区切りの試合

 「本当にいいチーム。この状況でしっかり努力してきたのはすごい。僕だったらどうだったか…」。先日、長崎市内で開かれた瓊浦高ハンドボール部3年生の「区切りの試合」。相手を務めた学生界の強豪、福岡大の末岡拓美主将の感想である▲コロナ禍の影響で、県高総体をはじめ、あらゆるスポーツ大会が中止となった今年。多くの高校3年生は目標を見失い、不完全燃焼のまま引退した▲とりわけ瓊浦高のショックは大きかった。昨夏のインターハイ3位メンバーが多数残っていた今季。目標の「日本一」を視界に捉えていただけに、喪失感は大変なものだった▲そんな中、チームは例年同様のスタイルを貫いた。来季をにらんで早々に新チームへ移行するのではなく、3年生中心の練習を続けてきた▲長年、チームを率いてきた末岡政広監督の言葉が、せつなく、心に響く。「大会が全部なくなったときは、正直、僕も苦しかった。でも、生徒たちは支えてくれる親の思いもくみ取り、次のステージを目指して前を向いてきた。生徒も、親も、僕も必死だった…」▲熱かった区切りの試合の後、福岡大の主将がこうつけ加えた。「このチームなら日本一になっていますよ」。高校スポーツ界に逆風が吹き続く中、何とも言えないすがすがしさを覚えた。(城)


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