天敵ロッテを破ったオリックス 中嶋聡監督代行の采配に専門家が感じた「強い気概」

オリックス・中嶋聡監督代行【写真:福谷佑介】

森脇浩司氏は「先に主導権を握るんだという気概を采配から感じた」

■オリックス 3-0 ロッテ(6日・ZOZOマリン)

オリックスは6日、敵地ZOZOマリンスタジアムでロッテを3-0で下し、天敵となっている相手からようやく今季3勝目を挙げた。小田の左越え先制ソロなどで3回に2点を奪って試合の主導権を握ると、エース山本が8回無失点と好投した。

これでロッテとの対戦成績は3勝15敗1分となったオリックス。元監督で、ソフトバンク、巨人、中日でもコーチを務めた野球評論家の森脇浩司氏は、中嶋聡監督代行の采配から「先に主導権を握るんだという強い気概を感じた」と振り返った。

オリックス山本、ロッテ石川のエース対決となったこの試合。接戦が予想される中、先制点を奪ったのはオリックスだった。3回、先頭の小田が左越えソロ。初球、真ん中高めに甘く入った石川のツーシームに反応した。

さらに続く伏見が右中間への二塁打で出塁すると、1死三塁からT-岡田が右前適時打。4回にもモヤ、ジョーンズ、大下の3連打で追加点を奪った。8回2安打無失点の好投を見せたこの日の山本にとって、3点は十分なリードだった。

この3回の先制点につながる布石となったのが、初回の中嶋監督代行の采配だったと森脇氏は指摘する。中嶋監督代行は初回、1死からT-岡田が四球で出塁した後、安達の打席で2球目にヒットエンドランを仕掛けた。結果はファウルだったが、安達は次のボールでバントを決めて走者を二塁に進めた。

「1ボールからのヒットエンドランの結果はファールだったが、選手、そしてチームに積極性を与えた。相手の先発が石川で、点の取り合いにはならない中で『決して山本に頼らず勝つ』『先に主導権を握るんだ』という強いメッセージを感じた。3回先頭の小田の条件付き積極性の好打撃(ホームラン)も無縁ではない」

石川にとって、長打力のない小田には本塁打はないと考え、外角を狙ったボールが甘くなって打たれた失投だった。森脇氏は3回の攻撃について「言うまでもなく小田は本塁打を狙って打った訳ではなく、甘いところに来たから反応して振った。正に条件付き積極性の典型である。伏見の二塁打も、本塁打を打たれた次の打者が塁に出るというのは守る側からすると、攻撃する側が思っている以上に圧力を感じるもの。それが無死二塁なら尚更だ。非常に効率のいい点の取り方だった」と称賛した。

安達とT-岡田に求める期待「今こそチームを引っ張り、監督を助ける存在であって欲しい」

また森脇氏は、相手の弱点を積極的に突く中嶋監督代行の采配を感じたという。3回、オリックスは1死一塁、打者安達の場面でカウント2-2から初回に続きヒットエンドランを仕掛けた。一塁走者はT-岡田。だが、ロッテの捕手田村は右手第2指末節骨剥離骨折から復帰したばかりで、状態はまだ万全ではない。安達は三振に倒れたが、T-岡田は盗塁に成功。中嶋監督代行の色が出た作戦だった。

「オリックスは田村が本来の送球がまだできないのを計算していた。安達の空振りは想定外でも、変化球の空振りならタイム勝ちし、盗塁成功になる確率は普段よりも高く、勝算有りと踏んでいたと思う」

そして森脇氏は、かつてともに戦ったベテランの安達、T-岡田にもチームの牽引役としての期待を寄せる。

「主観は良くないが、安達とT-岡田にはどうしても厳しくなる。安達に関しては初回のセーフティバントの精度、3回のヒットエンドランの空振り、T-岡田は素晴らしいタイムリーの次の5回無死二塁での打席、左打者の右打ちは右打者より数段難しいが、この日のT-岡田なら何とか出来たはず。また盗塁成功にはなったが、ヒットエンドラン時のスタートが遅すぎること、7回の一ゴロでは緩めるのが早いことを指摘しておきたい。かつて彼らが作戦を実行するのに、勝つためにどれほど頼もしかったか。いつも凡事徹底を実践する彼らがいた。今こそチームを引っ張り、監督を助ける存在であって欲しい」

まだ、ロッテ戦でのカード勝ち越しが1度もないオリックス。ここまで勝てなかった理由について、森脇氏は、失策などのミスが原因だと指摘する。

「最初の6連戦で6連敗したことが双方にとってメンタル面でも大きなインパクトになっているが、今年は他のカード以上にロッテ戦で決定的なミスが目立ったことはいうまでもない。ミスにも色々ある。記録に残らないミスというのは確かにあるが、目に見えないミスはない。だが、決定的なミスをしなければ、決定的な差は生まれない」

この日はエース山本の好投とともに「大きなミスがなかったこと」が勝利に結びついたという。今日7日の試合で今季初のロッテ戦カード勝ち越しを狙うオリックス。チームはリーグ最下位に低迷しているが、勝利への執念を見せる中嶋監督代行の手腕にも注目が集まる。(Full-Count編集部)

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