時速5kmの自動走行モビリティ 関電発「iino」がサービス始動

関西電力100%出資のゲキダンイイノ合同会社(以下、ゲキダンイイノ)は、時速5kmの自動走行モビリティ「iino」によるサービスを10月2日から開始した。

ゲキダンイイノは関西電力のイノベーションラボから事業化し、2020年2月に合同会社として設立。モビリティ領域と文化・エンタメ領域とのクロスボーダーで事業を展開している。

同社が提供を開始する自動走行モビリティ「iino」は、人間の早歩きと同程度の時速5kmで自動走行する点が特徴だ。低速運行という特徴を生かし、商業施設や観光地などでサービスの提供を目指す。

展開するモデルは2種類。最大5人乗りの「type-S」は、低速かつ低床で走行中でも乗り降りしやすい特徴を生かし、商業施設や大学などで提供する。最大6人乗りの「type-R」は、観光地やリゾート施設でのラグジュアリーな体験コンテンツとして提供する。

製品価格は、開発費ベースでおよそ500万円から1,000万円が目安になるとのこと。価格に幅を持たせているのはクライアントごとにカスタマイズを施すためだとしている。

写真:「iino type-S」と利用シーンのイメージ(関西電力プレスリリースより)

写真:「iino type-R」と利用シーンのイメージ(関西電力プレスリリースより)

■こだわった「時速5km」歩行者と共存するモビリティ

iinoの開発はゲキダンイイノの会社設立より前の2017年に始動。ターレットトラックを改造した試作機の走行実験や、車両に畳を載せ自動運転車で「眠る」サービスを提供するなど、取り組みを重ねてきた。

ゲキダンイイノの職務執行者である嶋田悠介氏によると、「開発当初は時速7kmで自動走行のテストを行っていた」という。しかし、走行しながらの乗り降りを想定すると、このスピードでも実際には速すぎて使いづらいという問題が挙がった。

そこでさらに低速の「時速5km」をコンセプトに設定。その結果、乗り降りがスムーズになっただけでなく、乗車中の動画撮影や飲食が容易になったり、周囲の風景をより楽しめるようになったり、さまざまな効果が得られた。

「iino type-S」 走行デモの様子2

2018年に大阪の心斎橋で行った走行テストでは、あえて人が混みあうランチタイムの街中でiinoの試作機を走らせた。すると、時速5kmでゆっくり走るモビリティは、周囲の人も無理なく避けることができ、あるいは早足で追い抜く人もいるなど、歩行者がいる環境にも溶け込むことができたという。

しかし、歩行者と共存しやすいモビリティという特徴を持つ一方で、現行の道交法だとiinoは歩道を走行できない。嶋田氏によると、「将来的な理想はあるが、歩道でのサービスは現状検討していない」とのことだ。まずは、前述の通り商業施設や観光地などでのサービス提供に取り組む方針だ。

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