あおり運転の救世主か、「通信機能付きドラレコ」がトラブル時にできること

9月30日にパイオニアから通信機能を搭載した市販初となる「ドライブレコーダー+(プラス)」が発表されました。通信機能が搭載されることで私たちのカーライフがどのように変わるのでしょうか。商品の概要と共に解説します。


販売好調のドラレコ市場

今回発表されたドラレコの新製品。オンラインで行われた記者発表会では冒頭にパイオニア側から市場動向、一方で日々ドライバーが不安に思っている点についての調査発表が行われました。

オンライン記者発表会ではパイオニアの担当役員からドラレコ市場の現状について説明がありました

現在カー用品の中でも特に販売が伸びているドラレコ、資料によれば消費者向けのドラレコの販売台数は2017年の109万台に対し、2019年には177万台と大きく伸びていることがわかります。

本来の利用目的である万が一の事故やトラブル時の記録に対してのニーズは当然高いのですが、売れている原因のひとつが昨今、社会問題化している「あおり運転」があることは否めません。もはや道交法だけでは自分を守るのも難しい中、ドラレコは必需品と言っても間違いないでしょう。

パイオニアが持つ膨大なデータを活用

これらの問題を受け、従来のドラレコではできなかった緊急時における安心と安全をプラスしたのが今回の新製品です。

元々パイオニアはカロッツェリアブランドで通信対応カーナビ、また業務用のモビリティサービスなど長きにわたり高い実績や膨大なデータを所有しています。

新製品には、これらのノウハウを活用した「インテリジェント・パイロット」と呼ばれる機能を搭載しています。

あおり運転に対し、警察に救援要請が可能

新製品となる「ドライブレコーダー+」は通信機能を搭載し、JAF(日本自動車連盟)やヘルプネットと連携します。ボタンを押すだけ(または自動)でコールセンターに接続し、事故や車両トラブル、またあおり運転を受けている際にも警察や救急、そしてJAFのロードサービスへの救援要請を行うことができます。

JAFやヘルプネットと連携することでボタン1つで救援要請等を可能にします

本来ドラレコは事故の際の証拠保全のために活用されるものでしたが、これからは事前に起こりうるトラブルにも対応できる商品が求められます。

またヘルプネットに関してはこれまで国産車を中心に一部の車種に純正装着されていましたが、基本後付けはできません。しかしこの商品の場合はドラレコとの連動も含め、事故や急な体調の悪化、車両故障などにも後付けでサービスを付帯することができます。

ちなみに後述する料金にはコールセンターとの通話料も含まれていますので定額で使うことができます。

通信をフル活用して安心をプラス

この「ドライブレコーダー+」は通信を活用することで大きく3つの機能を使うことができます。

まず冒頭にも述べた「緊急通報機能」です。トラブル発生に対し、ボタンを押すか、または状況に応じて自動でコールセンターにつながります。

しかし実際事故を経験したドライバーならわかると思いますが、その時は平静を保つのが難しく、自分の名前や事故の起きた場所すらうまく伝えることができないケースもあります。

このドラレコは位置情報やユーザー名、車種なども自動的に送信されるので細かな説明は不要です。これらの状況からコールセンター側から警察、消防、JAFロードサービスへの連絡を行ってくれるので何よりも迅速な対応が可能になります。

2つめは「見守り機能」と呼ばれるもので事前に登録することで万が一のトラブルに対し、家族などにLINEやメールで自動的に連絡してくれる機能です。

そして3つめが「事故防止機能」です。ドラレコ自体にもADAS(運転支援システム)に近い機能が搭載されていますが、今回パイオニアが開発した「インテリジェント・パイロット」という機能が働きます。

クラウド技術によって過去13年にわたり蓄積してきた交通データ(プローブデータと呼びます)や全国60万以上の事故リスク地点を算出します。さらにAIを活用することで天候や時間帯、さらにドライバーの運転傾向まで分析し的確な注意喚起を行ってくれます。

昨今のドラレコにもこれらの警告機能は搭載されていますが、いつも同じ場所でメッセージが流れるので“警告慣れ”してしまうケースがあるとのこと。しかしこの機能を搭載することで同じ場所を走っても本当に必要な時のみ効果的に警告を出すことが可能になりました。

サブスクという新しい発想

今回の「ドライブレコーダー+」は11月中旬から同社が立ち上げる専用ECサイトで販売を開始します。

サブスク運用にプラスしてJAF会員にはAmazonのギフト券特典もプラスされます

最大のポイントは本体価格は0円、月額の使用料のみという「サブスクリプション」を導入したことです。

1カメラモデルが1980円/月、2カメラモデルが2980円/月(いずれも税別)という価格には通信料も含まれていまし、何よりも導入時のコストを抑えることができるメリットがあります。

また10月30日までの限定になりますが、クラウドファンディングサイトである「Makuake」とのジョイントで、1年分の通信サービス利用料込みで先行販売(但し台数限定)も行います。

1カメラのみの対応ですが、通常であれば1年間使った場合、2万3700円かかるところ、こちらは2万1800円とさらにお得に使うことができます。

また気になる取り付けに関しては自分で行うか、最寄りの工場等を紹介してもらう形になるようですが、今後販売が本格的に始まれば選択肢も増えるはずです。

既存のドラレコに通信やクラウド、そしてAIを組み合わせることで安心と安全を手に入れることができるこの商品は今後のトレンドのひとつになりそうな予感がします。

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