live Around the World』は、アダム・ランバートにとって約9年半ぶり、クイーンにとっては1986年におこなったMagic Tour以来のライヴ作品となる。アダム・ランバートがクイーンとツアーを始めてから約9年が経ち、3人は共に巡った世界ツアーからの様々な思い出を振り返った。

彼らが頻繁に受ける最も質問の一つに「お気に入りのクイーン楽曲は何?」というものあるが、メンバー全員が選ぶのは難しいと答える中、ブライアン・メイはフレディ・マーキュリーが作曲した「Miracle」を個人的なお気に入りとして挙げ、こう答えている。

「(「Miracle」は)いつだって不思議でユニークな魔法のような魅力を持っているんです。特にフレディにとって楽観的でいることが難しかった時期に書いた曲ではありましたが、彼は前向きでした。ただただとても美しい曲なんです」

また今回、CD+DVD、CD+Blu-rayとして収録されている様々なパフォーマンス映像からもお分かりいただけるように、彼らはその土地その土地で、曲へ対する反応が異なることも指摘している。ブライアン・メイは次のように語った。

「私たちの曲は世界のさまざまな場所で異なる意味を持っています。“I Was Born to Love You”は、日本にとって大きな意味を持った楽曲ですが、他の国ではそれほどではありません。一方で、“We Will Rock You”や“We Are The Champions”のような曲のパフォーマンスでは、観客との極めて強いつながりや喜びを感じられる瞬間があるのが素晴らしいんです」

アダム・ランバートもそれに共感しこう語る。

「歌は、その時々の世界で何が起こっているかによって、異なる意味合いを持つようになるんです。“Show Must Go On”のような曲は、まさに今起こっている全てのことと相まって、心に強く訴えかける。この曲は、フレディが病魔に苦しみ、末期に差し掛かっていた時にバンドと共にレコーディングした曲でした。だからこそ、そこにはいくつかの類似点があり、“人生には辛いこともあるかもしれないけれど、挫けずに立ち上がって闘い続けるんだ”と歌う、本当に良いメッセージを持った曲なんです」

アダム・ランバートは2009年のオーディション番組『アメリカン・アイドル』の中でゲスト出演したクイーンと初めて共演し、2012年にクイーン+アダム・ランバートのフロントマンとして初めてフルコンサートの舞台に立ったが、彼自身はフレディの後釜として見られたことはないと自覚しているという。それに続けてブライアンはこう語った。

「誰にも彼(フレディ)を真似することはできません。アダムは彼というひとりの人間であり、私たちが共につくり上げてきた魔法のようなものを届けることができるんです。アダムは完璧なエンターテイナーで、私たちを笑わせてくれるし、泣かせてくれる。私たちは彼がいてくれることで、大きな恩恵を受けています。彼は、素晴らしい斬新なアイデアと熱意を持ち込んでくれる私たちの弟なんです」

アダム・ランバートもまた、ブライアン・メイの仲間意識に共感しこう語る。

「ブライアンとロジャーからとても多くのことを学びました。彼らと一緒に旅をして、世界や人生、愛について語り合っているだけで、僕はより良い人間に、より良いミュージシャンになれるような気がするんです」

Xavier Vila – Copyright Miracle Productions LLP

また彼らは、シドニー、東京、ソウル、ニューオーリンズといった世界のお気に入りの都市についても言及し、ツアーができない今、最も恋しく感じることについても明かしている。

「観客との一体感や喜びを分かち合えた時の高揚感です。それが私たちのショウの全てでしょう」とロジャー・テイラーが語りとアダム・ランバートがこう付け加えた。「それはクイーンとクイーンが世に送り出してきた音楽を称えるためのものなんです」

「(クイーンの音楽は)ポップ・カルチャーそのものに織り込まれています。“クイーンというバンドを知る前からクイーンの曲は知っていた”みたいにね。私たちはある意味で確立された存在になったんです。多くの人々が“We Will Rock You”は昔からある曲で、誰かが書いた曲としては認識していません」とブライアン・メイは笑った。

今回のライヴ・アルバム制作中にバンドが直面した最大の課題の一つは、ライヴ体験を最大限に捉えたパフォーマンスを選ぶことだった。

ロジャー・テイラーは、自身のお気に入りのライヴ盤であるザ・フーの『Live at Leeds』やジェームス・ブラウンの『Live at the Apollo』を引用する一方で、ブライアン・メイは、バンドと観客との間の生まれるケミストリーを捉えることが重要だと語った。

またバンドは、他の多くのミュージシャン同様に、ツアーできないことについて大きな喪失感を抱いているが、一方でブライアン・メイが手術から回復するための休息期間になったという良い面もあった。

「体調を回復させるために1年の猶予を与えられたので、今はそれに専念しています。健康を取り戻すことは必要不可欠です。私たちのショウをこなすためには、健康でなければなりませんから。(世の中の)状況が変わるたびに新しい機会が与えられ、今はインターネット上で多くのことが起こっています。私たちがインスタグラムを通してやってきたことのお陰でファンとの距離も縮まったと感じています」

彼らがいまだステージでは披露したことがないクイーンの楽曲についても言及され、ロジャー・テイラーはアダム・ランバートが歌う「A Kind Of Magic」を聴いてみたいと語る一方で、アダム自身は「You Take My Breath Away」をパフォーマンスしてみたいと述べている。

ライヴ・アルバム『Live Around the World』は、クイーン+アダム・ランバートがいかに世界規模でファンベースを築き上げてきたか、また公開後も強い影響力を残している映画『ボヘミアン・ラプソディ』にも後押しされ、クイーンの時代を超越した魅力を紹介している。

ロジャー・テイラーはこう語る。

「幅広い年齢層の方々にライヴを観に来てもらえるのは本当に素晴らしいことだと思っています。私たちは、長年応援してくださっている元々のファンだけでなく、若い人たちとも繋がることができるのをとても光栄に感じています」

Written By Laura Stavropoulos


クイーン+アダム・ランバート『Live Around The World』
2020年10月2日発売

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