バブル華やかな1989年に北米からスタートしたインフィニティ
「インフィニティ」は、1989年にアメリカで始まった日産の高級車ブランドだ。最初のモデルは高級セダン「Q45」とクーペ「M30」。その後アジア、中南米、欧州、中東、アフリカなどおよそ40か国で販売展開されている。ただし欧州は2020年春に撤退した。
2020年4月、それまで香港に置かれていた本社を横浜の日産グローバル本社内に移し、日本の開発部門との連携を強化。現在は主に北米と中国の市場をメインのターゲットにし、電動化モデルの導入を急ぐと共に、モデルラインナップを再構築を図っている最中だ。
「インフィニティQX60 モノグラフ」を日本で発表
2020年9月25日、インフィニティはコンセプトカー「QX60 Monograph(モノグラフ)」を横浜で発表した。日本の美的感覚を取り入れたというデザインは、次期「QX60」の予告編であると同時に、次世代のインフィニティ車のデザイン言語も示唆しているという。
しかし、“ジャパンオリジナル”と聞くと、古い日産ファンならあのクルマを思い出すだろう。
インフィニティQ45は日本でも導入され話題に
インフィニティ初モデルのQ45は「日産 インフィニティQ45」として日本にも導入されていた。レクサスのように独立したブランドではなかったが、日産車として販売していたのだ。
このQ45も“ジャパンオリジナル”を標榜し、日本発の高級車ブランドであることをアピールしたことでも話題を呼んだ。フロントエンブレムには七宝焼きを採用し、インパネは定番のウッドではなく、蒔絵の手法を取り入れたパネルとするなど、非常に個性的なモデルだった。
折しもバブル景気真っ只中の時代。同じく1989年に発表されたトヨタの高級車「レクサス LS」(日本名:トヨタ セルシオ)と比較されることも多かったが、Q45は強過ぎる個性があだとなり、販売面では苦戦。緒戦はレクサスの圧倒的な勝利となった。
インフィニティ Q45はその後フルモデルチェンジされ、2代目、3代目のシーマが充てられている。
スカイラインが生き残っているのもインフィニティのおかげ!?
日本で売られていたインフィニティ車はほかにも
Q45と同時期に導入されたM30は「日産 レパード」(2代目・F31型)のインフィニティ版。日本にはないコンバーチブル(オープン)モデルも用意されていた。Mの後継車は、Y34型グロリアにV8 4.5リッターを搭載した4ドアハードトップ車。3代目は2005年登場の初代フーガ(Y50型)である。
このほか「J30」はレパードJフェリー、「G20」は初代プリメーラと2代目プリメーラカミノ、「QX4」はテラノレグラス、「I30」は2代目セフィーロなど、日本でも売られていたモデルを一部加飾したうえで販売していた。
名車「スカイライン」ブランドが生き残ったのもインフィニティの功績大
中でも2002年登場の「G35」は、インフィニティにとっても重要なモデルとなった。日本名「スカイライン」(V35型)。プラットフォームを一新しV6エンジンを搭載するなど、従来のモデルとは大きくイメージを変えたFRセダン・クーペだ。日本では「スカイラインらしくない」の声も上がったが、北米ではBMW 3シリーズのライバルとして、支持を集めた。
当時日本ではジリ貧状態にあったスカイラインが、その後V36型、そして現行V37型と続いているのも、インフィニティの成功なくしては語れないのだ。
そして「インフィニティ」の日本導入はある? ない!?
度々噂に上るのは、インフィニティチャンネルの日本導入だ。日産広報部によると、実際に日産社内でも検討されたことが過去にはあったとのことだが「残念ながら現在のところ導入の計画はありません」との回答をもらった。
ライバルのレクサスについては2005年より日本でも展開されており、ドイツ車などの強豪プレミアム輸入車を相手に根強い支持を集めている。
かつてとは異なり、インフィニティオリジナルの専用車種も増えている。今回次世代モデルが発表されたSUV「Q60」もそのひとつ。
日本でも拡大を続けるSUV市場だが、日産の国内ラインナップは「エクストレイル」と「キックス」のみ。高級SUVのラインナップが充実しているインフィニティこそ、今の日産に求められているモデルのはずだ。
専門ブランドの立ち上げが困難なことは部外者でも容易に想像がつくが、かつてのQ45のように「日産インフィニティ」ならハードルは一気に下がるだろう。しかも多くのSUVモデルは、ここ日本で製造されている。日産国内部門の英断を大いに期待したい。
[筆者:トクダ トオル(MOTA編集部)/撮影:日産・INFINITI]