カナダの大麻カルチャーと関連ビジネス

大麻関連ビジネスはこんなに幅広い

 ひとえに大麻市場と言っても、その対象はもちろん吸引用の大麻販売だけではない。カナダでは大麻専用のカフェやラウンジ、抽出エキスを利用した食品や美容関連商品なども一大ビジネスであり、人々の生活の一部となっている。

ラウンジ

 カナダのバンクーバー市内には、販売店の他に大麻専用ラウンジがいくつか存在している。ラウンジ併設店舗の一般的なつくりとしては、地上階が大麻や関連商品を置いた小売店、接続する上階または地下階がラウンジとなっているものが多く、今回訪れたCANNABIS CULTURE(307 W Hastings Street, Vancouver)もそのひとつである。

 ラウンジでは利用客が受付で入場料を払い、自分で持ち込んだ大麻や、その場で購入したものを吸って、のんびりと時間を過ごす。簡単な飲み物やスナックのメニューもある。こちらの店舗階では大麻の吸引器具や巻紙、グラインダー(粉砕器具)をはじめ、大麻のデザインを中心としたTシャツやポスター、レシピ本、大麻を模したチョコレートなどのジョークグッズも売られている。

 スタッフに最近の状況について話を聞いたところ、「コロナウイルスの影響で、少し前までは客の店内受け入れ人数を上限2名までに抑えていた。売上も客も少なかったが、その時間を利用して店内の大掃除とリフォームができた。今はまた客足が戻ってきている」とのことだった。

食品

 大麻は食品にも使用できる。市内の書店やインターネット上では、大麻を利用したお菓子などのレシピを見つけることができる。私のカナダ人の友人は、以前インターネットで見つけたレシピを元に、家庭でブラウニーやマフィンを作ったことがあると言っていた。

 ちなみに彼曰く、大麻をお菓子から摂取するのは少し危険とのこと。甘くておいしいのであまり大麻を摂取している感覚がわかないし、煙の吸引とは異なり、葉そのものを直接体内に入れるので、”効きすぎ”てしまうことがあるそうだ。

美容グッズ

 その他に、大麻の抽出エキスは美容関連商品でも使われている。例えば、イギリスの大手自然派コスメティックブランド『THE BODY SHOP』では、大麻を使用したハンドクリーム(10カナダドル、約800円)やフェイスクリーム(14カナダドル、約1,115円)、リップクリーム(8カナダドル、約640円)などが展開されている。

 少量試したところ、肌はしっとりと潤い、香りはお香やハーブのようであった。大麻の独特なきつい匂いは全く感じられなかった。こちらの商品は国際空港内でも販売されているが、大麻成分を含む商品なので、他国への持ち込み等ができるかどうかは、事前にきちんと調べておくことが必要である。

大麻関連ビジネスの傾向と変化

 ここからはカナダ政府の統計による、cannabis extract(大麻抽出エキス)の売上推移を見てみよう。統計によると、国家免許を所有する販売者と州免許を所有する販売者において、ともに在庫量は増加している。売上額を見ると、元々合法であった医療目的の売上は安定して横ばいであり、それ以外の目的における売上が少しずつ増加していることがわかる。

 2年前施行された嗜好用大麻の合法化にあたり、政府はこの分野での大幅な収入増加を予想していたと見られる。そのため、こちらはやや予想外の結果といえるだろうか。ただ月ごとの推移を見てみると、2020年2月までに比べ、特に2020年3月以降での売上増加が顕著である。これはコロナウイルスの影響により、3月中旬、カナダ政府によって大々的に自宅待機が要請されたことも影響していると考えられる(実際、外出禁止要請が公式に出された後、各家庭におけるアルコール消費量は大幅に増加した。全ての飲食店や娯楽施設が閉鎖された中で、家庭やその近所で手軽にできる娯楽を求める人が増えたためである)。今後、コロナウイルスの影響や政府の取り組みによって、どのような変化が起きていくか、またさらなるビジネスチャンスの展開はあるか、注目したい。

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