そろそろメルセデスで電動化ライフしてみない?|メルセデス・ベンツ EQC 試乗レポート

メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC ダイヤモンドホワイト

電気自動車が身近に感じられるようになってきた

最近少しずつ身近になってきたのかなと感じる電気自動車(EV)の存在。国産車メーカー、輸入車メーカーともにEVをリリースしてきているし、街でも目につくようになってきた。そして郊外のスーパーマーケットの駐車場には充電ステーションも随分揃ってきたものだ。

筆者は住んでいるマンションで十数年前にあった「電気自動車のための充電設備の設置について」というアンケートに、「EVなんて買うわけないじゃん」と速攻でバツ印を付けたことを、今になってちょっと後悔している。

SUVをローンチモデルで選んだメルセデスの電動ブランド

メルセデス・ベンツが2019年にEQブランドとしてリリースしたEV、「EQC」。ブランドのローンチモデルとしてSUVというボディを選んだのは、時勢のせいか? この手のローンチはセダンからかなと勝手に想像していた筆者だったけれど、ここ約2年に渡ってSUV推しが続いているメルセデスだから、案外素直に受け止めることができた。その姿は確かにメルセデスでありながら、内燃機関を持たない新しいメルセデスの進む道を形として表したもので、EVでもブランドの存在をしっかりと打ち立てるつもりなのだろう。

EQCはGLCの電動化モデル?!

EQCについてちょっとおさらいしておこう。

GLCと同じ工場で作られているというEQC。つまりガソリン車もディーゼル車もプラグインハイブリッド車と一緒にEQCも同じラインを流れてくるということになる。メルセデスの生産効率の高さが垣間見えるけれど、EQCイコール、ポンとバッテリーとモーターを積んだGLCと言ってしまうには、機構はもちろん見た目も含めて違いがありすぎる。

フロア下に敷き詰められているリチウムイオン電池の容量は80kWh

EQブランドはコンセプトモデルから結構挑戦的なデザインを展開してきた。昨年の東京モーターショーでお目見えしたVISION EQSは高級電動サルーンを再定義したようなスタイリングであったし、今後続くであろうEQシリーズの各モデルも、なかなかに印象的なデザインを備えている。

Sクラスの電動コンセプトモデルであるVISION EQS, EQシリーズのAクラスにあたるConcept EQA
Sクラスの電動コンセプトモデルであるVISION EQS, EQシリーズのAクラスにあたるConcept EQA

EQCは、サイズ的にGLCとあまり変わらないけれど、ボディ各所にはEQブランド独自のエッセンスが与えられている。EVであるから、グリルはフレッシュエアを取り込むよりも空気抵抗を減らすためにヌルっとさせつつ、センサー類をたっぷりと詰め込むために大きめのマスクに。笑ったようなボトムのデザインはちょっとばかり愛嬌がある。

インテリアにおいても、最新のメルセデスと共通するメーターとナビが一体になったモニターに加えて、カッパーのルーバーなど、ちょっとエッジが効いたディテールが追加され、未来感が漂っている。

ナビとメーターが1枚のモニターとしてつながっているEQCのインフォテイメントシステム,カッパーカラーの吹出口やラジエーターのフィンのようなディテールなどEQC独自のデザインが特徴的
ナビとメーターが1枚のモニターとしてつながっているEQCのインフォテイメントシステム,カッパーカラーの吹出口やラジエーターのフィンのようなディテールなどEQC独自のデザインが特徴的
メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC ダイヤモンドホワイト

最新モデルが借りられる「メルセデス・ベンツ RENT」

そんなEQC、改めて数日間生活を共にしてみることにした。普通なら広報車をお借りするのだが、今回はメルセデス・ベンツが展開しているレンタカーサービスを利用してみようと思い立った。

メルセデス・ベンツ RENTは、その名の通りメルセデス・ベンツの各車両をレンタカーとして借り受けることができるサービス。北海道、秋田、宮城、千葉、東京、静岡、愛知、大分、宮城、沖縄の各県のメルセデス・ベンツディーラー(千歳空港はレンタカー会社)で行っており、その数は2020年9月現在で19ヶ所となる。

メルセデス・ベンツ RENTの予約はウェブで完結

まずメンバー登録を行い、レンタカーを予約するという流れ

このご時世だからというわけではないが、メルセデス・ベンツ RENTの予約はすべてウェブ上で完結。

まず会員登録を行い、車両を借りる店舗や日時を選択。するとその日程で借りることができる車両が出てくるので選択し、支払い方法を決めれば予約が完了となる。

メンバー登録は簡単。メールアドレスを持っていれば大丈夫, レンタカーの予約も専用サイトですることができる
メンバー登録は簡単。メールアドレスを持っていれば大丈夫, レンタカーの予約も専用サイトですることができる

旅先で利用するというのはもちろん、気になるメルセデス・ベンツにちょっと長めに乗ってみたいなということで借りてみるということもできる。実際に旧モデルオーナーが新型にじっくり乗ってみて、納得して買い替えなんてこともあるらしい。ディーラーマンを隣に乗せての試乗も解説付きでいいのだが、日常生活の中で使ってみるとまた違った面も見えてくることだろう。

