プチ旅行気分味わって 「長崎眼鏡橋 カフェよりどころ」刊行

「長崎眼鏡橋 カフェよりどころ」

 長崎市を舞台にした小説「長崎眼鏡橋 カフェよりどころ」(双葉文庫・682円)が刊行された。OLからカフェ店主に転職し、新たな人生を踏み出すヒロインの奮闘を描いており、名物料理を通じて登場人物が心を通わせていく“味わい深い”1冊。著者の端島凛さん=千葉県在住=に作品について聞いた。

 -なぜ長崎を舞台に。
 近くに海がない群馬県の生まれなので、長崎には強い憧れがあった。イタリアの都市に似た景観ですばらしく、まちなかで出会った人々も親切で感動した。そんな長崎を舞台にして書くのが念願だった。
 -ペンネームを端島(軍艦島)から付けている。
 2006年ぐらいに端島が掲載された雑誌を読んだのがきっかけ。小さな島が炭坑で栄え、衰退しその後は観光資源に。ドラマチックな歴史に衝撃を受けた。
 -執筆のため来崎した?
 新型コロナウイルス感染拡大と重なり、取材では来崎できなかった。長崎を訪れたのは高校の修学旅行と新婚旅行の2回。17年の新婚旅行で端島など観光地を巡り、名物料理を食べた経験が作品の土台。
 -名物料理を取り上げた理由は。
 長崎の食文化は面白い。歴史に培われた部分があり、またトルコライスのように、いろんなおいしいものを一度に味わってもらおうという思いやりがこもった料理が多い。そんな温かい気持ちを軸にした作品を描きたかった。登場する料理は全て作ってみた。レシピ本みたいにならないよう料理を絡ませるあんばいが難しかった。
 -読者に伝えたいこと。
 ガイドブック的な読み方もできるので、コロナ禍で長崎へ旅行に出掛けるのをためらっている人に、プチ旅行気分を味わってもらえたら。(聞き手は柿野朋之)

 【略歴】はしま・りん 小説投稿サイト「エブリスタ」で執筆活動に取り組み、2016年「調香師成瀬馨瑠の芳醇な日常」でデビュー。著書に「図書館は、いつも静かに騒がしい」。

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