フィリーズ・オーナー「リアルミュートとの再契約が最優先」

フィリーズのジョン・ミドルトン・オーナーは昨年2月のJ・T・リアルミュートのトレードの際、ある懸念を口にしていた。ミドルトンはリアルミュートが欲しくなかったわけではない。リアルミュートは欲しかった。しかし、球界トップクラスの有望株であるシクスト・サンチェスを対価として放出する以上、リアルミュートとの複数年契約が実現しないことを恐れていたのだ。そして、ミドルトンの懸念は現実のものとなるかもしれない。

フィリーズは日本時間10月4日にマット・クレンタックGMの事実上の解任を発表したが、ミドルトンはその原因が「リアルミュートとの複数年契約に失敗したこと」ではないことを明言。しかし、リアルミュートとの複数年契約に自信を見せていたクレンタックがそれを実現できなかったことは、ミドルトンを落胆させたに違いない。

ミドルトンは今オフにフリーエージェントとなるリアルミュートと再契約することがフィリーズの最優先課題であることを明言したが、事態を楽観的には捉えていない。新型コロナウイルスの影響により今季は無観客かつ短縮シーズンでの開催を強いられ、来季もどれくらいの集客を望めるか全く見通しが立っていないのだ。それはすなわち、リアルミュートにどれくらいの資金を投入できるか見通しが立たないことを意味する。もしリアルミュートがフィリーズの想定を超えるような大型契約を希望すれば、リアルミュートとの再契約は事実上不可能となる。

ミドルトンは「リアルミュートと契約延長できるならばシクストを放出していいと考えていた。もし契約延長できないならシクストは放出しなかった」と発言。フィリーズがリアルミュートを獲得した時点で、保有期間は2年残っていたが、ミドルトンは短期的な戦力補強としてリアルミュートを獲得したのではなく、中長期的な視点でワールドシリーズ制覇を目指すためにリアルミュートをチームに迎え入れたのだ。ミドルトンの考えに従えば、リアルミュートが今オフに他球団へ流出するようなことがあれば、有望株のサンチェスを放出したトレードは大失敗ということになる。

「今も彼は必要な戦力だが、今後の3年間、4年間、5年間、6年間にわたって彼が必要なんだ。(2009年にワールドシリーズ制覇のためにクリフ・リーを獲得したが、世界一のための即戦力だった)リーの獲得とリアルミュートの獲得は全く意味合いが違う」とミドルトン。今オフ、リアルミュートとの再契約に失敗した場合、フィリーズにとって大打撃となることは間違いない。

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