希望する店舗と日程を選択, 借りたい車種を選択
希望する店舗と日程を選択, 借りたい車種を選択

メルセデスme東京でEQCをピックアップ

車両を知り尽くしたプロダクトエキスパートに機能などの質問もすることもできる, 竹中工務店とのジョイントで建設されたEQハウス
車両を知り尽くしたプロダクトエキスパートに機能などの質問もすることもできる, 竹中工務店とのジョイントで建設されたEQハウス

今回は東京・六本木にあるにてEQCを借り受けることにした。2020年9月5日現在、予約日の前日17時から事前に借りることができる延長サービスを行っているので、夕方にメルセデスme六本木へ。併設されているEQハウスにて、車両のプロフェッショナルであるプロダクトエキスパートからEQCのレクチャーとサービス自体の説明を受け、書類にサインをして乗り出した。

メルセデス・ベンツRENTの車両はレンタカーなので当然「わ」ナンバーとなる

ウェブ予約から借り出しまでは、普通のレンタカーと何ひとつ変わらない。決済もクレジットカードを事前登録しているので、当日は免許証の提示のみと簡単。ちなみに返却時もただ車両を戻すだけ(ガソリン/ディーゼル/プラグインハイブリッド車は燃料満タンで返却してくださいね)。シンプルにメルセデス・ベンツを体感できるのは、とてもいいと思う。

メルセデス・ベンツ EQC 400 4MATIC ダイヤモンドホワイト

電動といえどメルセデス・ベンツ

EQCに話を戻そう。

フロア下に敷き詰められたリチウムイオンバッテリーは80kWhで、フロントアクスルとリアアクスルに1基ずつ置いたモーターを駆動。システム的には4WD(4MATIC)で、最高出力408PS、最大トルク765Nmというパワフルさ。車重は2.5トンとそれなりにあるが、こと日本において力不足を感じるシチュエーションはないだろう。

前後2モーターのパワフルなEV。ということを頭に置きながらステアリングを握ったが、「ああ、メルセデス・ベンツだな」と自然にすっと馴染んでいく感覚は、他の内燃機関モデルと変わらない。特別な見た目とは裏腹に、「EVに乗っている」というある種の違和感はあまりない。共通するのは「メルセデスのもつ安心感」だ。

シフトをDレンジに入れて、アクセルを踏むと大トルクとともにヌルっと走り出す。さらに踏み込めばリニアにグッと押し出される感覚はたしかにEVだし、重心の低さもEV。ガッチリとしたボディと、包まれるようにデザインされた運転席・助手席も相まって、最新のメルセデスに守られている感がある。

わずかに風切り音とモーターの駆動音(音を合成されている?)が聞こえてくるだけで、室内は静音で快適そのもの。流れてくるオーディオからのサウンドも、いつもよりよく聞こえる。

2モーター4MATICの緻密なパワー&トルク制御

フロントとリアのモーターを使い4WDにて走行中, フロントのモーターの回生により充電中
フロントとリアのモーターを使い4WDにて走行中, フロントのモーターの回生により充電中

高速道路では、エネルギーのフローをモニターに表示させながら走行してみた。最初はバッテリー残量を気にかけておくためだったが、4MATICが非常に緻密に制御されているということに気がついた。FF状態から、中間加速でフロントのトルクを残しつつリアにもトルクを分配してみたり、前後全開からリア寄り、アクセルオフでコースティングなど、ドライバーの意図を瞬時に読み取って、トルクの配分を自在に変えている。

これは注意深くモニターを見ていてわかったことだけれど、普通に乗っている限り、あまりドライバーや同乗者にシステムの動作状況は伝わってこない。それくらいに緻密で、自然。これ見よがしではなく、とても丁寧に調律されている。その自然な動作フィーリングの裏側では、1kmでも航続距離を伸ばそうというメルセデスのある意味必死な努力が行われている。だからこその、「安心感」なのだろう。

夏場の航続距離は実感で330kmくらいか

【キャプション1】

EVで一番気になるのは、やはりバッテリーがどれだけ保つか、どれだけ走れるか、電欠はしないだろうか? ということだろう。今回は、街なかと首都高速を使っての走行で約100km、途中の商業施設で30分ほど充電。翌日、高速を使っての遠出で約250kmを走行。帰路にサービスエリアで渋滞回避のため20分ほど充電を行った。酷暑が続いていた2日間、エアコンはオートで常に使用していた状態で、消費電力は多かったはず。メルセデスmeへ返却したときには残り120kmという数値であったことを考えると、十分に普段遣いできる電費であると思う。

【キャプション1】, 【キャプション2】
【キャプション1】, 【キャプション2】

自動車メディアの業界関係者には、500km以上をノンストップで走りきってしまう人も少なくはないが、そのような走り方はあまり一般的ではないわけで、最近のSA/PAはなかなか充実してますよ。ちょっと休憩がてら充電すれば問題はないかと。

ブランド初のモデルでこの完成度。続く電動モデルも期待大!

【キャプション1】

メルセデスの量産市販車として初のEVであり、エッジは効いている。でもやはりメルセデスはメルセデス。EQという新ブランドの処女作にしてEQCのこの完成度はさすが。他の内燃機モデルもEQ化が今後進み、EQシリーズとしてこれからメルセデス・ベンツのラインアップで中核を担っていくことになるだろう。ドラスティックに変化している自動車の世界で、メルセデス・ベンツの電動化に対する本気度は、相当に高く、続いてリリースされるであろうEQモデルも待ち遠しい。そんなことを感じさせた今回のEQCの試乗だった。

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