「田澤ルール」撤廃も残る課題… 元メジャー右腕が疑問投げかける“実績”の評価

BC埼玉武蔵・田澤純一【写真:荒川祐史】

ロッテからメジャー移籍、日本球界に復帰した小林雅英氏、田澤をドラフトにかける必要性

10月26日に行われるドラフト会議で、一つの注目となるのが、ルートインBCリーグの埼玉武蔵・田澤純一投手の動向だ。日本のドラフト指名を拒否して外国のプロリーグでプレーした選手とは一定期間契約できないとする「田澤ルール」の撤廃が決まり、ドラフト指名されればNPB球団へ入団が可能になる。大きな山が動いたが、まだ残る課題はある。

MLBでもプレーした小林雅英氏が「複雑な思い」と指摘したのは、田澤のようにメジャーで実績を残した投手が、アマチュア選手と同様にドラフトにかける必要があるのかという点だ。

田澤は球団を通じて「ルールの撤廃を決めていただいたこと本当に嬉しく思っています」と感謝を口にした。小林氏も同様だ。「こうやって、ルールがなくなるということは大いに喜ばしいことだと思いますし、若いうちに向こうに行って、力を試したいと言う人たちが今後、増えてきてもいいと思います。そこでキャリアを積んでいいと思いますし、そのキャリアを還元してくれれば、日本の野球はレベルアップすると思います」。小林氏は33歳のときにFA権を行使し、メジャーに挑戦した経緯がある。若いうちから挑戦する選手が増えることは決してマイナスなことではない。

ただ一方で、“位置付け”は考えないといけない。「ドラフトにかけないといけないっていうのは、複雑ですね。キャリアを積んでいる人が高校を卒業した子と、同じ土俵でその1つの枠を争うというのは、ちょっと考えないといけないことだと思います」。メジャー通算9シーズンで通算388試合登板、21勝26敗4セーブ89ホールド、防御率4.12という成績は胸を張っていい数字。復帰の方法はより議論していかないといけない。

ロッテで守護神として活躍した「幕張の防波堤」こと小林雅英氏【写真:編集部】

未来のある若者の一枠を使うべきではないのではないか

そして、「違和感がありますね」と指摘するもう1点。ドラフト会議で「一枠」を使ってしまうことだ。「未来のある若い人たちの枠を一つ、つぶしてしまう。ドラフトの戦術も変わってくるんじゃないかなと思います」と指摘する。田澤は即戦力ではあるが、34歳という年齢を考えれば、上位で指名できない球団もあるだろう。低い順位で指名できたとしても、それが田澤への正しい評価なのか、疑問は残る。

他にも、メジャーは代理人が契約交渉の場につくが、今回、NPB球団から指名された場合、契約の話が円滑に進むのかどうかも気になるところ。多くの課題が残るが、小林氏は否定するのではなく「今回はそれでしょうがないと思います。日本球界全体で、何かに気がつくことになってくれればいいかなと思います。1回やってみて、やっぱり、マイナスな部分の方が多いと感じたら、いずれは変わってくる。まずはやってみないことには始まらない」と前向きに捉えている。

小林氏に、今回のこの事象をアメリカ、MLBなどはどう見ていると思うかと尋ねたら、明快な答えが返ってきた。

「そこまで(アメリカは)気にしていないと思います。何でそんなルールで選手を絞る必要があるのかという感じかもしれません。もしかしたら、なぜ、ドラフトにかけなきゃいけないのか? という疑問どころか、そんなルールが存在していたことすら、知らないかもしれません」

ひと昔前ならば、日本の人材流出という考えも理解できた部分もある。しかし、時代はグローバル化している。時の流れとともに柔軟な対応をしていかなければならない。今年のドラフト会議で出た違和感を、次のステップにしてもらいたいところだ。(Full-Count編集部)

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