米のファーウェイ制裁強化始まる、世界シェア変動で投資妙味のある銘柄3選

米商務省によるファーウェイへの制裁強化の猶予期間が9月14日に終了しました。

今後はファーウェイに半導体を販売する場合、ファーウェイが設計した特注品であれ、スポット市場で取引される汎用品であれ、少しでも米国の技術が使われていれば事前の許可が必要になります。

2020年4~6月期にファーウェイは、中国国内スマホ市場での圧倒的なシェアを武器に世界で5,000万台半ばのスマホを販売し、世界シェアがトップとなりました。今後、急速にシェアを失うことは明らかで、漁夫の利を狙った競争が激しくなりそうです。

<写真:ロイター/アフロ>


シェアを奪取するのは目先はサムスンやiPhoneが有利に

ファーウェイは7~9月期についても、規制強化前に調達した部品を使って生産したり、在庫を販売したりすることで、それなりのシェアを維持できると思われます。しかし、10~12月期あたりから部品不足が深刻化し、特にスマホの心臓部であるプロセッサが不足しシェアが大きく減少しそうです。

ファーウェイと競合するOPPOやVIVOといった中国のナショナルブランドは、中期的にはシェアを伸ばすと考えられます。しかし、資金や生産体制の制約があり短期的には自社製品の供給を倍増させることは難しいでしょう。

したがって、ファーウェイが抜けた穴をカバーできるのは、部品からアセンブリまで自社で内製できるサムスンや、強固なサプライチェーンがあるiPhoneになると思われます。

なお、OPPOやVIVOは現在の戦略を維持する限りは、ファーウェイのようにエンティティリストに掲載されることはないと考えます。理由は、これら2社は、ファーウェイとは違い、プロセッサなどコアとなる半導体を米クァルコムや台湾メディアテック、そしてサムスンなど世界的な半導体メーカーから調達していて、違法な回路をプロセッサに組み込むなど小細工をする余地がないためです。

ファーウェイ向け減収はiPhoneや新型ゲーム機が相殺

2020年1~6月期の世界半導体販売額のうち34%が中国でした。この34%の2割程度、約7%をファーウェイが購入していたとすると、今後はこの7%の需要が世界から消滅することになります。

この一時的な需要減少をどう乗り越えるかが注目されますが、幸いにも今年は9月以降に、新型iPhoneや新型ゲーム機(「プレイステーション5」や「Xbox SeriesX及びSeriesS」)の生産が本格化します。特に新型ゲーム機向けの半導体需要はスマホ数億台分に匹敵するため、消滅するファーウェイ向け需要の半分以上をカバーできそうです。

こうしたiPhone需要やゲーム機特需の恩恵を享受する半導体メーカーは、どちらかというと北米系メモリメーカーや台湾ファウンドリになるだろうと推測しています。韓国のメモリメーカーは、ファーウェイ需要消滅の埋め合わせに少し手間取るのではと見ています。

したがって、目先は、韓国依存度が比較的低く、台湾、そして、北米半導体メーカー向け売り上げ比率が高い銘柄に注目すべきと考えます。具体的には、信越化学工業(4063・東証1部)やトリケミカル研究所(4369・東証1部)、そして、ラサ工業(4022・東証1部)などに投資妙味があると見ています。

半導体製造装置の状況はやや複雑だが、現在の株価は底値圏と判断

株価がボックス圏から抜けきれない、フラストレーションがたまる展開が続いている東京エレクトロン(8035・東証1部)、SCREENホールディングス(7735・東証1部)、レーザーテック(6920・東証1部)など半導体製造装置の主力銘柄については、やや話が複雑です。

ファーウェイへの制裁強化で欧米そして韓国系メモリ半導体大手の投資姿勢が変わるかどうかに加え、米国による中国地場半導体メーカーSMICへの製造装置販売規制という問題があるからです。

日本メーカーには届いていませんが、米国の半導体製造装置メーカーには米当局からSMICとの取引については事前に報告するように通達が出されているようです。事実上の輸出規制であり、これが事実なら今後中国での半導体製造装置の販売に影響が出そうです。

ただ、欧米や韓国の半導体メーカーはエンティティリストに載っていない中国メーカーに半導体を販売することは可能であり、年末までには業績への影響が見えてくると考えます。ファーウェイが撤退しても、中国、そして世界のスマホ需要が堅調なら、他の会社が生産を増やすので影響は軽減されると考えます。

目先の不安が解消されれば、DXや5Gを牽引役とする中長期の成長シナリオが改めて注目され、株価は反騰局面入りすると考えます。

<文:投資調査部 斎藤和嘉>

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