“ラニーニャ現象発生”で株価はどう動くか

先月、気象庁から世界的な異常気象の原因となる“ラニーニャが発生したとみられる”との発表がありました。ラニーニャは南米ペルー沖の海面水温が低くなる現象です。この冬にかけてラニーニャが続く可能性は70%と高い確率になるとのことです。

ラニーニャが発生すると、日本の気候はどのように変化するのでしょうか。南米ペルー沖の海面水温が下がるのと対照的に、フィリピン近海の海面水温が上昇します。すると水蒸気が増えて雲が多く発生し、日本では雨の日が多い秋となります。さらに冬にはシベリアからの冷たい空気が流れ込みやすく、寒冬の傾向があります。

気象の変動は人々の生活に影響を与えるものですから、このラニーニャも経済、そして株価の動きを左右するようです。今回はラニーニャと株価の関係を取り上げます。


ラニーニャは寒冬・猛暑

実は、ラニーニャと景気との関係については、既に経済学者の間で様々な研究が発表されています。第一生命経済研究所の永濱利廣氏によると“ラニーニャ発生期間に限れば90.2%の割合で景気回復局面に重なる”としています。

なんとなく異常気象というと景気にマイナスがイメージされますよね。しかしラニーニャは違うようです。ラニーニャは寒冬・猛暑をもたらします。

冬が寒くなればエアコンなどの暖房器具の売り上げが好調になります。また冬物衣料の売れ行きも良くなるでしょう。また、夏の時期が猛暑となれば、同じようにエアコンの売り上げが好調になりますし、身近ではビールや清涼飲料水の売り上げも良くなります。そういった季節モノを扱う小売店販売が好調となり、経済全体を押し上げる効果につながります。

“基本”的には“夏は暑く、冬は寒い”方が季節に関連した人々の消費が高まるため景気を押し上げる効果につながるわけです。このためラニーニャは好景気と関係があると見られます。

ラニーニャの時期は”株高”?

では株価との関係はどうなるのでしょうか?好景気と関係があるなら、株価との関係も期待できますよね。実際にデータで確認してみました。

ラニーニャの情報は気象庁のウェブサイトを使います。発生期間は季節単位で気象庁が定めています。最も古くて「1949年夏~1950年夏」ですから月単位になおすと1949年6月から1950年8月になります。足元を除いて気象庁が定めたラニーニャ局面は15回ありますから、それらの期間の日経平均株価の騰落率がどれだけ高いかを観察することにしました。

分析にあたっては注意が必要です。株式市場には季節性があります。1月効果と言われるように、1月は株高となる傾向が強いですし、逆に年度上期末月となる9月は株価が下がるというものです。

1月はクリスマス休暇明けした外国人投資家のマネーによる好需給により株高になりがちなことや、9月は年末が近づくにつれ換金売りなどが発生しやすくなるなどが理由とされています。そこで月別季節部分を除いた超過騰落率をラニーニャ期間で平均しました。

分析結果を見ると、ラニーニャ期間の平均超過騰落率は年率ベースで0.63%とプラスとなりました。これはラニーニャ期間の株価は例年と比較して上昇する傾向が見られるということです。

これと反対にエルニーニョ期間では▲3.41%と下落しています。エルニーニョはぺルー沖の海面水温が反対に高くなる現象です。エルニーニョは“冷夏・暖冬”になりがちで季節モノの消費が盛り上がらないため景気へのダメージ、そして株安につながると見られます。

ラニーニャでこの冬の寒さが厳しくなると、冬物消費の盛り上がりに期待したい反面、人々の体調面は気になります。足元では新型コロナのパンデミック拡大が懸念されていることが留意点です。

また、少し前の記事「『冬の寒さが厳しいと株価が上がる』って本当?」で過去の検証をしたところ、“例年より寒い冬”の株価は高いのですが、行き過ぎて“極寒”だと株価も厳しくなる傾向が見られました。あまりにも寒いと外出が控えられますし、雪が降れば経済活動にも支障が出ることもあります。

株価にとってはラニーニャで例年より寒い冬は期待したいのですが、あまりにも寒くなりすぎたり、新型コロナ感染の動向にも注意が必要でしょう。

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