「タピオカ屋さん」動向調査

 「新型コロナウイルス」の収束が見 ブームと不況が不思議と重なる「タピオカ」。今回は息の長いブームが続くかと思われた矢先に、新型コロナウイルス感染拡大に襲われた。「タピオカ屋さん」の店舗前には若者が列をなし、片手に容器を持ち街中を歩くシーンがすっかりおなじみになった。そんな「タピオカ」ブームのピークアウトも囁かれる中、タピオカを扱う企業数は1年前の2倍に増えていることがわかった。
 東京商工リサーチ(TSR)の保有する企業データベース(約390万社)で、「タピオカ」専業及び関連事業(以下、タピオカ関連企業)を営む企業は、2020年8月末で125社を数える。1年前の2019年8月は60社で、この1年で2倍に増えた。
 2019年9月から2020年3月までの期間で、タピオカ関連企業は52社増えた。このうち、新設法人はほぼ半数の24社(構成比46.1%)だった。また、コロナ禍の2020年4-8月にタピオカを扱い始めた企業は13社だったが、新設法人は2社(同15.3%)にとどまった。
 コロナ禍で新設法人数が激減し、伸び率は鈍化している。だが、タピオカ入りドリンクの種類を増やしたり、ニューノーマルに合わせたテイクアウトのシステム整備など、ブームを一過性で終わらせない取り組みもみられる。息の長い食文化の「タピオカ」を定着させようと、タピオカ関連企業は模索を続けている。

  • ※本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象約390万社)から、営業種目や業績変動要因(主要分)に「タピオカ」の記載があるものを抽出、分析した。

 2020年8月末のタピオカ関連企業は125社を数えた。企業数は、2019年8月から65社増えている。特に、2019年9月から2020年3月の期間では52社が増加し、このうち半数近い24社(構成比46.1%)は新規法人だった。
 だが、コロナ禍の4月以降は13社の増加にとどまった。13社のうち、新設法人はわずか2社(同15.3%)に激減した。新型コロナによる外出自粛、店舗休業などで萎縮する他の飲食店と同様、タピオカ関連企業も影響が大きいことがわかる。
 元々、タピオカは夏場に需要が盛り上がり、冬場は落ち着く傾向にある。しかし、2020年は年初から新型コロナの影響が広がり、収束の見通しも立たないことから、ブーム沈静化は見極めにくくなっている。このため、「タピオカ」を事業のメインに据え、新規参入するには難しい事業環境で、「タピオカ」関連企業の増加にブレーキがかかったとみられる。
 名古屋市内でタピオカドリンク店を展開する企業の担当者は、「周囲で新規出店のペースは落ちたように感じるが、極端に店舗数が減少した印象はない」と語り、「コロナの影響による休校で学生客は減少したが、サラリーマンなど男性を含む幅広い年齢層の方が買いに来られる。ブームが落ち着いてきた代わりに、『タピオカ』が広く定番化してきたように感じる」とタピオカ人気の定着を感じているようだ。

たぴおか

 新型コロナの感染拡大で、増加ペースは鈍化しているものの、2020年も「タピオカ屋さん」は増え続けている。ただ、「貿易統計」(財務省)によると、2020年1-7月の「タピオカ」と「タピオカ代用物」の輸入量は約3,900トンで、ブーム以前の2018年同期の約1,300トンの3倍となっている。デリバリーやテイクアウトとの相性の良さもあって、タピオカドリンクはコロナ禍でも引き続き根強い需要を維持している。
 タピオカブームは偶然にも、大不況と時期が重なる。第1次ブームの90年代はバブル崩壊、第2次ブームの2008年はリーマン・ショック、そして第3次ブームは新型コロナウイルス感染拡大に重なった。
 ブームにも乗って2019年4月から2020年8月までのわずか1年半で、タピオカ関連企業数は約4倍に増加した。街のあちこちで見かける「タピオカ屋さん」だが、コロナ禍において消費者行動が変化する中で、今後どう消費者にアプローチしていくのか真価が問われている。

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