マンション暮らしが心地よくなる「隣人との雑談テクニック」とは?

同じマンションのエレベーターでときどき見かける住人がいる。挨拶ぐらいはしたほうがいいのか、でも話しかけてしまうと、その後の沈黙が気まずい。いっそ、同じエレベーターに乗らずにすむように、郵便ポストでもチェックしてやりすごすか……。

こんな風に迷ったことがある人は多いのではないでしょうか。同じマンションに住んでいるからには、感じよく振る舞いたい気持ちはあっても、どうコミュニケーションをとったらいいものか。そのさじ加減に迷う。こんなとき、どうすればいいのでしょうか? 心理カウンセラーの五百田達成さんに聞きました。

がんばっておもしろい話をしようとするのは間違い!?

「『雑談は何を話せばいいのかわからない』『盛り上げようとがんばって話すけど疲れる』と思うこと、結構あると思います。でも、実は”雑談を盛り上げるために面白い話をしなくてはいけない”というのは大きな勘違いなんです」

雑談の目的は、ズバリ「人間関係の構築」だと、五百田さんは指摘します。

・初対面の相手と、とりあえず話を進める。
・上司とタクシーの中で雑談を交わす。
・取引先で商談前のアイスブレイクとして雑談する。
・ママ友とのつかず離れずのおしゃべり……。

シチューションはさまざまですが、すべての雑談は「会話を通じて、お互いの警戒心を解き、スムーズで円滑な関係にシフトすること」が目的。そのため、無理におもしろい話をする必要はないと言うのです。

「人と人は雑談をしさえすれば、仲よくなります。その際、話の内容はハッキリ言ってどうでもいい。おもしろさも必要ないし、ましてや『結論』や『オチ』なんて不要。ただただ、続きさえすればそれでいいんです」

・オチにない話を苦笑交じりにダラダラ続ける。
・結論の出ない話を、堂々めぐりで繰り返す。

この時間を一緒に過ごすことが、「一緒に会話をしている」という実感を生み、「関係が深まった」という安心感につながるのだそう。

雑談がうまくいく7つのルール

五百田さんの著書『超雑談力』(ディスカヴァー)では、雑談の基本として7つのルールが挙げられている。

【ルール1】
×がんばっておもしろい話をしようとする
○ただ会話のラリーを続ける

【ルール2】
×情報交換をする
○気持ちのやりとりをする

【ルール3】
×時事ネタやニュースを話す
○エピソードや経験を話す

【ルール4】
×否定してアドバイスする
○肯定して共感する

【ルール5】
×質問やあいづちで話を引き出す
○大きなリアクションで一緒に楽しむ

【ルール6】
×会話が途切れたら「別の話題」を探す
○会話が途切れたら「自分の近い話題」に引き戻す

【ルール7】
×いつまでも話し続ける
○ほどよいところで切り上げる

この7つのルールを意識しながら話せば、たまたま「マンション住民向けの親睦イベントで隣り合わせただけの相手」とでも、「理事会の役員に選ばれてしまった者同士」でも、雑談は自由自在。ただし、「“たまに顔を合わせるだけの相手と雑談をするのかどうか”は慎重に検討したほうがいい」と、五百田さんはアドバイスします。

というのも、五百田さんが提唱する雑談のスタイルでは、とにかく話すだけで距離が近くなるのが特徴。さほど親しくなりたくない相手に対して、不用意に用いると「必要以上に距離が近づいてしまう」という副作用を引き起こしかねないのだそう。

「隣人とどこまで距離を近づけたいと考えるかは、分譲と賃貸ではまた感覚が違うでしょうし、個人差もあると思います。同じマンションに住んでいるからこそ、“そこまで踏み込みたくない”という方も、もちろんいると思います。コミュニケーションはあくまでも手段です。まずは、自分や家族がどうしたいかを決め、目的に合ったコミュニケーションスタイルを選ぶことをおすすめします」

“踏み込みたくない”ときに目指すべきは「山の挨拶」

では、”そこまで踏み込みたくはない”という場合、どうすればいいのでしょうか。五百田さんはこうアドバイスします。

「”雑談の手前”の関係を目指すのが良さそうです。何度か顔を合わせていると、お互いの住んでいる棟やフロアはなんとなく分かってしまう。それなのに、挨拶もしないというのは印象が良くありません。『会えば、爽やかに挨拶をするけれど、それ以上は話を広げない』というあたりを目指してみるのはどうでしょうか」

イメージとしては、登山者同士の挨拶。山を登っていると、すれ違う人同士が「おはようございます-」「今日もいい天気ですねー」挨拶を交わす。でも、それ以上深い話をするわけではない。

「マンションという”同じ山”を共有する仲間同士として、会えば挨拶を交わすし、会釈もする。そのライトなやりとりが、”悪い人ではなさそう”という印象につながります。ちなみに、『おはようございます!』『こんにちは!』とキッパリ言い切ると、その後も話が続きそうだし、続けなくてはいけない雰囲気があってお互い身構えます。でも、『おはようございますー』『こんにちはー』だと、挨拶だけで終わらせてもOKな雰囲気になります」

たかが挨拶、されど挨拶。マンション内で何かトラブルがあったとき、周囲が味方になってくれるか、『あの人ならやりそう』と思われるかは大違いです。

取材・文 島影真奈美

五百田達成(いおた・たつなり)

作家・心理カウンセラー。 米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。 東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。 専門分野は「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」。 「スッキリ!!」(日本テレビ)、「この差って何ですか?」(TBS)ほか、テレビ・雑誌などのメディア出演も多数。 著書『察しない男 説明しない女』『不機嫌な長男・長女 無責任な末っ子たち』『話し方で損する人 得する人』(以上、ディスカヴァー)はシリーズ80万部を超える。最新刊は『超雑談力』(ディスカヴァー)。

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