さとふる「中の人」が解説!コロナ禍でふるさと納税のお礼品が大きく変化したワケ

新型コロナウイルスの感染拡大の影響は、ふるさと納税を支える事業者にも大きなダメージを与えています。事業者の多くは、地元産品を扱う中小零細企業です。

株式会社さとふるが、2020年3、4月にふるさと納税のお礼品提供事業者を対象に実施したアンケートでは、回答者のうち7割以上が「新型コロナウイルスで影響が出ている」と回答。具体的には6割以上の事業者が「売り上げが減少した」としました。

ふるさと納税の仕組みを使い、このような地方の事業者、企業を支援する取り組みが始まっています。ふるさと納税をし、お礼品を受け取るだけで、誰かの支援になることがあるのです。


各地から聞こえる売り上げ減の悲鳴

先ほどのアンケートによると、売り上げの減少率で多かったのは、「2割程度(23.8%)」「3割程度(22.1%)」。アンケートの後も全国的に外出や移動自粛が続いていたため、さらに甚大な影響を受けているお礼品事業者が多いと考えられます。

実際に、「さとふる」にお礼品を提供する事業者に話を聞いてみました。北海道むかわ町で本ししゃもを扱う事業者は、参加を予定していた春の物産展などが約50か所も中止となってしまい、売上が7割以上減少しました。滋賀県大津市の温泉旅館では3月時点で前年比7~8割の減収となってしまったそうです。

飲食や観光に関わる業界だけでなく、埼玉県羽生市で学校ジャージを作っている企業は、新型コロナウイルスに伴う学校休校により売り上げが7割も減りました。コロナ禍は、広い業種の方々に影響を与えています。

新型コロナウイルスの影響で積みあがる学校ジャージの在庫。例年春には在庫がなくなっている(2020年6月 埼玉県羽生市 株式会社カネマスで撮影)

コロナ支援で期間限定のお礼品が登場

そんな中、新型コロナウイルスの影響を受ける自治体や事業者による、様々な取り組みが始まりました。その一つが、ふるさと納税のお礼品の内容を期間限定で変更する動きです。

ふるさと納税は、寄付先の自治体を支援するだけでなく、お礼品を扱う事業者の売上も支えることにつながります。以前から、災害時などに敢えてお礼品がある寄付をすることで、地域の生産者支援を行うという取り組みがありました。

例えば、2018年8月に発生した北海道胆振東部地震で震度7を観測し、広域にがけ崩れが発生した北海道厚真町。町内でジンギスカンを扱うお礼品事業者には、震災直後からお礼品の申し込みが急増し、通常期の5倍以上の申し込みが集まったそうです。

震災後は来客数も激減し、電話での直接注文なども減ってしまっている状況でした。そんな中でのお礼品の発注に救われたということです。

お礼品がボリュームアップ?

少しでも地元業者への経済的影響をやわらげたいという狙いで、複数の自治体・事業者で、通常よりも寄付額を低く設定したり、寄付額はそのままで内容量を増やしたりする動きが始まりました。

特に4月以降、緊急事態宣言で外出自粛が呼びかけられたこともあり、寄付者のお家時間を応援しようという動きが盛んになりました。さとふるに登録されているお礼品の中で、「応援」「支援」がタイトルにつくお礼品の数は、2020年3月~5月で約24倍増加。ふるさと納税を通じた「応援消費」を呼び掛ける機運が高まりました。

支援を目的に増量・限定寄付額が設定されているお礼品

具体例をいくつか挙げます。

北海道標津町 「【コロナ支援】醤油いくら(500g)」(寄付額15,000円)

取れたての秋鮭から採取した卵を、一粒一粒ほぐして完熟させた北海道産のいくらです。新型コロナウイルス感染拡大により、卸先が激減するなど大きな影響を受けたため、落ち込んだ販売数の回復を目的に、寄付額を一時的に20,000円→15,000円に下げて提供しています。

静岡県浜松市「浜名湖 鰻蒲焼 約60g×4P」(寄付額10,000円)

浜名湖名物の鰻蒲焼です。熟練の職人が、さばいたその場で焼を入れる新鮮さが自慢の品です。新型コロナウイルスなどの影響でホテル、旅館、飲食店などの卸先が休業となり在庫を抱えています。そのため、現在3パック入りのところを4パックに増量して提供しています。

京都府亀岡市「【緊急支援品】厳選雌牛!A4以上 京丹波姫牛ローススライス600g(550g+50g増量)」(寄付額20,000円)

京丹波の地で丹精込めて飼育された雌牛のすき焼きに適したロース部位を使用しており、口の中でとろけるような食感の京丹波姫牛のスライスです。新型コロナウイルスで大きな影響を受けている高級和牛の流通を少しでも促すため、通常550gのところ、600gに増量しています。

医療従事者応援への寄付はすでに4億円以上

ふるさと納税を活用した、新型コロナウイルスで影響を受けた人を支援するには、お礼品を受け取ること以外に、お礼品を伴わない医療対策支援寄付があります。

さとふるでは、新型コロナの治療・感染症拡大防止活動に従事する医療関係者の方などを支援することを目的に、「新型コロナウイルス医療対策支援寄付サイト」を開設。9月30日時点で15自治体の寄付を受け付けており、すでに約4億4,000万円(約12,300件)の寄付が集まりました。

このサイトでは、1,000円以上から1円単位で、指定した金額を寄付することが可能です。また、自治体からさとふるへの支出は発生せず、寄付決済手数料もさとふるが負担します。そのため、寄付の募集に際して自治体が費用を負担することは一切なく、寄付者から集まった寄付額をそのまま自治体へ届けることができます。

お礼品のない寄付も集まっている

このサイトからの寄付はお礼品がありません。それにも関わらず、多数の寄付が集まっているのは、多くの方が、新型コロナ対策のため最前線に立つ医療関係者の方々などを応援したいという気持ちを持っているからでしょう。

お礼品を伴わず、自治体の費用負担などがない支援寄付は、新型コロナ医療対策支援だけでなく、地震や台風などの天災で被害を受けた災害支援などでも活用されています。直近では広い地域に甚大な被害をもたらした令和2年7月豪雨や、台風10号への寄付も受け付けています。

今、直接ボランティアなどに行くことは難しい状況ですが、離れた場所からスマートフォン一つでできる支援の形として、ぜひ活用いただきたいと思います。

新型コロナ禍でふるさと納税を活用するときの注意点

最後に、新型コロナウイルスの影響などで、例年から収入が変わってしまいそうな場合はふるさと納税を行う前に、控除上限額の確認をお勧めします。給料収入や家族構成などから控除上限額の目安を確認できる「ふるさと納税控除上限額シミュレーション」もあります。

そういったツールなどを活用しながら、ふるさと納税の寄付を通じて、新型コロナウイルスの影響を受ける全国の自治体・事業者を支援していただきたいと思います。

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